Quartzが、3年前に開始したサブスクリプションプログラムに変更を加え、新たにeメールのニュースレターに重点を置いている。調査結果から、Quartzはニュースレターを、サブスクライバーを維持し、有料顧客の支持をさらに高めるための手段と考えている。
Quartz(クォーツ)が、3年前に開始したサブスクリプションプログラムに変更を加え、新たにeメールのニュースレターへ重点を置きはじめた。「メンバー」と呼ばれる同社の有料サブスクライバーが、おもにメール経由で同社コンテンツにアクセスしていることが判明したためだ。Quartzは、サブスクライバーを維持し、有料顧客の支持をさらに高めるための手段として、ニュースレターを捉えている。
2018年にスタートした、Quartzのサブスクリプションプログラムは現在、8月2日に始まった4種類の週刊ニュースレターが中心となっており、これらはメンバー限定で配信されている。Quartz編集長のキャサリン・ベル氏によると、2021年3月の調査では、Quartzメンバーの75%が、おもにメールを通じて同社のコンテンツにアクセスしていると回答している。
ベル氏は、Quartzがメンバーを対象に実施した調査の結果について、「メンバーからは『読むべきものが(ウェブサイトやアプリには)たくさんあるのに、すべてを利用しきれない、どこを見ればいいのかわからない』という声が聞かれた」と述べている。Quartzメンバーの約3分の2は、同社の主要ニュースレター「Daily Brief(デイリー・ブリーフ)」の購読者だ。
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ベル氏によると、Quartzのメンバーは2万7000人で、前年比で71%増加している。同社ウェブサイトによると、メンバーシップは月額14.99ドル(約1640円)、年額99.99ドル(約1万930円)となっている。広告が最大の収益源であることに変わりはないが、2021年末までの購読料売上は300万ドル(約3億2800万円)超に達する見込みだと、Quartzは以前、米DIGIDAYに語っている。
Quartzのニュースレター購読者は合計で130万人を数え、有料・無料購読者を合わせた週の平均メール開封率は35%前後に上ると、ベル氏は述べている。なお、Quartzのすべてのメールには広告が掲載されているが、ニュースレター広告の収益額については明らかにしていない。
Quartzをはじめ、有料購読者を獲得・維持するためにニュースレターに投資しているパブリッシャーは多い。インフォメーション(The Information)は、2021年3月にニュースレター事業を開始し、現在は7種類程度のニュースレターを発行している。今のところ無料で読めるが、インフォメーションの創設者で編集長のジェシカ・レッシン氏は、サブスクリプションを「いずれは」ニュースレターに追加すると述べている。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、人気ニュースレターの「モーニング(The Morning)」を、読者をサブスクライバーに変える手段と捉えている。
eメールのニュースレターは「一般的に、有料会員やサブスクライバーになってもらうための第一歩」だと、オーディエンス開発・マーケティングを手がける企業、トゥエンティファースト・デジタル(Twenty-First Digital)の創設者でCEOのメリッサ・チャウニング氏は述べる。
Quartzの新ニュースレター
Quartzは現在、全部で11のニュースレターを発行しており、うち5種類がメンバー限定となる。このほど新たに加わったメンバー限定のニュースレターは、以下の4種類だ。
- 毎週月曜発行の「フォアキャスト(The Forecast)」では、新興の産業、技術、トレンドの今後の動向を予測する。
- 木曜発行の「カンパニー(The Company)」は、コインベース(Coinbase)やディスコード(Discord)など、他社のビジネスに変化をもたらしている企業に焦点を当てる。
- 金曜発行の「ハウトゥ(How To)」では、より効率的な働き方に加え、スマートフォンの使用時間が長すぎる、会社のオフィス再開をどう管理するかといった課題に対する解決策を提案する。
- 土曜発行の「ウィークエンド・ブリーフ(The Weekend Brief)」は、その週の最大のニュースを分析する。
ハウトゥは、まったく新しいニュースレターだが、ほかの3つは既存のeメールプロダクトから発展したものだ。「Tフォアキャスト」は、トピックやトレンド、業界について深く掘り下げるQuartzの読み物「フィールドガイド(Field Guides)」からの「インサイトを簡潔にまとめて」掲載していたニュースレターがもとになっている。「ウィークエンド・ブリーフ(The Weekend Brief)」は、以前はすべての読者が無料でアクセスできたが、現在はメンバー限定に変わった。
ニュースレターの執筆はニュースルーム全体で行うが、メンバー限定のニュースレターはおもに1人の記者が担当する。またQuartzは先ごろ、アソシエイト・メンバーシップエディター1名を採用しており、今月中に仕事を開始する予定だ。
「現代版の週刊誌」
Quartzからのメールがメンバーの受信箱を圧迫する心配はないかという質問に対して、ベル氏は「その危険は常にある」と答えた。しかしそのことが、ニュースレターで「取り上げるものを厳選することに(中略)つながる」という。ベル氏はQuartzのニュースレターを、キュレーションと詳細な分析という観点で「週刊誌の非常に現代的なバージョン」と評する。また雑誌と同じく、ニュースレターは「スペースに限り」がある。そのため、ニュースレターチームは、読者にとって簡潔で洞察に満ちた有益なメールになるよう心がけているとベル氏は述べている。
チャウニング氏は、Quartzは「ユーザーの行動に合わせているにすぎない」という。「パブリッシャーは、自分たちの都合に合わせたコンテンツの入手方法を読者に強いるのでなく、読者に都合のいい方法でコンテンツを届けるようにすべきだ」。また、eメールはプラットフォームのアルゴリズム変更の影響を受ける可能性が「はるかに低い」ため、「eメールを主要なメンバー特典として確立することは、非常に理にかなっている」と、チャウニング氏は述べている。
またQuartzは今秋、アフリカ版のQuartzに関連して新たなメンバーシップを開始する予定だ。Quartzはケニアとナイジェリアにチームを置き、すでに約10万人の購読者をもつアフリカ版のニュースレターを発行しているが、メンバーは近々、ふたつ目のアフリカ版ニュースレターにも登録できるようになる。こちらはアフリカのスタートアップシーンや新興企業に焦点を当てた内容で、メンバー以外の人も、Quartzのフルメンバーにならなくても、ニュースレターにのみ有料で登録することが可能だ。
[原文:Quartz refocuses subscription program on email newsletters for paying readers]
SARA GUAGLIONE(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:小玉明依)