AppleはSafariにインテリジェント・トラッキング・プリベンション(ITP)2.3を追加し、サードパーティCookieの代わりに「リンクデコレーション」を用いている企業をけん制した。サードパーティCookieによるドメイン間トラッキングを排除しようと抜け穴をふさぐため、新たにITP 2.3を追加したのだ。
AppleはSafariにインテリジェント・トラッキング・プリベンション(ITP)2.3を追加し、サードパーティCookieの代わりに「リンクデコレーション」を用いている企業をけん制した。AppleはサードパーティCookieによるドメイン間トラッキングを排除しようと取り組んでおり、企業が見つけ出した抜け穴をふさぐため、新たにITP 2.3を追加した。リンクデコレーションとは、URLに追加したコードで情報をやりとりする手法だ。
リンクデコレーションは長年、参照元の追跡に使用されてきた。Appleが懸念しているのは、Appleのプライバシー対策を回避する目的でリンクデコレーションが使われることだ。
今回のアップデートがターゲットにしているのは「継続的な悪用」であり、過去のアップデートの回避策としてリンクデコレーションを用い、人々の追跡を続けている企業を取り締まろうとしている。具体的には、通常、有効期限なしで、サイトがブラウザにデータを直接保存できるWebストレージであるローカルストレージのようなCookieベースでないストレージデータに7日という期限を設け、リンクデコレーションの使用を妨害しようとしている。
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TIメディア(TI Media)のデータ、インサイト責任者アドリアナ・テイラー氏は「Safariのトラフィックが多いウェブサイトほど、今回の変更による影響が大きい」と話す。「周知のとおり、CPMに関しては、Safariのインベントリー(在庫)はChromeに比べて(約30%)価値が低い。もっとも大きな影響を受けるのは、パフォーマンスを報告するエージェンシーと広告主だろう」。
データプライバシー第一
AppleがITPをアップデートするたび、Safariのオーディエンスを特定するためのデータが減り、パブリッシャーのCPMが低下している。サードパーティCookieに代わる手法を提供するデータプラットフォーム、パーミューティブ(Permutive)の共同創業者ジョー・ルート氏は、Appleがリンクデコレーションの取り締まりを開始して以降、分析ツールが本来の効果を発揮してくれないというパブリッシャーからの指摘が相次いでいると話す。パーミューティブは以前、ITPの影響はまったくないと述べていた。
「Facebook IDのリサイクルが早まっているのかもしれない。7日経つと、そうでないユーザーまで新規ユーザーとしてカウントされる」と、ルート氏は話す。現在のところ、パブリッシャーは実害を被っているというより、迷惑に感じているようだ。しかし、広告のエコシステムがデータプライバシー第一の方向へと進んでいることは間違いない。
長期的には、ファーストパーティデータを利用しているパブリッシャーにとっては、CPM価格に対する支配権を取り戻し、広告主にデータに基づく購入を促すチャンスだと、ルート氏は言い添えている。
パブリッシャーに有利
「ITPが導入された環境でもっとも繁栄できるのはパブリッシャーだ。ITPのおかげで、彼らは支配権を取り戻すことができる。Appleはこのアップデートによって、パブリッシャーをウェブの浄化に協力させようとしている」と、ルート氏はいう。ますます制約が増えているAppleのプライバシー条項に抵触しないよう、パブリッシャーやマーケターがリンクデコレーションを排除する可能性もある。もしそうなっても、パブリッシャーへの影響は小さい。
サブスクリプションサービスやログイン認証を導入しているパブリッシャーは特に、ファーストパーティデータ戦略を柔軟に変化させることができる。ただし、後者の場合、ライバルとの連携、技術的な問題の設定、バイヤーからの十分な関心の生成といった逆風に直面したとき、ログイン連合を拡大するのが難しくなる。
Appleの変更に素早く対応できないベンダーは苦労を強いられるだろう。サードパーティCookieに代わる手法を提供する企業は増え続けており、いたちごっこも白熱している。しかし、ITP 2.3はFacebookもターゲットにしているようだ。Facebookはリンクデコレーションを使用しており、人々をしつこく追い回すドメインに分類されている可能性が高い。
「今回はFacebookを狙っているように見える」とルート氏は述べ、Facebookは直近の決算報告で、Appleのオーディエンスをターゲットにするのがどんどん難しくなっていることに言及していたと補足した。「下流への影響がFacebookにまで及ぶ可能性は十分ある」
今回は痛みが少なめ
Safariからパブリッシャーへのトラフィック全体から見れば、ITP 2.3の影響を受けるオーディエンスは30~40%にとどまる見込みだ。しかし、Appleによるドメイン間トラッキングの排除はまだ終わっていない。GoogleのChromeもサードパーティCookieの取り締まりに積極的で、さらに取り締まりを強化するというのが観測筋の見方だ。
現在のところ、ITP 2.3による痛みは過去のアップデートほど大きくない。テイラー氏は「ファーストパーティCookieの期限が1日で切れることに比べれば、(ローカルストレージを用いる)データの期限が7日で切れる方がはるかにいい」と述べている。「ただし、この期限が変更される可能性は排除できない。今後のアップデートで、Cookieベースでないストレージの期限が1日に短縮されることもあり得る」
Lucinda Southern (原文 / 訳:ガリレオ)