1月10日に開かれた「Data Driven Marketing Conference」(主催ユーザーローカル)。メディアをめぐるセッション「マーケターが知っておくべきメディアエンゲージメントの深め方と活用の可能性」では、パブリッシングの「質」をめぐる議論がされた。東洋経済オンライン編集長の山田俊浩氏、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン(ハフポス)編集長の竹下隆一郎氏、エブリー代表取締役の吉田大成氏の議論をまとめた。
1月10日に開かれた「Data Driven Marketing Conference」(主催ユーザーローカル)。メディアをめぐるセッション「マーケターが知っておくべきメディアエンゲージメントの深め方と活用の可能性」では、パブリッシングの「質」をめぐる議論がされた。東洋経済オンライン編集長の山田俊浩氏、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン(ハフポス)編集長の竹下隆一郎氏、エブリー代表取締役の吉田大成氏の議論をまとめた。
「質」の議論は米国の偽ニュースサイトやWELQ問題などに絡んで、ホットなトピックだ。セッションでは2017年以降の媒体運営の羅針盤として、マーケターにとっては、獲得型だけでないデジタルメディアによるエンゲージメントの方策を検討した。
京都で開催された昨夏のDIGIDAYパブリッシングサミットでも「量から質」の議論が盛んだった。来たる2月のDIGIDAYパブリッシングサミットでもこの点を踏まえ、議論を前進させるアジェンダを組んでいる。
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東経山田氏:PV8割稼ぐ1〜2記事と他記事のバランス
東洋経済オンライン編集長の山田俊浩氏は東洋経済オンラインのPVは成長を続け、2億PV以上であり、「PVベースではほかの経済雑誌系を突き放している」と説明した。ビジター数は3000万ユニークブラウザー以上に達しているという。
「1、2本でその日配信した記事のPVの8割程度を稼ぐ。編集部では他の記事とはかなり差がつく。あまり見られないなら、ほかの記事はいいんじゃないか、となりがちだ。取材にいって、カメラマンも連れて行くとコストがかかる。記事はその日見られなくとも、後から注目されることで見られることもある。全体のポートフォリオのバランスをとっている。部員には、読まれないけれど、自分の関心の強いものを作れと言っている」。
1億PV達成したあと、月間2億PVまでが早かったという。2016年のあいだに、ほかの経済系メディアはIDを取るということにシフトしている。ユーザーからみると使いづらくなっている。
ユーザーローカルの山田真紗義氏は「新聞社を含め、囲い込みという部分に目が行きがち。3000万ユニークブラウザーなら課金できるのではないか」。最近はLINEが「週刊文春」の有料記事を2017年1月10日より配信する際に、LINEコインというプラットフォーム内通貨によるマイクロペイメントが利用されていることを指摘し、東洋経済オンラインでも同様の試みを検討しているかと質問した。
これに対し、東洋経済の山田氏は「東洋経済オンラインは無料、週刊東洋経済プラスは月額2500円という展開をしている。東洋経済オンラインのロイヤルユーザーを週刊東洋経済プラスに移行することはありうる。ほかにも記事を通じた東洋経済新報社の出版物、書籍へのAmazon購買への誘導で大きな成果が出ている」と語った。
「自分たちはパブリッシャーであると同時にプラットフォームとして何かしていきたい。1日で作れるのは10〜15本。東京カレンダー、GQジャパンなど他社の記事を載せている。キュレーションメディアの引力はとても強いものがある。メディア同士で記事を交換する。自前主義だけではなくお互い協力できればいい」。
ハフポス竹下氏:メディアの質問われる時代
ハフポス編集長の竹下隆一郎氏は「ハフポスは全部無料で読めるモデルだ。当初は拡大路線。2016年は媒体のブランディングを混ぜてきた。リアルイベントに力を注いでいる。Facebookライブ動画に取り組んでいる。LINEと組んだのは、自分らに編成権があるからだ。分散型時代は外にどうでていくかだ。スマートニュース、グノシーとも協働している。スマホという陣地を取る。いまは陣地を取る時代だと見て外に出ている」と話した。
昨年秋のインタビューでも、竹下氏は読者がいるプラットフォームに記事を出すことについて語っていた。
竹下氏は一連の偽ニュースや医療メディア騒動に話がめぐると「メディアの質が問われている。ハフポスもキュレーションはしているが、編集部員2人がチェック。医療情報はお医者さんに問い合わせてチェックしているが、こういう努力が表にでない」と指摘。払ったコストに対して対価がないケースは多い。「アメリカだと偽ニュースが大統領選に影響を与えてしまっている。ビジネスがどうか、というか、どういう社会をつくるかという問題になっている」と語った。
「永田町、霞が関ではいまだにインターネットが響かない。『保育園落ちた日本死ね!』は国会でも取り上げられたが、日本の中枢の部分にはこういうネットへの感度があまりないのが、今後変わればいい」。
エブリー吉田氏:手間かかるブランデッドコンテンツを進化
エブリーは動画コンテンツの各プラットフォーム向けに配信する分散型動画メディアを展開する。メイクやヘアアレンジといった美容カテゴリの動画を配信する「カロス」、レシピを中心にグルメカテゴリの動画を配信する「デリッシュキッチン」を展開している。デリッシュキッチンは運用7カ月で120超の広告記事を獲得(詳細は矢野貴久子氏の記事を参照していただきたい)。
デリッシュキッチンは短期間のうちに急成長した。「動画の流れがきていて、タイミングと合致した」。吉田氏はリーチ数において、オーガニックで増えている割合が広告で増やしている割合より大きいと説明した。
エブリー代表取締役の吉田大成氏は「昨年メディアではいろいろあった。質を大事にしている。質がメディアにとって問われる。メディアも広告を入れる広告主/代理店もそうだ。量から質に逆になっていくことが望ましい」と話した。
「これまではテレビCMをバンと打って、ブランドの認知をあげたが、見てくれない年齢層が出てきている。その代わりとしてデジタルでどう認知を生み出せるかが課題になっている。ブランデッドコンテンツには手間がかかる点があるが、進化させていきたい」
※DIGIDAY[日本版]は「Data Driven Marketing Conference」のメディアスポサンサーです。
Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock