音声分野の大企業、「ポッドキャスト」の課題に取り組む:見つけにくさをいかに解消するか?

昨年、アイハートラジオ(iHeartRadio)やパンドラ(Pandora)、Spotifyといったオーディオプラットフォームのポッドキャスト参入が相次いだ。現在、こうしたプラットフォームが、宣伝力を駆使してポッドキャストで長らく困難とされてきた課題である「見つけにくさ」に取り組んでいる。

8月7日にラジオ放送局のエンターコム(Entercom)はケイデンス13(Cadence13)とパイナップル・ストリート・メディア(Pineapple Street Media)の買収を発表した。この2つの買収により、エンターコムは広告主に対してポッドキャストCMとブランデッドコンテンツのポッドキャストという2種類の販売リソースを獲得した。また同社はRadio.comを保有しているが、今回の買収によって「ザ・クリアリング(The Clearing)」のようなノンフィクション朗読のヒット番組からクルックト・メディア(Crooked Media)の人気ニュース番組まで、広告が必要なオンデマンド番組を提供するメディアをさらに2社獲得したことになる。

エンターコムは既存の手法を複数組み合わせて運用する予定だ。たとえば、ほかのポッドキャスト番組におけるCMや短期間の独占契約などに加えて、まだあまり使われていない手法として地上波ラジオで15分のダイジェスト番組を流してポッドキャストの宣伝を行う。同社は現在Radio.comをポータルサイトとモバイルアプリで運用しているが、いずれRadio.comを各番組の集まるハブとして運用し、見つけにくさというポッドキャスト特有の問題を解決したいと考えている。エンターコムの最高デジタル責任者、J.D.クラウリー氏は「自分の商品チームに新たな人材として加わってくれるのを非常に楽しみにしている」と語る。

業界全体におけるトレンド

この計画がうまくいくかどうかは未知数だ。だがこうした取り組みを行っているのはエンターコムだけではない。ポッドキャスト業界全体で同様の取り組みがトレンドとなっており、大手プラットフォームは自社のフォーマットの成長と支援のために積極的に投資を進めている。

パイナップル・ストリート・メディアの共同創設者、ジェナ・ワイス・バーマン氏は、「これまでも、ラジオとポッドキャストはもっと密に協力し合うべきだと感じていた」と語り、次のように述べている。

「当社は、どのプラットフォームとも良い関係を築くことができている。いずれのプラットフォームも宣伝において非常に高い効果を発揮してきた。だが、(ポッドキャストに関する)宣伝が得意なシステムというのはまだない。見つけにくさは、まだまだ改善していかなければならない課題なのだ」。

ポッドキャストはメディアのエコシステムの片隅で、長い年月をかけて少しずつ成長を続けてきた。そしていまやデジタルメディアからもっとも注目を集める存在のひとつにまで成長した。ポッドキャストは映画やテレビ、デジタル動画制作における知的財産面で重要なソースとなり、次のサブスク分野を探すベンチャー企業からも注目を集めている。

「見つけにくさ」という課題

だが、ポッドキャストの成長をいまだ妨げているのが見つけにくさの問題だ。ポッドキャスト番組は60万以上あるともいわれているが、つい数週間前までは番組を検索するのもひと苦労だったのだ。ポッドキャストが右肩上がりでありながらも、あまりパッとしない成長を続けてきた理由もそこにある。エディソン・リサーチ(Edison Research)によると、12歳以上の米国人のうち22%が毎週ポッドキャストを聴いているという。

ポッドキャスト業界関係者のなかには、音声分野の大企業の参入を望む声も少なくなかった。オーディエンス数が多いというだけでなく、大企業の莫大なリソースによるポッドキャストというフォーマット自体のマーケティングを期待したためだ。たとえばアイハートラジオのポッドキャスト部門の責任者コーナル・バーン氏は、今年ポッドキャスト番組のオンエアCMに1億ドル(約105億円)を投じると語っている。

バーン氏によると、アイハートラジオは常にいずれかの番組で1つか2つの新番組の宣伝を行っており、さらに過去に放送された番組についても5から7番組を宣伝しているという。宣伝される番組は、7月から放送開始したばかりの新番組「ノーブル・ブラッド(Noble Blood)」から10年以上放送されている「スタッフ・ユー・シュッド・ノウ(Stuff You Should Know)」まで、さまざまだ。

さらに地上波ラジオで番組を初配信するという取り組みが行われる可能性もある。バーン氏によるとアイハートラジオの各局は1時間以上の番組を流したがる場合が多く、地上波ラジオの尺に合わせてポッドキャスト番組を一部カットすることもあるという。

番組をマーケティングで支援した場合の効果は劇的だ。バーン氏によると、最近配信を開始した「ディスグレイスランド(Disgraceland)」のセカンドシーズンはアイハートラジオが保有する200以上のラジオ局で配信されたという。ディスグレイスランドのダウンロード数は以前は1話あたり20万程度だったが、200万以上にまで飛躍的に増加したという。

パンドラ、Spotifyの動き

音声分野のデジタルネイティブ企業も実験を続けている。パンドラは2019年のはじめに、同社の中核的なデジタルラジオ商品を支援するポッドキャスト番組の推奨エンジンを発表した。

ポッドキャストへとさらに進出しているSpotifyは、ポッドキャストというフォーマット自体を宣伝するため商品にいくつかの変更を加えている。Spotify全体のコンテンツ消費に占めるポッドキャストの割合はいまだに小さいが、同社のCEO、ダニエル・エク氏はいずれ聴取数全体の20%を占めるようになるだろうと語っており、モバイルアプリとWebプレイヤーにおいてポッドキャストをよりプッシュするようになっている。

最新四半期の業績報告のなかで、Spotifyはポッドキャストの聴取を増やすための新機能を3つローンチしている。そのうちの1つ、「モーニングドライブ(Morning Drive)」は朝の通勤で聴けるような音楽とポッドキャスト番組をあわせて毎日届ける機能だ。

Spotifyはマーケティングにおいてもポッドキャストをより前面に押し出すようになっている。最近発表されたSpotifyとAT&Tの提携では、SpotifyによってAT&Tのカスタマーにより多くの音楽とポッドキャストを届ける、と述べられている。

影響の大きさは未知数

こうした変化によってどれほどの影響があるかはまだ明らかにはなっていない。だが、新規参入の大企業各社の求める水準は高い。「ポッドキャスト業界では、100万ダウンロードを達成すれば大喜びだ」とワイス・バーマン氏は語る。「かたやラジオ業界では、たかが100万程度ではお話にならない」。

Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)