広告減収の穴を埋められない、パブリッシャーの追加収益:「特効薬はない」

いま、多くのパブリッシャーが「数」の問題に直面している。コマース、ライセンス、マイクロペイメント(少額決済)、イベントといった新しいビジネスの収益が「徐々に増えている」ものの、それを上回る勢いで広告収入が減っているのだ。原因は、GoogleとFacebookに広告予算を奪われていることにある。

「広告で起きている売り上げの減少を別の収益源が単独で補えるようにはならないだろう」と、以前コンデナスト(Condé Nast)で最高ビジネス責任者を務めていたジム・ノートン氏はいう。「特効薬はない。『広告収入が10%減ってもサブスクリプションで補うことができる』などということはできないのだ」。

このような状況が、従来のパブリッシャーにさらなる合併を促すことになるだろう。だが、オーディエンスと直接的な関係を構築して収益を得る方法を開拓し続けることが必要になったいま、新しい収益源をもつ重要性は今後も変わらないはずだ。

「我々は本質的にストーリーを伝える企業であり、データとディストリビューションを活用してオーディエンスを獲得している」というのは、ビジネスインサイダー(Business Insider)の最高収益責任者(CRO)、ピート・スパンデ氏だ。「そのため、自社の強みを活かしてマネタイズできる新規事業を模索している」。

収益多様化の成功例

パブリッシャーが収益源の多様化について口にしはじめたのは、何年も前のことだ。実際、一部のパブリッシャー(特にしばらく前から多様化に取り組んでいる企業)は成功を収めている。たとえば、総合出版社のメレディス(Meredith)は2016年、ライセンス商品で220億ドル(約2.3兆円)の収益を上げ、米国とカナダにおけるライセンス商品の売上高でウォルト・ディズニー・カンパニー(The Walt Disney Company)を上回る唯一の企業となった。

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、数年間にわたる取り組みの結果、2017年には消費者からの収益が最大の収益源となった。大きく貢献したのはデジタルニュースのサブスクリプションだったが、クロスワードパズルとレシピの有料購読サービスもかなりの成功を収めているため、同社は四半期決算報告でこれらのサービスの売上高を掲載するようになった。2017年には、クロスワードパズルとレシピを合わせた売上高が前年比で53%増加し、1400万ドル(約14億円)を超えたという。

ロイタージャーナリズム研究所(Reuters Institute for the Study of Journalism)の調査によると、平均的なパブリッシャーの収益源は現在6つあり、ブランデッドコンテンツ、サブスクリプション、イベント、メンバーシップ、アフィリエイトコマースは、彼らのビジネスにとって「重要」といえる存在になっているようだ。

デュオポリーの弊害

ただし、パブリッシャーがこのように事業を広げているのは、必要に迫られてのことだ。たしかに、米国のデジタル広告市場は順調に成長しており、インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)によると、2017年上半期の売上高は、前年同期比で22.6%の増加となる401億ドル(約4.2兆円)だった。しかし、この増えた収益のかなりの部分がGoogleとFacebookに渡っているのだ。世界の広告市場におけるデュオポリー状態はますます進んでおり、両社のシェアはこの4年間で2倍に増えている。ブルームバーグ(Bloomberg)によると、両社のシェアは2013年には10%超(456億ドル:約4.8兆円)だったが、2017年には22%を超えていた(1136億ドル:約12兆円)。

この好まざる力関係が、パブリッシャーをますます新しい取り組みに駆り立てている。アフィリエイトコマースツールを手がけるビグリンク(VigLink)のCEO、オリバー・ループ氏によると、「以前のパブリッシャーは、『収益の20%を確保できないのなら、あなたと話をする時間は取れない』という態度」だった。だがこの2年で、アフィリエイトに対するパブリッシャーの関心は高まり、「以前のような態度を取られることは、ほとんどなくなった」という。

だからといって、すぐに利益を得られそうな話なら何にでもパブリッシャーが飛びつくわけではない。「早い段階で数千万ドルから数億ドル(の収益源)になる見通しのないビジネスには、我々は関心がない」と、ビジネスインサイダーのスパンデ氏は語っている。

しかし、馴染みのないことに取り組むために鍛錬し、リソースを手に入れ、根気よく取り組みを続けることは難しい。「このような数百万ドル規模のビジネスは、将来的に有望であっても、数十億ドル規模のビジネスよりも多くの注意や支援を必要とするため、テレビ局のような会社にとってはかなり大変だ」と、スパンデ氏はいう。したがって、「多くの皿を同時に回せるような域に達する必要がある」というわけだ。

脱せない広告依存

パブリッシャーはたいてい、何か新しいビジネスをはじめたとしても、広告が主要なビジネスになっている状況から脱することができない。たとえばビグリンクのループ氏は、パブリッシャーのクライアントから、アフィリエイトコマースのコンバージョンに関するデータをビグリンクのデジタルマーケティングプラットフォームに統合し、広告用のオーディエンスセグメントを作ってほしいと依頼されることが増えているという。

また、このような新しいビジネスをはじめるには、マーケティングコストが必要だ。ハーストマガジンデジタルメディア(Hearst Magazines Digital Media)のプレジデントを務めるトロイ・ヤング氏は、ブランデッドコンテンツ、コマース、ライセンスの収益が、全体の3分の2を占めるようにしたいと考えている。だが、こうした新しいタイプのビジネスを宣伝するための広告スロットを獲得するのに、インベントリー(在庫)を誰かに売って得たお金を使わなければならないことを、最初から同僚にわかってもらうのが難しい場合があるという。しかも、インベントリーのほうがマージンが高いのだ。

「多くの人は、このような資産を無料で手に入れられると考えている」と、ヤング氏はいう。「そのため、社内で難しい交渉が必要になるのだ」

バランスを考える必要

もっぱら広告枠を売ることに集中してきた業界が、さまざまな異なるものを売るビジネスに転換するには時間がかかるだろう。だが、パブリッシャーはこの転換を成し遂げる必要がある。

「広告業界の形成を一変させてやろうなどと考えるのは無駄だ」と、ノートン氏はいう。「誰もが、これまでに代わる収益源の確保にまい進しなければならない。たとえ、収益が一時的に落ち込んだとしてもだ。あらゆるパブリッシャーやメディア企業が、このバランスを考える必要がある」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)