ショッピングシーズンがはじまった。広告市場がシビアな昨今、パブリッシャーは新たな収入源を探している。それはアフィリエイトコンテンツだけでない。広告主と協力してギフトガイド内でネイティブアドを仕掛けたり、インスタグラムやPinterestなどの直接的なマネタイズが可能なプラットフォームを利用する例もある。
ホリデーショッピングシーズンが本格的にはじまった。広告市場がシビアになりつつある昨今、パブリッシャーは読者に直接働きかけて、新たな収入源の開拓を試みている。
一部のパブリッシャーにとって、この試みはアフィリエイト付きのギフトガイドを作成するだけでない。広告主と協力してギフトガイド内にプロダクトプレイスメントを仕掛けたり、インスタグラムやPinterestなどの直接的なマネタイズが可能なプラットフォームにギフトガイドを投稿したりする例もある。
あるいは、11月22日にローンチされたインスタイル(InStyle)の「30デイズ・オブ・ディールズ(30 Days of Deals)」のように、ホリデー期間中オープンするフラッシュセールサイトやウェブショップをローンチする例も見られる。
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「我々は自社サイトの多くで、商品にとって最善の環境を作り出している」と、タイム社(Time Inc.)でエンターテインメント・スポーツ・スタイルブランド部門のデジタルディレクターを務めるウィル・リー氏は語る。
こうしたことが起きている理由は想像に難くない。大手経営コンサルティング企業PwC(PricewaterhouseCoopers)によると、モバイルショッピングおよびeコマース全体で、2016年のホリデーシーズン中には25%の売上急増が見込まれているという。また、ブラックフライデー(11月の第4金曜日)は、一般には小売業者にとってのかき入れどきとして知られる一方で、パブリッシャーにとっても重要な日になってきた。
スタックコマース(StackCommerce)によると、商品販売を手がけるパブリッシャーは、それがアフィリエイトリンク経由であれ、ネイティブアド経由であれ、自社ブランドストア経由であれ、普段の売上をブラックフライデーには3倍にできるという。なおスタックコマースは、AOL、ゴーカーメディア(Gawker Media)、ボニアー(Bonnier)をはじめとするパブリッシャーのeコマース業務を支援している。
これほど多くのパブリッシャーが利益を得ようと躍起になっているホリデーシーズンも、今年がはじめてだ。ますます多くのパブリッシャーが、単にアフィリエイトリンクを試すだけでなく、さまざまなサードパーティーと手を結び、eコマースへの関与を深めつつある。スタックコマースのCEOを務めるジョシュ・ペイン氏によると、同社が協働するパブリッシャーの半数以上が、多様なサードパーティーのeコマースパートナーを利用しているという。
今年のホリデーシーズンを技術的にもっとも進んだものにするであろうパブリッシャーの試みを、以下にいくつか紹介しよう。
ギフトガイドがネイティブアドの場に
デジタルパブリッシングの世界では、「政教分離」が事実上消滅した。本記事のために取材したパブリッシャーのすべてが、いまなおエディター陣が公式ギフトガイドの内容を選んでいる点を強調した一方で、一部は広告主との協議を重ねている。その内容は、ギフトガイドや推奨品の周囲に配置するプロダクトプレイスメントやスポンサードコンテンツの機会についてだ。
「我々は、適切と思われる場所でパートナーと協働するつもりだ」とタイム社のリー氏は語る。「つまり、編集に関する我々のガイドラインと基準が満たされる場所だ」。
BuzzFeedを含むほかのパブリッシャーは、すでにギフトガイドをネイティブアドの機会に変え、広告主用にカスタマイズされたギフトガイドを作成している。
トレンドを先読みする
かつてのパブリッシャーは、その年のマストアイテムを取り巻く熱狂を取り上げるだけだった。だが、彼らはいまや、アフィリエイトリンクを介して、あるいは自前のストアを通じて、商品を自ら販売できるのだ。
たとえばビジネスインサイダー(Business Insider)で、興味深い製品やサービスを読者に紹介する「インサーダーピックス(Insider Picks)」のチーム(同チームは前年同時期と比べて倍の規模になっている)は、トレンドになっているトピックに関するデータを活用して、読者に何を提供すべきかを判断。その後、彼らは特定の商品を見つけて、自社でテストしたのちに読者に推奨している。
「我々はデータを使って、注力すべきカテゴリーについての戦略を立てている」と、ビジネスインサイダーでコマース部門のディレクターを務めるブレトン・フィシェッティ氏は語る。
(マネタイズできる)コンテンツ配信
昨年のいまごろは誰も、インスタグラムやPinterestをeコマースの本格的な原動力として話題にしていなかった。それがいまや、トップセールスを記録するチャンネルにインスタグラムを変えたパブリッシャーや、アフィリエイトリンクを導入したPinterestにリソースに再投資しているパブリッシャーなどが出てきている。
このような理由で、ポップシュガー(Popsugar)など一部のパブリッシャーは、ギフトガイドの商品に対する購入可能リンクをインスタグラムの「ストーリーズ」機能に落とし込んだり、ギフトガイドを直接Pinterestに投稿したりといった実験を試みている。

ポップシュガーがライブ配信するホリデーギフト番組(視聴者プレゼントあり)には、カーリー・クロス氏のコーナーも。これは、Facebookのライブ動画をはじめとする複数のプラットフォームで12月6日、ライブ配信される予定だ。
さらには、いま軌道に乗っているものを新たなプラットフォームに移す好機でもある。ギフトガイドに関するライブ番組を5年前からYouTubeなどのプラットフォームで手がけてきたポップシュガーは、この新たな形式をFacebookのライブ動画にも広げようとしている。
同社は、カーリー・クロスやアイーシャ・カリーなどのセレブタレントを呼び物にして、さまざまなチャンネルからユーザーのアクセスが促されることを期待している。「このライブ番組は我々にとっての大きなテントポール(制作会社の業績を支える番組)だ」と、ポップシュガースタジオ(Popsugar Studios)のプレジデントを務めるデビッド・グラント氏は語る。
リソースの倍賭け
うまく機能するものに注ぐリソースを増やすことは、合理的な戦術だ。場合によっては、それが人員の増加を意味することもあれば(BuzzFeedのコマースチームは、1月と比較して3倍以上の規模になっている)、ホリデーに向けたアイデアへの投資を大幅に増やすことを意味することもある。
たとえば、すでに今年のホリデーシーズンに向けて、1ダースを超えるギフトガイドを配信しているデジタルメディアパブリッシャー「リファイナリー29(Refinery29)」は、昨年同社が開発したギフトガイドキュレーターの機能を大幅に拡張。今年は、プレゼントを贈る相手の性格や特性をサイトに伝えたら、同誌のエディターたちが吟味した100以上の商品から、オススメのリストが生成されるようになった。
Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)