記事のポイント 今年5月にFacebookが行ったアルゴリズムの変更はパブリッシャーサイトへの参照トラフィックを大幅に減少させた。パブリッシャー間での反応はさまざまだが、トラフィックの回復がいつになるか、そもそも回復する […]
- 今年5月にFacebookが行ったアルゴリズムの変更はパブリッシャーサイトへの参照トラフィックを大幅に減少させた。パブリッシャー間での反応はさまざまだが、トラフィックの回復がいつになるか、そもそも回復するのか疑問視する声が多い。
- 2022年8月から2023年8月にかけて、Facebookからの世界の約30の主要ニュースサイトへの参照トラフィックは62%減少。トラフィックの大幅な減少にもかかわらず、パブリッシャー各社はFacebookを主要なトラフィックソースとして依然として重視している。
- 一部のパブリッシャーは、Facebookや他の主要なソーシャルメディアプラットフォームに依存しない戦略の多様化を模索している。非Facebookのプラットフォームとの関係構築を強調する意見も出ている。
Facebookが5月に行ったアルゴリズムの変更は、パブリッシャーサイトへの参照トラフィックの激減をもたらした。パブリッシャーはいまだにその影響下にある。
米DIGIDAYの取材に対し、4人のパブリッシャー幹部(いずれもメタ[Meta]との関係に配慮し匿名を希望)は、メタが5月にFacebookのアルゴリズムに手を加えた際に意図せず導入された「バグ」に言及した。幹部らによれば、メタはこの問題を認識しており、数カ月以内に参照トラフィックは通常に戻る見込みであると、パブリッシャーに通達したという。
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そもそも回復する見込みはあるのか?
しかし4カ月近く経った今も、パブリッシャーはトラフィックの回復がいつになるのか、そもそも回復する日が来るのか、確信をもてずにいる。
「我々は6月末、Facebookの新しいページ体験が導入されたあと、このアップデートによって生じたバグのために、アルゴリズムがリンクを含む投稿をページの閲覧者に適切に提示しなくなったことに気づいた」と、あるパブリッシャー幹部は米DIGIDAYの取材に対して述べた。「現在バグの修正が行われているものと理解しているが、我々は現在の状況や優先順位を把握できる状況にない」。
米DIGIDAYのインタビューに答えたパブリッシャー幹部は誰ひとりとして、メタから本件に関する進捗報告を受けておらず、参照トラフィックの回復がいつ頃になるかも聞かされていなかった。メタから本件に関するコメントは得られなかった。
プラットフォームからの参照トラフィックは右肩下がり
今回の事態は、もはやおなじみの問題だ。パブリッシャーはソーシャルメディアのアルゴリズム変更に長年振り回されてきた。また、FacebookやX(旧Twitter)などのプラットフォームからの参照トラフィックは右肩下がりであることが、ウェブトラフィックのモニタリングを行うデータ分析企業シミラーウェブ(Similarweb)が米DIGIDAYに提供した以下のグラフから読み取れる。
Facebookから主要ニュースサイトへの参照トラフィック(シミラーウェブ提供)
Facebookは昨年以降、パブリッシャーへの投資を削減している。パブリッシャー幹部は米DIGIDAYに対し、参照トラフィックの減少は、Facebookがユーザーをプラットフォームの外のパブリッシャーサイトへ誘導する機能の優先順位を下げた結果だろうと憶測をめぐらせた。
たとえば、バグとされる事象と同時期に、Facebookはパブリッシャーのニュース記事をアプリ上で迅速に読み込むインスタント記事機能を廃止している。さらに10月上旬には、Facebookのニュースパートナーシップ担当責任者であるキャンベル・ブラウン氏が同社を退社することを、アクシオス(Axios)が報じたばかりだ。
下降トレンド
シミラーウェブが米DIGIDAYに提供したデータによれば、2022年8月から2023年8月にかけて、Facebookから世界の約30の主要ニュースサイトへの参照トラフィックは62%減少した。
2023年8月に前年比でとりわけ顕著な参照トラフィックの減少を示したパブリッシャーサイトは以下の通りだ。
- サン(The Sun):84%減
- ビジネスインサイダー(Business Insider):80%減
- ガーディアン(The Guardian):79%減
- デイリー・メール(The Daily Mail):77%減
- ミラー(The Mirror):75%減
- バズフィード(BuzzFeed):72%減
- ニューヨーク・タイムズ(The New York Times):66%減
- CNN:66%減
- ヤフーニュース(Yahoo News):66%減
2000以上のパブリッシャーのデータベースを保有するソーシャルメディア管理企業のエコーボックス(Echobox)によれば、2022年9月から2023年9月までのあいだに、Facebookからの参照トラフィックは52%減少している。
米DIGIDAYのインタビューに答えた1人目のパブリッシャー幹部によれば、6月第2週のFacebookからの平均週間参照トラフィックは、前週比で91%減となった。これ以降も、9月のFacebookからの平均週間参照トラフィックは、5月にアルゴリズムが変更される前の平均と比較して約80%減だったという。
2人目のパブリッシャー幹部も、Facebookからの参照トラフィックが6月に「崖から落ちるように」激減したと語る。この媒体では、今年5月から6月にかけてFacebookからの参照トラフィックが56%減少した。Facebookからのトラフィックは、2020年には同媒体のサイトへのソーシャル参照トラフィックの79%を占めていたが、今年は59%にまで落ち込んだ。同幹部はFacebookからの参照トラフィックに関して、8月が今年「最悪から2番目」であり、「目も当てられない」と述べた。
一方、3人目のパブリッシャー幹部は楽観的な見通しを述べた。同媒体も今年前半にFacebookからの参照トラフィックの減少を経験したが、「垂直落下のような状態ではなかった」と、同幹部は言う。
「年間を通じたFacebookからの我々の媒体へのトラフィックは、前年比で大幅な減少にはならないだろう。変動は常にあるものだ(中略)どれだけのトラフィックを失ったかを定量化するのは難しい」と、同幹部は述べている。「同時期に、以前は我々のFacebookトラフィックの大部分を占めていたインスタント記事のトラフィックが失われ、すべてが参照トラフィックに統合されたこともあって、トラフィックの損失をすべてこのバグに起因するものかどうか判断できない」
パブリッシャーの対応は?
インタビューに答えたパブリッシャー幹部は全員、Facebookが依然として自社サイトに最もトラフィックを呼び込むソーシャルプラットフォームであると述べた。さまざまな変化を経験しつつも、彼らはFacebookを見限ってはいない。
1人目のパブリッシャー幹部は、Facebookからの平均週間参照トラフィックの80%減という直近の数字は、6月の91%減に比べれば改善していると述べ、「Facebookでのコンテンツアウトプットを倍増し、画像や動画などの非リンクベースコンテンツの割合を増やす」ことで、自社がこうした成果を達成したと語った。
同幹部はまた、アルゴリズム変更がFacebookのエンゲージメントに長期的な影響をもたらすことに懸念を示した。「最も忠実なフォロワーに、もはや我々のコンテンツが提示されておらず、それが3カ月以上も続いている。アルゴリズムが我々のコンテンツの優先順位を再び上げたところで、彼らが再びエンゲージしてくれるかどうかは予想できない」と、同幹部は言う。
楽観姿勢を示した3人目の幹部は、Facebookが依然としてソーシャルトラフィックの最大の供給源であることを理由に、「メタが言う通りにやっている」と述べた。
「彼らがネイティブ動画を望むので、我々は力を入れている。彼らはグラフィックや写真など、(ユーザーをプラットフォームの外に誘導せずに)Facebook上でのエンゲージメントや活動を保てるコンテンツを期待しており、我々はずっとこれらに力を入れてきたが、これまで以上に取り組んでいる」と、同幹部は言う。
XでもFacebookでもないプラットフォームと関係構築を
一方、2人目のパブリッシャー幹部は、ソーシャルメディアコンテンツ戦略を多様化させることが、いつになく重要になっている事実を強調する。
「いたずらに時を過ごして、Facebookが参照トラフィックの巨人だった、パンデミック以前の時代に戻ることを期待するわけにはいかない」と、同幹部は警鐘を鳴らす。
「XでもFacebookでもない、率直に言って、メタの傘下でもないプラットフォームとの関係構築のためにアセットと対応能力の多様化を検討している」と、同幹部は述べた。
[原文:Publishers reckon with declining Facebook referral traffic as the platform pulls away from news]
Sara Guaglione(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:分島翔平)