ポッドキャストが牽引する、ブランドコンテンツの世界:その課題と対応策

ブランドコンテンツのリニューアルに踏み切る企業は一般的に多くはない。過去を振り返っても、リニューアル率は40%を切るあたりで低迷している。だがポッドキャストに関しては話がちがうようだ。その理由は、広告主が何にも邪魔されることなくオーディエンスに視聴してもらえる点にある。

11月30日に、「DTR」のセカンドシーズンが開始した。DTRは、マッチングアプリ「Tinder(ティンダー)」が提供する、ギムレットメディア(Gimlet Media)のコンテンツスタジオ製作のポッドキャストだ。同ポッドキャストは、Appleのポッドキャストアプリでおすすめ番組としてフィーチャーされている。今年に入ってから「DTR」以外にも多数のポッドキャストがリニューアルされた。ポッドキャスト企業のパシフィックコンテンツ(Pacific Contents)が今年手がけた、プルデンシャル(Prudential)、マカフィー(McAfee)、スラック(Slack)をはじめとするポッドキャスト番組はいずれもリニューアルされている。ギムレットクリエイティブ(Gimlet Creative)がフルシーズンを製作した最初の2番組はいずれもリニューアルしてセカンドシーズンを放送。最近、ミッドロール(Midroll)がブランドからの依頼でプロデュースした非営利のポッドキャストは、クライアントからあまりに好評だったため、第1回の放送前に続編製作の依頼が来たほどだ。

ブランドのポッドキャスト番組の規模は、ほかのブランドコンテンツにはまだまだ遠く及ばない。だがこうして好評を博していることで、広告主のためのフォーマットとしては期待に答えていると言えるのではないだろうか。

コストとリーチに課題

パシフィックコンテンツのビジネスパートナーであるスティーブ・プラット氏は「いまの消費者は、どんなマーケティングをしようと見る側が見たくなければ届かないんだ」と分析し、次のように指摘した。「消費者は見たいと思わないものは無視するか飛ばしてしまう。だからブランドは消費者に愛されるようなものを作る必要がある」。

ブランドにとってポッドキャスト番組はなかなか高価な買い物だ。ブランドの番組をフルシーズンで製作すると、日本円換算すると5000万円近い投資が必要だし、プロダクションバリューの高い番組となると価格はさらに跳ね上がる。メディアエージェンシーであるアドリザルツ・メディア(Ad Results Media)のプレジデント、ラッセル・リンドレー氏は「スタート価格が5000万円、本当に質が高いものを作りたければ1億円だ」と明かす。

その割に、広告主がリーチできるオーディエンスは限定的だ。GEの「ザ・メッセージ(The Message)」といったヒット番組なら何百万人ものリスナーを集められる一方で、専門性の高い番組ではそうもいかない。たとえば「ドットフューチャー(.Future)」はビジネス上の技術投資を行う意思決定者を対象とした番組で、リスナーは10万人弱となっている。

ギムレットメディアの共同創設者、マット・リーバー氏は「ブランドにとって、ポッドキャストで膨大なリーチを得るのは難しい」と語る。

デジタル資産を有効活用

ターゲットオーディエンスに番組を宣伝するだけでも相当な投資が必要だ。オリジナル番組の予算を出している広告主は、番組を知ってもらうためほかのポッドキャストの広告スペースを買わなければいけないし、放送のため定期的に自社のデジタルチャネルを使う必要がある。

たとえばモジラ(Mozilla)はパシフィックコンテンツ製作の、インターネット環境の健全性についてとりあげているポッドキャスト「IRL」を放送している。同番組の宣伝のため、非営利企業であるモジラのブラウザFirefoxでは新しくタブを開くとIRLが読み込まれるようになっている。またティンダーは、「DTR」の宣伝に向けてティンダーアプリ内に同番組のプロフィールを作り、モバイルアプリから番組が見られるようにした。ユーザーが右にスワイプすると直接ポッドキャストのプレイヤーが開かれ、番組が再生される仕組みだ。パシフィックコンテンツのビジネスパートナー、スティーブ・プラット氏は、この戦略こそが「IRL」が最初の7回の放送で100万ダウンロード以上を達成した要因だろうと指摘した。現在「IRL」はセカンドシーズンの宣伝中だ。

「ブランドはほかのポッドキャストからすれば実に羨ましい存在だろう」とパット氏。「ブランドにはすでに数多くのチャネルや資産があって、それを少しいじるだけで良い。そして魅力のある番組を作りさえすれば、たくさんの人にすぐにリーチできるのだから」。

MAX WILLENS(原文 / 訳:SI Japan)