インフルエンサー と媒体社、コマース開発で共存共栄を狙う

コマース売上拡大を狙うパブリッシャー各社は、インフルエンサーに注目しはじめている。彼らをマーケティングやディストリビューションの手段としてだけでなく、クリエイティブパートナーと認識するようになったのだ。

コンプレックスネットワーク(Complex Network)は、複数のデザイナーやアーティストと共同開発してきた商品を今年後半にリリースする予定であると、同社のコンテンツ配信・ビジネス開発担当シニアバイスプレジデントを務める、マイルス・オコネル氏はいう。これにより、同社はふたつのもっとも価値ある資産を増やすことができる。

ひとつは、急成長中のコマースビジネス(食に関するバーティカルサイトでの激辛ソースの売上が大きく貢献している)。もうひとつは、アーティスト、デザイナー、セレブリティとの関係だ(オコネル氏は、この商品開発にあたってコンプレックスネットワークと提携している個人の名前は明かさなかった)。

「我々はある意味で仲介業者だ」と、オコネル氏は語る。「我々は、オーディエンスともブランドとも強固な関係を築いている。お互いを直接知らない大勢の人々をつなぐ存在なのだ」。

相利的な関係構築

コマースビジネスを新たな柱にしようと目論む、コンプレックスネットワークのこうした姿勢は、パブリッシャーがコンテンツ以外の分野でインフルエンサーやクリエーターと提携するという、最近のトレンドの一例だ。ほかにも、テレビショッピングのQVCは、インフルエンサーと提携し、インテリアグッズなどのカスタムラインを開発している。また、デジタルスタジオのルースターティース(Rooster Teeth)は先日、独立アニメーターのプロジェクト制作支援を目的とした250万ドル(約2億7344万円)規模の開発基金を設立し、同時にアニメーターの商品開発やコマースビジネスの支援も行うとしている。

「我々はそもそも、こうした能力を自社のために開発してきた」と、ルースターティースでパートナーシップ担当シニアバイスプレジデントを務める、ルイス・メディナ氏はいう。「そしてシステムが出来上がるにつれ、それが社外のクリエーターにも役立つものであることに気づいたのだ」。

コマースを共同開発するパブリッシャーとインフルエンサーは、相利的な関係を築くことができる。パブリッシャーはインフルエンサーから新たなクリエイティブアイデアとオーディエンスへのアクセスを手に入れ、インフルエンサーは自分では賄いきれないバックエンドサポートを得る。

「莫大な需要がある」

ほとんどのパブリッシャーにとって、コマースは成長中とはいえ、全体に占める割合はわずかだ。けれどもインフルエンサー側からしてみれば、コマースは主要な収入源のひとつだ。インクトブランズ(Inked Brands)の創業者エイプリル・グレイザー氏によれば、クリエーターのなかには月に数十万ドル(数千万円)のコマース売上がある人もいる。そこまでいかないにしても、大部分のクリエーターの売上は、3カ月で10万ドル(約1100万円)を超えるという。

「莫大な需要がある」と、グレイザー氏はいう。「スポンサーシップは長続きしないし、長期的な売上が期待できないことに、インフルエンサーは気づいている。彼らは持続的成長が見込める形で、ポートフォリオに資産を配分したいと考えているのだ」。

しかし、商品開発は手間のかかる仕事でもある。ブランドスポンサーシップの締結はすぐにできるが、商品の開発はそれ自体が何カ月もの時間を要するうえ、適切なパートナーを見つけ出さなくてはならない。オコネル氏は、まったく新しいパートナーを迎えて戦略を練るよりも、長年のつきあいのあるクリエーターとの関係を主軸に据えていると話す。

迅速さと臨機応変さ

このような業務は通常、パブリッシャーの組織内のさまざまな部署がばらばらに担当している。オコネル氏によれば、コンプレックスネットワークにはコマース担当の5~6人のグループがあるが、彼らは皆、ほかの業務と兼任でコマースに関わっている。一方、コマースが全売上の20%を占めるルースターティースには、専任のマーチャンダイズ担当部署がある。

導入が比較的容易なアフィリエイトコマースには、さまざまな分野のパブリッシャーが参入している。しかし、商品の開発・販売は高コストかつ高リスクであり、挑戦できるパブリッシャーは限られている。「それに見合った能力のあるパブリッシャーの参入は続くだろう。だが、巨大な組織を動かすのは容易ではない。(コマースには)迅速さと臨機応変さが求められる」と、グレイザー氏は語った。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)