英紙ガーディアン(The Guardian)は現在、広告収益よりも消費者から得る金額のほうが多い。90万人以上が、会員プログラムや繰り返しの寄付、印刷版およびデジタル版のサブスクリプション、単発の寄付の組み合わせによって支払いを行っており、それがガーディアンの収益総額の12%を占めている。
英紙ガーディアン(The Guardian)は現在、広告収益よりも消費者から得る金額のほうが多い。90万人以上が、会員プログラムや繰り返しの寄付、印刷版およびデジタル版のサブスクリプション、単発の寄付の組み合わせによって支払いを行っており、それがガーディアンの収益総額の12%を占めている。
ガーディアンの最高顧客責任者であるアンナ・ベイトソン氏は10月第3週、スペインのバルセロナで開催された「DIGIDAY Publishing Summit Europe」で講演し、現在12%であるそうした数字が収益総額の約20%にまで上昇すると見ていると述べた。国境によって市場が制限されうる広告と違って、寄付はもっとグローバルで、英国や米国、その他の国から一様に寄せられる。だがガーディアンは、決済に絡むフリクション(摩擦)を克服し、寄付を促す要因についてもっと学ぶ必要があるという。
「それは、我々が信頼できるレベニューストリームだ」と、ベイトソン氏は語る。「決済を向上させることによって成長する可能性がある。特にモバイルでは、まだフリクションが多すぎる。読者が希望する寄付の手段と金額をめぐる地域差を理解することで、将来的に利益がもたらされるだろう」。
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寄付が増えるポイント
サブスクリプションは、読者のパブリッシャーとの関係に依存しているが、寄付には独自の原動力がある。環境問題や気候変動に関する記事に連動して、調査が行われたり、政治をめぐって感情的になる瞬間があったりすると、寄付が増えるのだ。
寄付は、読者の感情によっても左右される。ベイトソン氏によると、タイの洞窟救出劇のような記事では、コンバージョン数が通常の2~3倍になることもある。米国では、銃犯罪の報道をめぐる要請メッセージを掲載したときに、寄付が急増した。こうした記事は、キーワードに基づく広告主のブラックリストによって、広告収入がたいてい限られているのだ。
「これがどの程度適切かについては神経質になっていたが、銃関係の報道の可視化に要請を絞ったので、大丈夫という感じだった。広告が最良のマネタイゼーション手段であるときもあるが、打算的ではなく誠実に感じられるように適切に行われれば、寄付は価値を解放することができる。それに、我々はそのことについて大いに議論している」。
地域差、リピーター、定着率
寄付と決済の方法は、地域によって異なる。米国では単発の寄付のほうが一般的だが、英国とオーストラリアでは、会員プログラムや定期的な寄付のほうが人気がある。オーストラリアや北欧諸国の人々のほうが英国の人々より気前がいいが、これは国の豊かさが理由になっている可能性があるとベイトソン氏は認めている。
ガーディアンは、寄付の額を増やすと同時に、もっと定期的に行われるようにする方法を模索している。一度寄付した人々の約20%が、再び寄付を行っているからだ。そのために、言葉遣いやデザイン、決済額といった要素をめぐって、多くの実験が行われてきた。寄付を募るメッセージをジャーナリズムらしい言葉遣いにカスタマイズしても、寄付率には役立たないことがわかった。
ガーディアンは、解約についても真剣に考えている。メッセージを送りすぎることなく読者と対話を続けるバランスの取り方などについてだ。ニュースレターによって定着率は上がるが、支持に感謝するガーディアンのジャーナリストからのメッセージが含まれていると、反応はまちまちだ。
広告モデルと有料版
さらに、製品が、サービスのなかに引き込まれつつある。ガーディアンのアプリのユーザーは、もっとも熱心な読者に含まれるが、広告を通じて効果的にマネタイズされていなかった。そこで同紙は、広告がなくて追加機能がある有料版を導入した。ガーディアンは、寄付のレベルも単純化しつつある。寄付のほとんどが、下限の約5ポンド(約730円)だ。
「(ガーディアンが)無料で読めることによって、人々に対して、金を払いたいと思える価値あるものだと納得させることができなかったと考えがちだが、そうした考えは基本的に間違っていることがわかった」と、ベイトソン氏は語った。
DIGIDAY+で提供している、11月13日(火)に開催予定の第3回DIGIDAY Salonでは、「サブスクリプション」をテーマにしている。興味ある方は、こちらのページにて詳細をご確認ののち、ぜひご参加を!
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)