Quarts(クオーツ)はQuarts AIスタジオ(Quartz AI Studio)を立ち上げ、機械学習を活用して記事を作成したり、コンピューターを訓練してパターンや類似性を特定・データ解析するAIを開発する。Quartsは今後、記事報道にコンピューターをさらに取り込んでいこうとしている。
Quartz(クオーツ)はこれまでにも人工知能(AI)技術を活用し、AIで実現されたチャットボットを通じて記事作成を手助けしてきた。Quartsは今後、記事報道にコンピューターをさらに取り込んでいこうとしている。
QuartsはQuarts AIスタジオ(Quartz AI Studio)を立ち上げ、機械学習を活用して記事を作成したり、コンピュータを訓練してパターンや類似性を特定・データ解析するAIを開発する。このシステムは、何テラバイトもあるデータ中のノイズからシグナルを瞬時(人間のチームが綿密にチェックした場合と比べれば、ほんのわずかな時間)に選別でき、記事作りの支援を行えるという。
Quartsは以前(2016年11月)、FacebookのMessenger(メッセンジャー)やAmazonのAlexa(アレクサ)のような対話型インターフェース向けのチャットボットやアプリ開発を目的に、Quarts ボットスタジオ(Quartz Bot Studio)を設立した。このときと同様に、AIスタジオの創設もナイト財団(Knight Foundation)から資金提供を受けている。Quartsは、ナイト財団から得た24万9000ドル(約2800万円)で、開発者やプロデューサーを雇用するという。新規採用者は、Quartsでボットと機械学習の技術設計を担当するジョン・キーフ氏とともにAIスタジオに加わることになる。また、Quartsは2019年1月に実際に記事作りをはじめるまでに雇用を完了するつもりだと、キーフ氏はいう。
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競合他社ともコラボ
ナイト財団のジャーナリズムならびに技術革新部門ディレクター、ポール・チュン氏は、電子メールの声明で次のように書いた。「AIは、ジャーナリストがニュースを共有・拡散する方法に変革を起こすような影響を及ぼす可能性を秘めている。Quarts AIスタジオはこの機会に磨きをかけ、AIによる報告方式をより多くのジャーナリストの手に届け、中小規模の報道機関のイノベーション力を増すことに役立つだろう」。
BuzzFeedやワシントン・ポスト(Washington Post)のようなパブリケーションはすでにAIを利用し、隠された偵察機を調査したり、各企業の収支報告書について報じたりしている。Quarts AIスタジオも同じような仕事をする予定だが、自社独自のものであろうと、Quartsと手を組んでのものであろうと、他のパブリケーションが記事を作成するのに役立つ素材作りをする役割も担う。
「これは(データジャーナリズムを)次のレベルへと押し上げるものだ。そこへ到達すればジャーナリストは、パターンマッチングやソーティング、グルーピング、類似性検知などをコンピューターを使って快適に実行できる。これは、特に大きなデータセットがあって、はじめてできる作業だ」と、キーフ氏は語る。
Quarts AIスタジオは、2019年に6本の記事を制作するという。Quartsは、そのうちの少なくとも半分を、他のパブリケーションとコラボして作成するつもりでいる。
Quartsでは、AIスタジオのチームが扱うのが適切だと思われるストーリーの中身について、今後6週間かけてブレインストーミングを行うことにしている。キーフ氏は「機械学習がすべてのストーリーに役立つわけではない」と話す。Quartsの編集方針のアップデートを促すようなAIスタジオのチームに対する特定の関心分野はまだ設定されていない、とキーフ氏。Quartsはまた、大小を問わず他のニュース機関とも連携して、AIスタジオとのコラボレーションから恩恵を得るかもしれない進行中のプロジェクトがないかを見極める予定だ。
中小企業へのAI普及に
ナイト財団の補助金は、Quarts AIスタジオが手がける2019年の仕事を対象に支払われる。Quartsはその間に、長期的な収入確保の方法を見つけるという。ボットスタジオで行ってきたように、Quartsは、AIスタジオのチームにブランドと一緒に仕事をさせることができるが、それはAIスタジオの初年度の事業計画には含まれていないと、キーフ氏は説明した。
同じく、少なくとも初年度計画に入っていない事業は、Quartsの新しい登録制有料サービス向けの特別コンテンツの作成だ。AIスタジオは「我々が一般大衆に見てほしいと思う」大型プロジェクトに取り組むだけでなく、そうしたプロジェクトの半分は、記事にアクセスするオーディエンスの能力を制限したくない他のパブリケーションと手を組んで進められるだろう、とキーフ氏はいう。
自社のジャーナリズムにコンピュータを使った報道を統合することに加え、QuartsはAIスタジオを使って、他のパブリケーション、特に、AIを利用した報道専属チームを自力では作れない中小規模のパブリッシャーを支援したいと考えている。Quarts AIスタジオのチームは、他のパブリケーションが自社の記事作りにテクノロジーを組み入れはじめることができるように、ハウツー本の発行やサンプルコードの公開を行うだろう。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)