成果を示す主要なバロメータとして、ページビューよりも有料会員の登録数を採用するニュース編集部が増えている。要するに、記者に有料登録に値する記事を書かせるために、何かこれまでとは違う方法を考えようということだ。多くのパブリッシャーにとって、その答えは単純に「成功事例を記者に周知させること」である。
成果を示す主要なバロメータとして、ページビューよりも有料会員の登録数を採用するニュース編集部が増えている。
要するに、記者に有料登録に値する記事を書かせるために、何かこれまでとは違う方法を考えようということだ。たとえば、ビジネスインサイダー(Business Insider)のように、購読者獲得の数値目標を課して、これを達成した記者にボーナスを出すところもある。さらに、ニューズコープオーストラリア(News Corp Australia)のようにノルマを設定する編集部も見られるが、ニューズコープのケースでは、労働組合の抵抗に遭った。多くのパブリッシャーにとって、その答えは単純に「成功事例を記者に周知させること」である。
有料でも求められる記事
この2年間、シアトル・タイムズ(The Seattle Times)は、どういう記事が有料登録につながるのか、記者たちに示してきた。また、社内に小さなグループを作り、記者に限らず、読者、製品、ビジネスインテリジェンスを担当する部署の同僚たちを招いて、読ませるコンテンツの作り方、それを量産する方法について議論している。
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タイムズは、購読者獲得に果たす記事の役割を書き手に意識させるため、いくつかの指標を設定し、読了からコンバージョンに至る日数で記事を点数評価している。たとえば、読者がある記事を読んでから30日以内に会員登録を行った場合、その記事は「登録に影響した」と見なされる。ある記事が読まれ、1週間以内に異なる5本の記事からコンバージョンに至った場合、その記事は「登録に大いに影響した」と見なされる。さらに、読者がある記事を読み、そのセッション中に会員登録を行った場合は「直接影響した」と見なされる。記者に課される年間目標は、購読者獲得に貢献する記事を15%増やすことだ。
「ページビューを何とかするのは簡単だ」と、シアトル・タイムズの編集長、レイ・リヴェラ氏は言う。「読者が有料でも読みたがる記事は何かと言えば、それはどのみち、ジャーナリストが書きたがる類いの記事なのだ。重要な調査報道、特集記事、そして政治向きの話題。どれもジャーナリストの使命に直接関わる記事だ」。
注力すべきは既存購読者
同じ編集部でも部署ごとに異なる指標で評価を行うメディアもある。たとえば、ビジネスインサイダーのほとんどの記者は月間のページビューまたはユニークユーザー数をもとに評価を受ける。しかし、ふたりの事情通によると、主にビジネスインサイダープライム(BI Prime)で記事を書く記者は、有料会員登録の数値目標を課されているという。
BIプライムの記者はまた、コンバージョンにつながる多様な記事ネタを追うよう奨励される(ビジネスインサイダーは記者の評価基準についてのコメントを控えている)。BIプライムでペイウォールを設定する記事を選ぶのは、ビジネスインサイダーの編集長だ。
「業界はページビュー、クリック、有料会員登録などの成果指標に夢中になっている。しかしこのような指標の多くは管理不能だ」とFTIコンサルティングのマネジングディレクター、ピート・ドゥセット氏は言う。「真に注力すべきは、既存の購読者のエンゲージメントだ」。
労組との兼ね合いにひと苦労
ノルマは労組との関連で扱いの難しい問題だ。9月初旬、ニューズコープはオーストラリアの新聞購読者に関して記者にノルマを課そうとしたが、編集部の従業員の利益を代表する労働組合MEAA(Media Entertainment & Arts Alliance)に到底容認できないと突っぱねられた。タイムズでは、15%アップの努力目標を課しているが、こちらの編集部にも労働組合がある。リヴィエラ氏によれば、「未達でもペナルティはない」という。
「我々の組合員をこのような評価基準で評価してほしくない」と、ニュースギルド(News Guild)の組合長、ナスタラン・モヒート氏は言う。「評価するなら仕事の質で評価してもらいたい」。
Max Willens(原文 / 訳:英じゅんこ)