トラフィックを獲得したいパブリッシャーにとって、新たな期待の星が登場した。「Google Discover(ディスカバー)」だ。これはGoogleのモバイルホームページに推奨コンテンツを表示する機能で、ユーザーがモバイル版の「Chrome(クローム)」ブラウザで新しいタブを開くたびにコンテンツが読み込まれる。
トラフィックを獲得したいパブリッシャーにとって、新たな期待の星が登場した。「Google Discover(ディスカバー)」だ。これはGoogleのモバイルホームページに推奨コンテンツを表示する機能で、ユーザーがモバイル版の「Chrome(クローム)」ブラウザで新しいタブを開くたびにコンテンツが読み込まれる。
コンデナスト(Condé Nast)でヴォーグ・インターナショナル(Vogue International)のオーディエンス成長責任者を務めるサラ・マーシャル氏によれば、10月には複数の国でGoogle検索よりもDiscoverによるトラフィックの増加がみられたという。この変化がもっとも顕著にみられたのはインドとメキシコで、Google製品から得たトラフィックの4分の3以上がDiscoverからのものだった。また、「ヴォーグ・パリ(Vogue Paris)」を展開するフランスなど、ほかの市場でも大量のトラフィックがDiscoverによってもたらされた。
このような増加は外国市場に限定されるものではない。コンデナストでオーディエンス開発担当バイスプレジデントを務めるジョン・シハタ氏によれば、米国版ヴォーグがこの数カ月間にGoogleから得たトラフィックのうち、最大20%がDiscoverからのものだったという。
Advertisement
問題はあるが安定傾向
ほかの多くのトラフィック流入経路と同じく、Discoverに対する評価はパブリッシャーによって異なる。Vice Media(バイスメディア)の広報担当者は、より多くのオーディエンスを見つける場所としてDiscoverに「期待」を示し、「価値ある、安定した」流入経路だと述べていたが、検索トラフィックを重視する別のパブリッシャーは、Discoverには興味をそそられるものの、得られるトラフィックの量が一定しないと、この件に詳しい情報筋が匿名を条件に語ってくれた。
「(Discoverを)あてにしている人はまだいない」と、この情報筋は述べている。
別の情報筋によれば、Discoverから得られるトラフィックには期待がもてるが、量を予測するのが難しいという。その理由のひとつは、Discoverからサイトを訪れたユーザーの行動を把握できないことだ。
こうした問題点はあるものの、長期的にはDiscoverから得られるトラフィックは安定すると、複数のパブリッシャーが予測している。しかも、比較的忠実なオーディエンスと収益がもたらされるため、AMPを通じて安定的な収益を得られる可能性があるという。
もっとも、「我々の誰もが、アルゴリズムに伴うリスクを承知している」と、マーシャル氏が述べているように、Discoverはまだ実験段階にあるようだ。それでも、「(Discoverは)すでに定着していると思う」と、同氏は話す。
「ますますアグリゲーター化」
Discoverが米国よりほかの国々でヒットしている理由は定かではない。だが、マーシャル氏やシハタ氏は、モバイルデバイス市場とブラウザ市場の特性が影響していると考えている。Discoverが非常に大きな成果を上げている国は、Androidがモバイル市場で圧倒的なシェアを占めているのだ。スタットカウンター(Statcounter)のデータによれば、たとえばインドでは、Androidが94%のシェアを獲得し、携帯電話市場を支配している。これに対して米国では、iOSのほうがモバイルエコシステムでやや優勢だ。GoogleのブラウザであるChromeも普及しているが、モバイル市場でのシェアは45%と支配的ではない。
一方、「これはUX(ユーザー体験)の問題だ」というのは、検索コンプライアンスツールを手がけるランクセンス(RankSense)のCEO、ハムレット・バティスタ氏だ。「iOSでは、検索はメインの機能ではない。だが、AndroidはOSもUXも検索を主体としている」。
ただし、「Googleニュース(Google News)」などのGoogle製品と違い、どのトラフィックがDiscoverから流入したものなのかを分析するのはまだ困難だ。Googleは、2018年にDiscoverを開始してから2カ月後に、Discoverの参照トラフィックの流入元を、discover.google.comから「Googleクイックサーチボックス(Google Quick Search Box)」や別ドメイン(「Google APIs」)に変更した。Discoverから得られるオーディエンスが多いパブリッシャーは、「Google Search Console(Googleサーチコンソール)」を使用して、成果の高いコンテンツやDiscoverでのコンテンツ表示回数など、Discoverからのトラフィックに関するインサイトを得ることができる。しかし、これらのインサイトはGoogle独自のものであり、生データではなくレポートの形式で提供される。
「これはGoogleの行動がますますアグリゲーター化していることを示している」と、調査会社パセリ(Parse.ly)のシニアマーケットアナリスト、ケルシー・アーレントは指摘する。
とはいえ、このトラフィックは分析する価値がある。パセリが行った分析によれば、Googleの各チャンネルからサイトを訪れたユーザーのうち、リピーターが占める割合は平均27%と、ほかのどのソーシャルチャンネルよりも高かったのだ。
ロイヤルティを生む可能性
トラフィックの予測が難しいにもかかわらず、パブリッシャーがDiscoverに大きな期待を寄せている理由は、ユーザーにとってなじみやすく、利用が習慣化されやすいことにある。複数のパブリッシャーがまとめた初期のデータによれば、ユーザーのDiscoverフィードは、そのユーザーがGoogleニュースなどほかのGoogle製品で検索、閲覧したコンテンツに基づいてカスタマイズされているようだ。そのため、Discoverが特定のブランドに対する利用習慣やロイヤルティを生み出してくれる可能性がある。インドのヴォーグでは、編集チームがGoogleニュースとDiscoverの両方に最適化したコンテンツを制作しているという。
「まだこれからだ」とマーシャル氏は語った。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)