サブスク の海外展開、各国の「市場固有の問題」が壁

消費者収益の拡大を目指すパブリッシャーは、チャンスがあるならどこへでも進出して、そのチャンスをものにしようとするだろう。たとえ国外であったとしてもだ。だが、国外の市場には、自国にはない難しさがある。たとえば、有料購読が一般的でなかったり、税制が複雑だったりすることがある。また、その国で自社ブランドの認知度が高くない場合もあるだろう。

認知度のギャップ

米DIGIDAYの調査によれば、米国のパブリッシャーの38%が、国外進出を2018年の重要なビジネス課題として挙げていた。米国外の市場では、有料購読者の獲得も期待できる。しかし、米国外で自社ブランドの認知度が高くないパブリッシャーにとって、その道は険しい。

「米国のいくつかのパブリッシャーにとってはチャンスだが、すべてのパブリッシャーにとってそうだとはいえない」と、戦略コンサルタントを手がけるドイツのサイモン・クチャー&パートナース(Simon-Kucher & Partners)で、メディア業務担当パートナーを務めるリサ・イェーガー氏はいう。

一部のパブリッシャーは、この問題を解決するため、地元のメディア企業と提携している。こうした提携関係が、広告の売上拡大をもたらすのはよくあることだ。たとえば、ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)は、メキシコやサウジアラビアといった国々のメディア企業と提携している。そのおかげで、彼の国で広告収入を獲得し、オーディエンスにリーチし、マーケティング力を高めることができているのだ。

「一般的に、国外で成功したメディア企業は、質の高いコンテンツ、高いブランド価値、市場で双方に価値をもたらす協調的な提携関係、几帳面な仕事ができる能力といった要素を兼ね備えている」と、ブルームバーグメディアでデジタル担当グローバル責任者を務めるM・スコット・ヘイブンズ氏は語る。「世界的ではないブランドが進出しても、世界的な規模や認知度をもつブランドと同じ結果にはならない可能性がある」と、ヘイブンズ氏は付け加えた。

文化の違い

ニュースにお金を払うという考え方は、米国でも完全に受け入れられているとはいえない。欧州やほかの地域ではなおさらだ。ロイター・インスティテュート(Reuters Institute)の調査によれば、米国ではニュースにお金を払っている人の割合が16%だったが、オーストラリアでは13%、カナダでは8%、イギリスでは6%の人々しか、何らかの形でニュースにお金を払っていなかったという。

価格圧力

消費者がコンテンツに支払ってもよいと考える価格は、市場によって異なる。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)やウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)といったパブリッシャーは、月額99セントというお得な期間限定価格を提供することで、米国外の顧客ベースを拡大している。ただし、こうした特別価格は、ユーザー数の拡大には貢献するものの、通常価格への移行を困難にする。

イェーガー氏は、米国のパブリッシャーがお得な期間限定価格を提供することによって「築いている価格イメージ」を懸念する。「我々の調査では、非常に安い価格で新しく有料購読を始めた消費者は、その価格に惹かれて購読をはじめたにすぎないことが多い」とイェーガー氏は指摘した。

付加価値税

付加価値税は、欧州連合(EU)諸国でデジタルコンテンツやデジタルサービスを提供する企業が、あらゆる取引に対して徴収し、EUに支払うことを義務付けられている税金だ。その税率は市場によって異なる。EUは基準税率を17%に設定しているが、加盟国は独自に税率を引き上げることを認められており(例外的に税率を下げている国もある)、おおむね25%程度だ。

また、VATの会計上の処理もEUメンバー諸国によって異なっている。そのため、パブリッシャーにとっては、さらに複雑な問題が会計処理システムや受注処理システムにもたらされることになる。

決済手段

クレジットカードによるオンライン決済は、米国では一般的だが、ほかの国でもそうとは限らない。「欧州でもアジアでも、国によっては、個人によるクレジットカード決済がほかの支払い手段ほど一般的でないことがある。そのうえ、一般的な支払い手段も国によって大きく違うのだ」と、ワシントン・ポスト(The Washington Post)でマーケティング担当バイスプレジデントを務めるミキ・キング氏はいう。「さらに、地域によっては、ニュースの有料購読サービスというものが一般に認知されていない場合もある」とキング氏は指摘する。

ワシントン・ポストは、この1年間で国外の有料購読者数を4倍に増やした。現在は、東南アジアの一部の地域で、ペイパル(PayPal)に似た決済システムをテストしているところだ。また、さまざまな料金設定や有料購読プロモーションを実験的に展開しているという。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)