Googleがアドブロック版Chromeの公開に備えるなか、「ユーザーにとってもっとも邪魔になる広告」をすでに避けてきたパブリッシャーにとっては何の心配も無い。だが、マネタイズに苦しんできたパブリッシャーやサイトを修正するリソースに欠けているところは不安を抱えているようだ。
Googleがアドブロック版Chromeの公開に備えるなか、彼らの「アド・エクスペリエンス・レポート(Ad Experience Report)」においては、さまざまなWebサイトの広告に関する成績が確認できるようになっている。「Coalition for Better Ads(良い広告のための連合)」によって「ユーザーにとってもっとも邪魔になる広告」として特定された、広告のスクリーンショットやビデオがこのレポートでは見られる。
そうした広告にはポップアップや音声付の自動再生ビデオ、そして「コンテンツを表示するまであと何秒」といったタイプの「プレスティシャル広告(Prestitial Ads)」などが含まれる。このような広告をすでに避けてきたパブリッシャーにとっては何の心配も無いが(特に音声付で自動的に再生される広告ビデオからユーザーを守るべき、というGoogleのスタンスには説得力がある)、マネタイズに苦しんできたパブリッシャーやサイトを修正するリソースに欠けているところは不安を抱えているようだ。以下にて、その様子の一部を紹介する。
懸念されるポップアップ問題
ポップアップ広告は読者とコンテンツのあいだに入ってくるため、頻繁に非難される広告タイプのひとつとなっている。これまでGoogleがスクリーニングをしたサイトのなかではモバイルにおける違反の54%、デスクトップにおける違反の97%がポップアップとなっている。パブリッシャーのいくつかはニュースレター登録のポップアップもブロックされるのではないかという懸念を抱いている。そうなるとニュースレター登録の数を犠牲にしてポップアップ登録を排除するか、それともサイト全体の広告をGoogleにブロックされてしまうリスクを犯すかという2択となってしまう。読者と直接的なつながりを作りたいと思っているパブリッシャーにとって、このようなトレードオフは持ちたくないのは当然だろう。
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Googleによって違反を指摘されたサイトにはアメリカンメディア社(American Media Inc.)のメンズフィットネス(Men’s Fitness)やナショナル・エンクワイアラー(National Enquirer)が含まれている。アメリカンメディアの収益オペレーション部門バイスプレジデントであるポール・ライキンズ氏は、「では、どうしたら良いというのか? 我々は読者にニュースレター登録してもらう必要があるのだ」と語る。
「Coalition for Better Ads」の広報担当者は、この件も含めて、これまで受け取ったフィードバックを現在、吟味しているという。また、連合はインストリームビデオ広告やビデオ内広告(プレロールやミッドロール)を調査していない。そのため最初に発表されているガイダンスは、これらは扱っていないことになる。一方でGoogleはパブリッシャーのニュースレター登録やアンケート目的のポップアップは広告として見なされないので、ブロックされないはずだと言っている。しかし、ニュースレター登録ポップアップやアンケートポップアップでも、外部グループによって提供されている場合は、広告として認識される可能性はある。その場合は、この結果に対して、異議を唱える必要が出てくるだろう。
まだ詳細は決まっていない
Googleはまた、広告がサイトの3割以上を占めていないかをチェックする広告密度テストも行い、テストに失格したサイトも挙げている。カーゴ(Kargo)の広告プロダクトイノベーションのバイスプレジデントであるメリッサ・シムソン氏は、広告のなかにはデバイスによって、一般的なスマートフォンの表示よりも大きく表示されることを指摘している。こういったデバイスにおける違反は、影響を受けるユーザーの割合が小さくとも、Googleは罰するのかどうかは明確ではない。
こういったルールをどう施行するのかも懸念を生んでいる。どれだけの数の違反があれば、サイトが「失格」認定を受けてしまうのかは、Googleは具体的に述べてはいない。サイトは定期的にチェックされるとパブリッシャーたちは聞いているようだ。「プログラマティックを利用していると、ある程度のコントロールは得られるものの、ときに悪い広告がサイトに表示されてしまうことがある、それは良くない結果につながるかもしれない」と、中規模パブリッシャーのエグゼクティブは語ってくれた。Googleが悪質な広告を取り締まろうとしている事実は、まだ悪質な(彼らは「インパクトの大きい」というかもしれないが)広告を推し進めようとする広告バイヤーとの交渉において、パブリッシャーにとって有効な材料となるだろう。
「パブリッシャーがユーザーの体験にフォーカスしようとする際の説得材料が増えることになる」と、ポップシュガー(PopSugar)のプロダクトマーケティングと売上戦略のエグゼクティブバイスプレジデントであるクリス・ジョージ氏は言う。それでも、収入に苦しんでいる小規模なサイト運営者には、負担が大きくなる。そういうところには、サイト専任のGoogle担当者や特別なデザインや広告技術のリソースがない場合が多い。この点に関して、Googleはルール施行の詳細はまだ決定しておらず、パブリッシャーからのフィードバックを求めていると述べている。
Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)