家族経営のメディア企業アトランティック・メディア(Atlantic Media)の一角をなすビジネスニュースブランド「クオーツ」(Quartz)には、何千万ドルにも上るベンチャーキャピタルからの後ろ盾はない。それは強みでもあり弱みでもあると、「クオーツ」の発行人兼共同プレジデントを務めるジェイ・ローフ氏は、米DIGIDAYのポッドキャストで述べている。
「ある程度リソースの制約があるのは、実にいいことだ」とローフ氏は語る。「制約があるからこそ、こうありたいという目標や、優先すべきこと、そして、そうした優先事項に向けて実行する方法に集中できる。3年半を経たメディアとして、私は何をすべきでないかを重視している。『クオーツ』のような登場したばかりのブランドには、外部からたくさんのアイデアと関心が集まり、可能性にあふれている。我々は、ブランドの成長に不可欠だと考えるものだけに集中してきた」。
今回は、30分にわたるポッドキャストから、ハイライト部分を紹介する。
家族経営のメディア企業アトランティック・メディア(Atlantic Media)の一角をなすビジネスニュースブランド「クォーツ(Quartz)」には、何千万ドルにも上るベンチャーキャピタルからの後ろ盾はない。それは強みでもあり弱みでもあると、「クォーツ」の発行人兼共同プレジデントを務めるジェイ・ローフ氏は、米DIGIDAYのポッドキャストで述べている。
「ある程度リソースの制約があるのは、実にいいことだ」とローフ氏は語る。「制約があるからこそ、こうありたいという目標や、優先すべきこと、そして、そうした優先事項に向けて実行する方法に集中できる。3年半を経たメディアとして、私は何をすべきでないかを重視している。『クォーツ』のような登場したばかりのブランドには、外部からたくさんのアイデアと関心が集まり、可能性にあふれている。我々は、ブランドの成長に不可欠だと考えるものだけに集中してきた」。
今回は、30分にわたるポッドキャストから、ハイライト部分を紹介する。
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「クォーツ」にとっての「雲の切れ間」
すべての新興メディアは、「なぜそれが必要なのか」という問いに直面する。世の中にニュースブランドはあり余っているからだ。「クォーツ」も市場参入で同じ課題に直面した。
ビジネスニュース市場には、「エコノミスト(The Economist)」、「フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)」、「ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」、「ブルームバーグ・ビジネスウィーク(Bloomberg BusinessWeek)」など、多数のバーティカル(特化型)メディアがひしめいている。そんななか、「アトランティック(The Atlantic)」は、新たな配信形式と、有料購読モデルからの脱却にチャンスを見出したと、ローフ氏は語る。
「考え方はこうだ。我々のターゲット層であるグローバルビジネス専門家たちのメディア習慣は、劇的に変化している。現在、モバイルが普及し、ソーシャルがコンテンツを発見・共有する手段として普及した。競合他社はターゲット層の習慣の変化に追いついていない。一方で、我々はソーシャル活用で異なるビジネスモデルを採用し、異なるアプローチでオーディエンスにニュースを届けている。そこが雲の切れ間だ」。
コモディティ化した広告から撤退
「クォーツ」は広告依存型メディアとして、ほかのパブリッシャーと同様に厳しい市場にいる。「クォーツ」創業チームメンバーで現ブルームバーグメディアCEOのジャスティン・スミス氏や、共同プレジデント兼編集長ケビン・デラニー氏などは、この現状を認識し、プレミアム広告事業を立ち上げた。
開始当初の1年間、パートナーをわずか4社に絞った。標準化された表示は行わず、フルスクリーンのカスタムユニットとコンテンツマーケティングを採用。現在170人のスタッフを擁し、年間売上が3000万ドル(約30億円)とされる「クォーツ」は、「業界平均の10倍」の約60ドル(約6000円)でCPMを提供。これまでの3年半で提携した180の広告主について90%の顧客維持率を誇る。
「市場でほとんど価値のないバナーとボックスを、我々はなぜ繰り返そうとするのか?」と、ローフ氏は問いかける。「周知のように、これらにほとんど価値がないのは、誰も気にとめないからだ。結果として広告主も、バナーやボックスには最低限の広告費しか出さない。稼ぐためには、この手のコモディティ化したユニットを薄利多売するしかないが、それをやったら、あっという間に最底辺のメディアに成りさがる」。
スケールをどう見ているか
デジタルメディアとして、「クォーツ」は大きい方ではない。トップクラスのビジター数を持たないサイトの常として、ローフ氏もまた、「スケールそのものを目標とする」ことには否定的だ。しかし、グローバルビジネスエリートのような特化したバーティカルの内部においても、やはりオーディエンスのサイズは重要だ。インターネット調査企業コムスコア(comScore)によると、2016年5月の「クォーツ」のビジター数は920万人だったという。
「健全なビジネスになるために我々が必要とする位置は、現在いる場所からそう遠くない」と、ローフ氏は話す。「ターゲットオーディエンスははるかに大勢存在すると確信している。4000万~8000万ビジターに到達することも可能かもしれない。そのくらいが健全かつ強固な規模のターゲットオーディエンスだという気がする。ただし我々は、読者を億単位にしようと話しているわけではない。それは『クォーツ』が必要とする規模ではないと思う」。
「インフォメーション」や「ストラテチェリー」に注目
「クォーツ」の直近の計画には、有料購読は含まれていない。そのかわりに、グローバルビジネスニュースの分野でまとまった数のオーディエンスを構築することに注力してきた。しかしローフ氏は、「インフォメーション(The Information)」や「ストラテチェリー(Stratechery)」のような、比較的小規模で有料購読モデルに賭けているメディアを評価している。これらのメディアは、読者は高品質なデジタルメディアに正当な料金を喜んで払うものである、ということを証明しようとしている。
「『インフォメーション』や『ストラテチェリー』は実に興味深いと思う。こういったブランドは、専門分野を非常に深く掘り下げているし、高品質だ。そうしたビジネスをどれだけ拡大したいかを、自らコントロールするという彼らの考え方が好きだ」と、ローフ氏は語る。「彼らは実に興味深い。大手パブリッシャーでさえも、彼らのアプローチから学ぶことがあると思う」。
Brian Morrissey(原文 / 訳:ガリレオ)