最高の広告はサービスを提供する。想像してほしい。最高の旅先に関する記事を読み、そして、なんと、ページ上のホテルアプリで現地の宿を予約できるのだ。パブリッシャーは常に新たな収益源を求めている。そんな彼らのなかに、関連性のある記事へアプリのボタンを載せる者が増えている。
最高の広告はサービスを提供する。想像してほしい。最高の旅先に関する記事を読み、そして、なんと、ページ上のホテルアプリで現地の宿を予約できるのだ。パブリッシャーは常に新たな収益源を求めている。そんな彼らのなかに、関連性のある記事へアプリのボタンを載せる者が増えている。
たとえば、米旅行情報誌コンデナスト・トラベラー(Condé Nast Traveler)は、2016年10月よりモバイルコマース企業ボタン(Button)と提携し、月間ユーザー420万人の自社サイトにUber(ウーバー)とホテルズ・ドットコム(Hotels.com)にリンクするボタンを載せている。これはコンデナスト・トラベラーにとって初のアフィリエイトマーケティング・パートナーシップだが、つまるところ他社商品を宣伝することで手数料を得ることになるのだ。
このボタンはトラベラーのページやスライドショーのうち、ホテルや渡航先について書かれている箇所にのみ表示される。たとえば、「ニューヨークシティで最高の新規開業ホテル」という記事を読んで、あるホテル(例:エースホテル)に興味を持ったとする。そして、そのホテルをクリックするとホテルの住所、ウェブサイト、そしてUberとホテルズ・ドットコムのボタンが掲載されるページに移動する。
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利用者がUberもしくはホテルズ・ドットコムで購買手続きを行った時点でコンデナスト・トラベラーに売上額の一部が支払われる。さらにボタンをクリックしたもののアプリを所有しない利用者が、アプリをダウンロードした場合にも同パブリッシャーに報酬が支払われる。
CVR7%というケースも

ホテルのバーチカルに登場するUber、ホテルズ・ドットコムのボタン
コンデナスト・トラベラーのプロダクト担当ディレクターであるジーナ・リー氏は、ボタン設置による収益の大半はホテル予約によるもので、1日の総売上額が数千ドル単位になる日が全体の3分の1を占めると話す。
同氏によると、モバイルディスプレイ広告のクリックスルー率の平均は0.1%だが、ホテルズ・ドットコムのボタンを目にしたトラベラー読者のうち2%が実際にクリックしているのだそうだ。さらにeコマースのコンバージョン率は2〜3%であるが、ホテルズ・ドットコムのアプリでホテルのページに移動したトラベラー読者の7%が実際に宿泊予約を行っているという。
「いまのところ、ユーザーはこうしたボタンを使うことに対して警戒していないようだ」と、リー氏はいった。「当社はコンテンツファーストの組織なので、通常は旅行関連取引を促進することはない。我々は取引がよりオーガニックであることを希望している」。
「あれば、助かる」ビジネス
月間ビジター数1000万人以上を誇る女性向けパブリッシャーのピュアワオ(PureWow)は、2016年9月からサイト内の旅行コンテンツにレストラン予約サイトのオープンテーブル(Open Table)とホテルズ・ドットコムのボタンを設置している。同パブリッシャーがアフィリエイトマーケティングに利用しているのが、自動アフィリエイトサービスのスキムリンクス(Skimlinks)とバムエックス(Bam-X)だ。
ハフィントンポストは2016年7月、旅行記事にホテルズ・ドットコムを、そしてエンターテイメントコンテンツにはジェット・ドットコム(Jet.com)を加えた。ハフィントンポストのビジネスデベロップメント部門を率いるマーク・シルバースタイン氏はこれらのボタンと同サイトはスムーズに融和しており、ページのロード時間に悪影響はないと話す。
これらのパートナーシップに関して、パブリッシャー各社は売上額の詳細を明らかにはしなかったが、漸増していると考えてよいだろう。ピュアワオの戦略的パートナーシップマネジャーのアレキサンドラ・マイルズ氏は、具体的な数字には言及せず、クリックボタンビジネスについては「あれば、助かる」と、対外向けに話した。
大切なのはユーザー体験
パブリッシャーには「あれば、助かる」漸進的な好機はいくらでもある。「ジャバスクリプト1行あれば」と、よく小規模な新規収入源についての話をもちかけられるからだ。しかし、こういった収入機会はそれほど足しにならないことが多い。特にパブリッシャーは、かつてディスプレイ広告の主要収入源となっていた、コモディティ化市場で取引をしているからだ。
また、パブリッシャーは粒度の高い取引データを得ることができない。たとえば、あるパブリッシャーがレストラン予約サイトのオープンテーブル(OpenTable)のボタンを設置し、それを通じて利用者が予約を取ったとする。パブリッシャーは利用者がアクションを起こしたことはわかるが、どのレストランを予約したかまではわからない。
「現段階では、そこまでの粒度に手を出せない」とシルバースタイン氏はいう。「もちろん、データは多いほど良い。もしその情報が手に入れば、高級レストランとのパートナーシップを検討できるかもしれないが、いまはそこに重きを置いているわけではない。我々の読者が体験を通して価値を得られるようにするほうが重要だ」。
ユーザーの質は保証付き
リサーチ会社フォレスター(Forrester)の予測によると、アメリカのアフィリエイトマーケティング規模は、年間成長率10%で推移し、2020年には68億ドル(約7800億円)を超える。
ボタンの共同創始者兼CEOのマイケル・ジャコーニ氏は、同社と提携するパブリッシャーは現在50社程度で、さらに増えていると話す。同社にとって旅行業界とアフィリエイト・パブリッシャーは、2大フォーカスになるだろう。
ジャコーニ氏は「どのリテーラーにとっても、目的はアプリユーザー数を増やすことだ」という。「企業がアプリユーザーに出会うのにはGoogleとFacebookの2つがもっとも確実性が高い。しかし実際は、Facebookよりも、そう、コンデナスト・トラベラーにいる旅行者のほうがよほど購買欲は高い。リテーラーはそのコンバージョンを活用すべきだ」。