古いコンテンツからさらに収益をあげられるビジネスモデルの必要性をパブリッシャーが認識したのは、数年前のことだ。いま、こうした苦労の成果が実りつつある。リファイナリー29(Refinery29)、スリリスト(Thrillist)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)などの最新事例を追う。
古いコンテンツからさらに収益をあげられるビジネスモデルの必要性をパブリッシャーが認識するようになったのは、数年前のことだ。いま、こうした苦労の成果が実りつつある。
印刷とデジタルの両面でアーカイブ素材を活用するアトランティック(The Atlantic)は、毎月古いコンテンツからトラフィックの4分の1以上を生み出している。ビジネス・インサイダー(Business Insider)をはじめとするパブリッシャーでは、その数字がさらに高く、リファイナリー29(Refinery29)のようにライフスタイルを専門にするパブリッシャーになると、その数字は一層高い。同社によると、その割合は35%で、いまなお増加しているという。
「我々は、有名人のニュースだけで事業を築いていくつもりはない」とリファイナリー29でコンテンツ戦略およびイノベーション部門のシニアバイスプレジデントを務めるネハ・ガンジー氏は語る。「持続的な成長とブランドロイヤルティを望むなら、ニュースサイクルだけに賭けるのはあまりにも危険だ」。
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多彩なリユース戦術
パブリッシャーにとって、過去に作成した息の長いコンテンツは常にトラフィックの源であり、それをビジネスモデルの中核に据えているパブリッシャーもある。しかし、ここのところパブリッシャーは、大手も中小も、配信する記事からより大きな価値を得ようと多彩な戦術を用いるようになってきた。見出しを変えて同じニュースを再配信する、Facebookのプロモートポストで購読してくれそうな人を狙う、高品質な記事を欲しがっている広告主に古いコンテンツを配信する、などといった戦略だ。
過去のコンテンツのアップデートに注力することで、パブリッシャーは大きな収益をあげてきた。スリリスト(Thrillist)でチーフクリエイティブディレクターを務めるベン・ロビンソン氏は、「たとえば、もし我々が『サンフランシスコでいちばんおいしいハンバーガー』のリストを作っておきながら、年に1回のアップデートさえ行わなかったら、それは手抜きだ。コンテンツのアップデートこそ、我々が積極的に取り組んできた領域だ」と述べる。
この攻めの姿勢は実際に成果をあげてきた。2年前、スリリストが検索から獲得するトラフィックはたったの10%だったが、2016年の終わりには40%近くにまで跳ね上がったのだ。
NYTのチャレンジ
だが、パブリッシャーがやろうとしているのは、コンテンツのアップデートだけではない。たとえばニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、2014年にリークされたイノベーションレポートが大きな話題を呼んだあと、アーカイブについて真剣に考えるようになり、アーカイブ素材を活用して新たなサイトセクションが作れないか試行している。
2016年夏、ニューヨーク・タイムズは「スマーターリビング(Smarter Living)」というコラムを開始したが、素材の大半は何年か前に投稿された古い記事だった。12月半ばには専任の編集担当者が配属され、現在は社内の多数のデスクからオリジナルの素材を幅広く調達している。ニュースレターとオリジナルのマルチメディアコンテンツの計画も進行中だ。
「開始当初は、ほとんどがアーカイブ素材だった」とスマーターリビングの編集担当者、ティム・ヘレーラ氏は語る。「アーカイブ素材とニュースのバランスが少しずつ変わり、いまではデスクの方から売り込みに来てくれるほどだ」。
ヘレーラ氏にとって、何に焦点を当てるべきかを把握するのは難しいことではない。サイト内検索や読者からのメール、さらには過去のコンテンツパフォーマンスまで、あらゆるものを活用できるからだ。必要に応じて記事は再びタグづけされ、記者の力を借りてアップデートする場合もある。
今後はこうした情報を活用して、動画やライブチャットなどリソースを必要とするコンテンツも作っていく予定だ。これはBuzzFeedが、うまくいったコンテンツをあるメディアから別のメディアへと適応させるために用いた戦略と似ている。「この流れはしごく当然のことだと思われる」と、へレーラ氏は言う。
Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by GettyImage