「広告の透明性対策の究極は、コントロールにある」:PubMatic ニック・コバック氏 / 廣瀬道輝氏

米国におけるプログラマティック広告の普及は目覚ましい。2017年10月のeマーケター(eMarketer)のレポートによると、2018年には米国のディスプレイ広告の8割以上は、プログラマティック広告が占めると予想されている。

プログラマティックの特長は、リアルタイム入札(RTB)のプロトコルによる広告枠や、入札額の「コントロール性」である。だが、パブマティック(PubMatic)カントリーマネージャーのニック・コバック氏(TOP画像左)は、「日本では広告の透明性がネックとなり、特にブランド広告主が二の足を踏んでいるのが現状だ」と語った。また、同社セールスマネージャーの廣瀬道輝氏(TOP画像右)は、「プログラマティックのコントロール性を高めることがエコシステム内に透明性を生み出す」と述べる。

デジタル広告の透明性を確保するためのキャンペーン「Let’s Be Clear(レッツ・ビー・クリア)」を、米国に続いて日本でも本格展開していくパブマティック。両氏に、デジタル広告の透明性問題や、インプレッションの「民主化」のカギを握る「ヘッダー入札」の現在とこれからについて聞いた。

◆ ◆ ◆

――プログラマティック広告の現状について、日本と海外の違いは?

ニック・コバック氏(以下、コバック):現在、国内外を問わず、多くのSSP(サプライサイドプラットフォーム)事業者が日本市場に存在しており、いわゆる「フルハウス状態」です。市場としての日本は有望視されていますが、プログラマティック広告はインターネット広告のわずか数%に過ぎないのが現状で、米国に比べると普及が遅れていると感じています。いまはどちらかというと、リターゲティングの方が多いですね。

日本のプログラマティック広告が獲得重視型から認知重視型へシフトしていくためには、質を確保しなければなりません。アドフラウドを排除し、クリアなマーケットプレイスを作らなければならないのです。

もうひとつは大事なのは「動画」です。アメリカは動画広告が先行しており、プログラマティックの領域でも動画に対するニーズが高まっています。この点、日本はまだ、動画広告の枠自体が少ない状況ですが、今後は、さまざまなオンライン動画サービスが登場し、4K放送もはじまることから、2020年に向けオンライン動画市場がどうなるのか、注視しているところです。

――アドフラウドの問題も、2017年は大きな話題になりました

コバック:そうですね。Googleは2017年9月、不正トラフィックの払い戻しをはじめとするアドフラウド対策方針を発表しました。日本はいわゆる「ポイントサイト」と呼ばれるリワード広告を中心としたインセンティブサイトがあり、米国に比べてフラウド率が高い傾向がありますが、今後は透明性の高い広告が増えていくでしょう。

これまでは、パブリッシャーにとって、自分たちの媒体にフラウドが存在しているのかどうかさえわからない状況でした。ポリシーや測定ツールが整備され、「これがフラウドだ」と明確になることで、業界全体でフラウド排除の流れが進んでいくと思います。

パブマティックは、2017年11月7日に広告詐欺防止プログラム(Fraud Free)プログラムを発表しました。このプログラムにより、パブマティックのプラットフォームを経由して配信された広告においてフラウドが検出された場合、その疑わしいトラフィックについて速やかに返金します。

「業界全体でフラウド排除の流れが進んでいく」とコバック氏

「業界全体でフラウド排除の流れが進んでいく」とコバック氏

――パブマティックのデジタル広告の透明性確保の取り組みとは?

コバック:パブマティックは、昨年6月からグローバルで「Let’s Be Clear」というキャンペーンを開始しております。このキャンペーンは今後、日本でも本格的に展開していきます。

廣瀬道輝氏(以下、廣瀬):日本でもブランドセーフティやアドフラウド、ビューアビリティなど、安全に関する「透明性」についての関心が高まってきています。パブマティックでは、透明性の問題とは、つまるところコントロールだと考えています。

つまり、サプライサイドでいえば、広告の質やレイテンシーを誰が管理するのかといった問題や、オークションダイナミクス(オークションの仕組みやプライシング、プラットフォームフィー)などの透明性を高めることです。また、広告主にとっては、ビューアビリティやインベントリーの質といった点で透明性を担保する必要があります。

そこで、「コントロール性」が重要なのです。プログラマティックオークションにおける価格設定と料金の分配を誰が管理するのか、こうした判断を誰のものにするのかが、エコシステム内に透明性を生み出すには重要だと考えています。

――では、日本におけるヘッダー入札の現状は?

コバック:パブマティックにおけるグローバルのパブリッシャーのヘッダーダグ経由でのインプレッションは、80%を超えています。しかし、日本市場はまだアーリーステージにあり、Googleの「Doubleclick for Publishers(DFP)」以外のアドサーバー利用率もいまだ高く、ヘッダー入札を導入中のパブリッシャーは多くはありません。

しかし、この1年で認知度が高まりつつあり、複数のヘッダー入札の導入に挑戦しているパブリッシャーも増えてきています。

廣瀬:プログラマティックで買い付けを行う広告主は、CPA、CPCを中心指標とした「獲得モデル」が中心でした。そのため、広告主にとっては、検索連動型であれ、アドネットワークであれ、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)であれ、獲得指標を最適化できる広告は全部「運用型広告」としてひと括りになっていたのです。

――だからこそ、普及が遅れている?

廣瀬:いえ、獲得型の広告主はプログラマティックの活用が進んでいます。しかし広告主が獲得モデルに偏っており、プログラマティック=獲得モデルというイメージが特にブランド予算を使いたい広告主にとって、プログラマティックに参入しにくい状況があるのではないでしょうか。

そもそもプログラマティックという定義に検索連動型やアドネットワークは含まれません。特にGDNやYDNと比較されることが多いプログラマティック広告ですが、できることが違うのです。RTBのプロトコルを使えば広告枠も入札額も指定できますし、パブリッシャーも買付け可能な広告主を限定したり広告枠の単価を自由に設定することが可能です。パブリッシャーのファーストパーティ―データを活用することもできます。本来、このコントロール性こそ、プログラマティックの特長というべきものです。そのためには広告主がもっとDSPを使った広告運用を拡大して頂きたいですし、広告を制御するパブリッシャーにとって、自社のインベントリーに公平にアクセス(入札)できる機会を整備する必要があり、そこでヘッダー入札が重要になるのです。

現行のウォーターフォール型では、プログラマティック経由のデマンドが、もっとも高い価格を提示できる場合でも、純広告を優先していましたが、ヘッダータグを入れていれば、アドサーバーの設定次第で、プログラマティック経由の需要が純広告に優先して落札することが可能になります。これをパブマティックでは、インプレッションの「民主化」と呼んでいます。

「ヘッダー入札ではインプレッションの民主化が可能」と廣瀬氏

「ヘッダー入札ではインプレッションの民主化が可能」と廣瀬氏

――なるほど、そこで「Prebid.org, Inc.」なのですね

コバック:2017年9月に設立が発表されたPrebid.org, Inc.は、オープンソーステクノロジー「Prebid(プレビッド)」を使ったヘッダー入札を媒体に普及させるための団体。パブマティックはこのメンバーの一社で、オープンソースのヘッダー入札ソリューションの開発・普及に特化した活動に積極的に貢献しています。

その活動のひとつが、Prebidを使ったパブマティックのソリューション「OpenWrap(オープンラップ)」です。これは、Prebidをベースにした、レポーティングツールや媒体に対する技術サポートなどがパッケージされたソリューションです。オープンソースのPrebidをベースにすることで透明性を担保しました。

――オープンソースがなぜ透明性につながるのですか?

廣瀬:かつてのOpenWrapは、パブマティックの独自スクリプトを使っていました。しかし、自前のラッパースクリプトは他社からは「恣意的にオークションしているのではないか」と思われやすいのです。いわゆるブラックボックスだと思われる。そこでコアスクリプトにオープンソースを使うよう戦略展開しました。

そのなかで、パブマティックの差別化要因は、「レポーティング」です。複数のヘッダーを登録することが前提なので、各ヘッダーやビッターの数値の管理・確認など分析のしやすさが大事なポイントです。

そして、各ヘッダーのコントロールを、プログラミングなしにUI上で行える容易さも特長。運用担当者がエンジニアにお願いしなくてもUI上追加、削除、変更が可能なのです。

――ヘッダー入札では、読み込み速度の問題も指摘されます

廣瀬:従来のヘッダー入札は、クライアントサイド(ブラウザーベース)で行われてきました。しかし、デマンドパートナーが増えると、ページに挿入するタグの数が増え、入札の窓口で遅延(レイテンシー)が生じる問題が顕在化しました。

そこで、タグを束ねるラッパーソリューションが注目されています。ラッパーを活用することで、タグを一本化できるため、レイテンシーがそもそも少なくなります。

さらに、OpenWrapはクライアントサイドとサーバーサイドのハイブリッド対応で、サーバーサイドのソリューションを2018年にリリース予定です。Prebidのサーバーサイドのテクノロジーを活用しており、Prebidのバージョンアップにより、レイテンシーの問題についてはだいぶ解消されてきています。

――OpenWrapは、どんなパブリッシャーに採用されていますか?

コバック:日本国内でもアトミックスメディア(Forbes JAPAN)、クリエイティヴ・リンク(AFPBB News)、ゴルフダイジェスト・オンライン、サイゾー(ビジネスジャーナル)、東洋経済新報社 、Perform Media Sales Japanなど(五十音順、敬称略)の大手パブリッシャーに導入していただいており、おおむね好評をいただいています。ラッパーソリューションのいいところは、ヘッダーのプレイヤーを容易に追加できる点です。最近では、Facebookなどの大手プラットフォームもヘッダー入札を推奨しており、ラッパーを経由しないと、広告枠を買いたくないという流れになっています。

また、「パブマティックのラッパーを使ってください」と、プラットフォームから紹介をいただくケースも増えており、ヘッダー入札を中心としたエコシステムが確立されつつある感触を得ています。

――今後、デジタル広告の透明性のために何が必要でしょう?

廣瀬:デジタル広告の透明性を高めるヘッダー入札の導入を進めることで、パブリッシャーはデマンドサイドが自社の広告インベントリーに適切にアクセスできる環境を整備できます。すると、バイヤーサイドに自社資産の価値を伝えることができるようになります。

そして、プログラマティック全体で「Let’s Be Clear」が求められています。日本のプログラマティックの透明性が高まり、質が担保されれば、ブランド広告主の参入が進んでいくでしょう。いまはその過渡期にあり、パブマティックは、プログラマティック市場をクリアにしていく環境作りを、今後も進めていきたいです。

パブマティック日本法人の社員一同で

パブマティック日本法人の社員一同で

▼ニック・コバック
パブマティック株式会社 カントリーマネージャー

 

日本市場におけるパブマティックの成長や戦略的パートナーシップを構築するため、現職に2017年10月に就任。それ以前の5年間は、cciとのパートナーシップを構築し、OpenX Japanを設立、同社のマネージングディレクターとしてビジネス拡大の役割を果たした。また、A9(Amazonの関連会社)やGoogleの新ソリューションのローンチに従事した経験を保有する。

▼廣瀬 道輝
パブマティック株式会社 カスタマーサクセスディレクター 

 

2004年アイレップ入社。サーチエンジンマーケティングに従事後、2009年シーサーに入社しブログメディアやアプリ開発における広告営業、マネタイズを担当。その後、マリンソフトウェアの営業職を経てパブマティックに2014年に入社し新規媒体社開発に貢献、2016年より現職。

Sponsored by PubMatic

Written by 阿部欽一
Photo by 渡部幸和