自動再生動画(オートプレイ・ビデオ)は押しつけがましいと議論の的になっているが、それでいて、Facebookの影響もあり絶大な人気がある。
Facebookと、その傘下にあるインスタグラムが採用したおかげで、消音モードであるとはいえ、自動的に再生する動画が新たな標準になっている。
「ブルームバーグ」や「CNN」、「ESPN」といったメディアでは、この仕組みの実装を急いできた。なぜなら、視聴回数を伸ばしやすく、いま一番収益を上げやすいというメリットがあるからだ。しかし、一部のエージェンシーは、こうした動きは急進的すぎるのではないかと考えている。
自動再生動画(オートプレイ・ビデオ)は押しつけがましいと議論の的になっているが、それでいて、Facebookの影響もあり絶大な人気がある。
Facebookと、その傘下にあるインスタグラムが採用したおかげで、消音モードであるとはいえ、自動的に再生する動画が新たな標準になっている。「ブルームバーグ」や「CNN」、「ESPN」といったメディアでは、この仕組みの実装を急いできた。なぜなら、視聴回数を伸ばしやすく、いま一番収益を上げやすいというメリットがあるからだ。
しかし、一部のエージェンシーは、こうした動きは急進的すぎるのではないかと考えている。
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「消費者の注意を散漫にしている」
自動再生動画を牽引してきたFacebookに関して、メディアプランニング・バイイング企業のホライゾン・メディア(Horizon Media)でシニアバイスプレジデント兼デジタル担当マネージングディレクターを務めるシャーロット・コクラン氏は、次のように述べる。
「消費者がさまざまなものをチェックする心構えであれば、自動再生は意味を成す。だが、消費者の注意を散漫にしたり、消費者が求めるコンテンツの閲覧を邪魔しているのであれば意味を成さない」。
この発言では何が「消費者の注意を散漫にしている」のかが、明確にされていない。多くのパブリッシャーは、ユーザーが記事ページを訪問したときに、動画を自動再生させているが、そこでユーザーが動画を観ようという状態なのかどうかは不明だ。
「大量の動画を無差別に流してない」
ホームページ上の記事リンクに画像やテキストを添えることで、記事に動画が含まれていることを明らかにし、この戦略をうまく実践しているパブリッシャーも存在する。だが、ユーザーがFacebookやTwitterを経由して記事にたどり着く場合は、事情が異なる。リンク先に動画が含まれているかどうか、常に判別できるわけではないからだ。
おまけに、「ブルームバーグ」や「CNN」、「ESPN」の場合、こうした動画の多くにはプレロール広告も追加されている。ページがロードされるとすぐに、音声付きで動画の再生が始まるのだ。
2014年春に動画を自動再生に移行した「CNN」でコミュニケーション担当バイスプレジデントを務めるマット・ドーニック氏は、「大量の動画を無差別に視聴させてはいない。そんな考えはない。我々が求めているのは反発ではなくエンゲージメントだ。すばらしい動画を制作すればユーザーが視聴したいと思うと、確信している」と語る。
自動再生が数字に悪影響を及ぼしていないのは確かだ。コムスコア(comScore)によると、「CNN」は、2015年におけるデスクトップPCでの動画視聴時間では、ライバルの「Yahoo News」や「FoxNews.com」「MSN News」「BuzzFeed」を凌いでいる。
2015年の動画視聴時間(米国、デスクトップ)分(単位:100万)
「埋め込まれるコンテンツ次第だ」
ジフ・デイビス(Ziff Davis)傘下のゲームサイト「IGN」は、音声なしの自動再生動画を広告に利用している。ユーザーがホームページ上にある消音設定の動画をクリックする可能性は、静止画の広告と比べて20%高いという。
「IGN」のゼネラル・マネージャー、ピア・シュナイダー氏は次のように述べている。「思いもよらないときに(音声付きの)コンテンツを自動再生するサイトはたくさんある。そういうのがうまくいくのは、しばらくの間だけだ。そのような動きはアドブロックにつながる」。
しかし、ユーザーによるクリックがきっかけである限り、動画が音声付きで再生されても構わない、と語るエージェンシー幹部もいる。
「動画が埋め込まれるコンテンツ次第だ。ユーザーがクリックしていないのに音声付きの動画が自動再生されるのは、たしかに嫌な体験だと思う。だが、記事リンクをクリックして、記事の一部が自動再生動画であるなら話は変わってくる」と、デジタスLBi(DigitasLBi)のバイスプレジデント兼メディア担当グループディレクター、マイク・ハーバーマン氏は語る。
「完全視聴単価が成功の目安になる」
一方、自動再生によって、直接購入を行う広告主が、デジタルパブリッシャーと交渉する方法も変化しはじめてきた。たとえば、買い手である広告主は、パブリッシャーに対して、3~5秒間ではなく15秒間や30秒間の視聴、および最後まで観る完全視聴への保証を期待するようになってきている。
ハーバーマン氏は、広告主が従来のCPMより、完全視聴単価に注目しているという。「15秒間または30秒間のプレロール広告を視聴させるのに、どれくらいの金を費やしただろうか? これは、視聴1000回あたりの費用にだけ注目するよりも、キャンペーン成功の貴重な目安になる」とハーバーマン氏は語る。
メディア購入会社スウェルシャーク(SwellShark)のCEO、ニック・パパス氏によると、問題は、自動再生システムを導入した一流パブリッシャーのうち、そうした完全視聴単価での取引に現在意欲的なパブリッシャーが、4分の1にとどまることだ。
「再生回数だけでは十分ではない」
測定指標は、今後も主要な問題となる。パブリッシャーやプラットフォームによって、動画視聴に対する請求基準が異なるとなればなおさらだ。測定が十分でないならば、買い手である広告主は、自動再生という戦略に不安を抱き続けるだろう。
先述のホライゾン・メディアのコクラン氏は、「動画の再生回数にばかり注目するのではもはや十分ではない。多くの人々が(自動再生により)動画を再生しているのだから。我々は誰と取引するのであれ、実際に広告を視聴したユーザーを示す、もっと深い指標を提供してほしいという話をするようにしている」と述べた。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Thinkstock / Getty Images