パブリッシャーのGoogle検索への回帰が進むにつれて、SEOの新しいテクニックが登場してきた。「スーパーボウルがはじまる時間は?」など、人々が答えを求めている質問やそのバリエーションを使ってトラフィックを増やすテクニックは、もう過去のものなのだろう。それに代わって、別の技が使われはじめている。
パブリッシャーのGoogle検索への回帰が進むにつれて、検索エンジン最適化(SEO)の新しいテクニックが登場してきた。「スーパーボウルがはじまる時間は?」など、人々が答えを求めている質問やそのバリエーションを使ってトラフィックを増やすテクニックは、もう過去のものなのだろう。それに代わって、別の技が使われはじめている。
キーワードを見出しに詰め込んだり、古い話を新しいもののように見せかけたりする手口は、Googleの不興を買った。だが、そのせいでパブリッシャーは、Googleがいま求めていることを理解し、Googleの好みに合わせて最適化を試みようとするようになった。GoogleがAMP(Accelerated Mobile Pages)と同時に導入した機能で、モバイル検索結果の一番上に表示されるカルーセル部分に掲載してもらいたがっているのだ。
ロデールの取り組み
パブリッシャーがよく使う戦術のひとつが「ソーシャルスワップ」だ。Googleは外部サイトからのリンクが多い投稿の方が信頼できると考えているという見方は、広く受け入れられている。健康とフィットネス専門のパブリッシャーであるロデール(Rodale)は、「メンズ・ヘルス(Men’s Health)」や「ランナーズ・ワールド(Runner’s World)」といった雑誌を発行しているが、大がかりなSEO施策の一環として、自サイトの記事のなかに似たようなテーマを扱う他サイトへのリンクを設置しはじめた。
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ロデールの最高執行責任者(COO)を務めるベス・ビューラー氏は「検索結果で我々の順位が振るわなければ、『ピュアワウ(PureWow)』にリンクを張る。そうすると、ピュアワウも我々のサイトにリンクしてくれるだろう」と説明する。
また、Googleのおかげで、ロデールのようなパブリッシャーのサイトのhttpsプロトコル移行が進んだ。消費者のプライバシー保護の観点から、httpsのサイトを優先させるとGoogleが発表したためだ。ビューラー氏によると、これがすでに効果をもたらしているという。2017年1~4月期のロデールの検索トラフィックは、前年同期と比べて32%増加した。多くのパブリッシャーが、モバイルウェブ高速化を目指したGoogleの取り組みであるAMPに対応すべく、ページを軽量化している。
パブリッシャーの現状
「ニューヨーク・マガジン(New York Magazine)」の製品部門を率いるケリー・マロニー氏は「人々はまだ、抜け穴をうまく利用しようとしている」と語る。
この背景には、パブリッシャーにとって人々をサイトに呼び戻すことがますます難しくなっている現実がある。プラットフォームは、トラフィック源としては頼りにならなくなってきた。FacebookやApple Newsは、プラットフォーム内に記事を投稿するようパブリッシャーに促し、パブリッシャーのサイトではなくクローズドな環境で直接読めるようにしている。一方、Googleは検索結果に表示する情報の量を増やしている。
コンデナスト(Condé Nast)でデジタル担当ゼネラルマネージャーを務めるエリック・ギリン氏は次のように述べる。「彼らは、プラットフォームで長い時間を過ごせるようにして、人々がそこから離れて他のサイトへ行く理由を減らそうとしている。非常に厳しい状況だ」。
注目を集める滞在時間
パブリッシャーが注意を払っているもうひとつの領域に、サイト滞在時間がある。ニューヨーク・マガジンでは、以前なら長文記事は複数に分割して、記事の数を増やすことでトラフィックを増やしてきた。その手はもう通用しない。Googleはより滞在時間の長い記事に見返りを与える、というのが現在の考え方になっているためだ。
「いま我々が言っているのは、長ければ長いほどよい、ということだ。」と、ニューヨーク・マガジンのマロニー氏。これはSEOドリブン型のフードカテゴリーでよく使われる戦術で、より長文のレシピを投稿するのだと、コンデナストのギリン氏は言い、「以前は12のレシピがあったなら、いまは25あるだろう」と指摘した。
ニュースのパブリッシャーも、エバーグリーンコンテンツのパブリッシャーも、検索からは大きなチャンスが得られると見ている。Googleのアルゴリズムは相変わらず謎かもしれないが、パブリッシャー側からすると、自分たちの戦略がどのように機能しているかをリアルタイムで見られるので、Facebookよりはコントロールしやすいように感じられる。
ヘッドラインの最適化
米国版「ガーディアン」(The Guardian US)へのトラフィックの31%は検索から来ている。この割合はソーシャルの2倍以上だ。したがって、米国版ガーディアンでは、検索への対応により多くの時間を費やしている。
米国版ガーディアンのSEOチームのスタッフは2人だが、公開するほとんどすべての記事(1日あたり平均40本)にSEOチェックをかけ、大きな、あるいは掲載中の記事にはしっかり関与して、ヘッドラインに工夫をしたり「まとめたり」する。
「こうした取り組みのおかげで、我々は検索、特に例のオーガニックカルーセルで上位をキープできる」と、米国版ガーディアンのオーディエンスエンゲージメントエディター、ロス・マギールス氏は言う。
「競争が激化している」
エバーグリーンコンテンツに関してパブリッシャーは、URLから日付を削除することで検索結果で上位に表示されるようにしている(あるいは、議論を呼ぶやり方だが、記事を新しいもののように見せかける手法もある)。ニューヨーク・マガジンでは、コンテンツマネジメントシステム(CMS)内で日付のないURLを作成し、毎年人気を集める特集「ベスト・オブ・ニューヨーク(Best of New York)」のような特定の記事に利用している。ただし、記事そのものにはちゃんと日付を残してある。
何が効果を発揮するか、検索の方が可視性が高いとパブリッシャーが考えているとしても、必ずしも検索をターゲットにした施策の方がやりやすいということではない。パブリッシャー業界を取り巻く環境は、「ハフィントン・ポスト(The Huffinton Post)」がスーパーボウルのトリックに磨きをかけていた頃とは違う。ほかのパブリッシャーたちが追いついてきている。また、パブリッシャーは単に、あらゆる手を使って規模の拡大を追い求めているのではなく、一瞬のトラフィック増加をもたらすだけの作戦はもはや、パブリッシャーの事業目的に合わなくなっている。
「ハフィントン・ポストも、かつてのやり方では検索で優位に立てなくなっていて、競争が激化している」と、ガーディアンのマギールス氏は言う。
おまけに、Googleは態度を厳格化している。ロデールのビューラー氏は、「Googleは、抜け穴の利用は許さないという姿勢を見せているので、それを続けても意味はない。賢いパブリッシャーなら、抜け穴を使う方法に多くの労力をかけない」と語った。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Integrated Change(Creative Commons)