これまでプラットフォームへの依存を懸念してきたパフリッシャーだが、いまやeコマースでも警戒心を強めている。いまや巨大帝国となったAmazon。消費者への利便性で圧倒的に優位に立つAmazonに飲み込まれないようにするためには、パブリッシャーはどういう戦略をとるべきなのか。
これまでプラットフォームへの依存を懸念してきたパフリッシャーだが、いまやeコマースでも警戒心を強めている。
新たな収益源を求めてコマース事業に参入するパブリッシャーが増えてきた。その多くは迷うことなくAmazonという巨人に飛び込んでいる。Amazonは確かに便利だが、依存性のあるパートナーであることも忘れてはならない。パブリッシャーのなかには、Amazonのアフィリエイト収益が全体の80%以上を占める企業もあり、特定の商品カテゴリーで販売手数料が減る傾向にある。これは、ビジネス戦略全体の死活問題になりかねない。
こうした事情から、多くのパブリッシャーは、Amazonに負けないeコマース戦略を打ち出すのに躍起になっている。今回は、9月28日にニューヨークで開催されたモバイルコマースをテーマにした「TAP」カンファレンスで聞いたアドバイスと意見の一部を紹介しよう。
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オーディエンスデータをパーソナライズへ
「パブリッシャーがコマースを展開する際の強みは、自社のユーザーベースをよりよく知っていることだ」と語るのは、ワシントン・ポスト(The Washington Post)でデジタル広告エンジニアリングディレクターを務めるアラム・ザッカー=シャーフ氏だ。「Amazonは、万人にサービスを提供するため、一般的にならざるをえない。一方、パブリッシャーの場合、読者の特別な関心ごとを知っていれば、その興味に合わせて体験をカスタマイズすることができる」。さらにパブリッシャーは、記事のレコメンド用に確立した詳細なオーディエンス分類を、商品のレコメンドにも利用できるだろう、とザッカー=シャーフ氏は付け加えた。
パブリッシャーとしての信頼
大半のユーザーは、購入しようとしたものを買うためにAmazonへ向かうが、キュレーションの上位をざっと見るだけで決めてしまう。こうした傾向は、すでに読者の信頼を得ているパブリッシャーにとって有利にはたらく。「つまるところ、キュレーションなのだ」と、女性向けファッションサイトのキープ・コム(Keep.com)で、パートナーシップ担当ディレクターを務めるジャクリーン・ラディス氏は語る。「人がファネルの最上部としてパブリッシャーに来るのは、新しい提案を求めているからだ」。
ストーリーテリング
多くのブランドはいまもAmazonを警戒しているし、Amazonの巨大なeコマースサイトで自社製品のみを目立たせるにも限界がある。自然食品や健康生活を提案するキュレーションサイト、ミューズリー(Musely)の創業者ジャック・ジア氏は、「『プロダクトづくりの民主化』はパブリッシャーに好機をもたらす」と指摘する。
「我々がいま飲んでいるボトル入りの水が何種類あるか考えてみてほしい。各メーカーにオーディエンスがいる。だが、そのなかの1種類を選んでもらうためには、その製品のストーリーを事前に伝える必要がある」と、ジア氏は語る。「メーカーではないウォルマート(Walmart)やAmazonがそれをやるのは難しい」。
決済機能で時間短縮
パブリッシャーが結局Amazonに頼ってしまう要因のひとつは、消費者にとっての便利さだ。モバイルアプリ分析企業のアップトピア(Apptopia)のデータによると、月間4000万人以上がAmazonのiPhoneアプリを利用し、毎月150万人が新たにアプリをダウンロードしているという。
多くのパブリッシャーは、読者を別の小売業者のアプリなどへ向かわせることを好まない。小売業者のアプリは、インストール母数が小さく、支払い手続きも面倒で無駄に時間がかかるかもしれないからだ。Apple Payのような決済システムを導入すれば、スピードと便利さでこの無駄を省くことができる。
「人は、できる限り速やかに支払いを済ませようとする」と、モバイル向けメディアコンテンツを開発するAttnの最高技術責任者(CTO)であるジェイク・マグロウ氏は語る。同氏は以前、リファイナリー29(Refinery29)に5年在籍し、消費者の購買行動をよく知る。「利用者の多くは価格に敏感だが、それ以上に時間に敏感だ」。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)