「 IGTV 」の収益化、見極めつつあるパブリッシャーたち

インスタグラム(Instagram)のIGTVは、着実な成長を重ねているとはいえ、コンテンツを配信するパブリッシャーの多くにとって目を見張るほどの成長ではない。それでも彼らに、IGTVをブランデッドコンテンツの配信チャンネルとして利用する気を起こさせるには十分なレベルのようだ。

ここ数カ月のあいだに、バイスメディア(Vice Media)やESPN、それにミームプラットフォーム大手のナインギャグ(9GAG)を手がけるローリング・エッグ・メディア(Rolling Egg Media)など、複数のパブリッシャーが、ブランデッドコンテンツを配信する場としてIGTVを利用しはじめた。コンテンツの大半は、Snapchat(スナップチャット)やFacebookなど、ほかのプラットフォームでも何らかの形で配信されているものだ。プラットフォーム間で動画プロダクトの均一化が進んでいることに加え、インスタグラムにおけるIGTV動画の寿命の長さに目をつけた動きとなっている。こうした傾向は、パブリッシャーがIGTVに楽観的な目を向ける根拠にもつながる。だが、広告ソリューションをもたない同チャネルに対しては、積極的にリソースを割きたがらないパブリッシャーが多いのが現状だ。

「我々はIGTVに初期から参入してきた」と、グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)の戦略インサイトおよび成長担当シニアバイスプレジデント、ノア・キール氏は話す。「最初の6カ月間は、どうすればうまくいくかを学習し、実験し、理解する時間だった。そして我々は、おおむね軌道に乗ったといえそうだ」。

前のめりなメレディス

いまから1年3カ月前、インスタグラムが長尺動画サービスとしてローンチしたIGTVに対して、パブリッシャーはやや懐疑的な目を向けてきた。理由は、広告プロダクトがない点や、特に専用アプリにおけるIGTVの成長が緩やかなこと。アップトピア(Apptopia)のデータによると、IGTVの月間アクティブユーザー数はこの1年間、130万人でほぼ横ばいだ。一方、親会社のFacebookによると、インスタグラムの月間アクティブユーザー数は10億人を超える。

また、番組に対する短期間の独占配信権とひきかえに、インスタグラムから直接収益を得ているパブリッシャーもいるが、大半のパブリッシャーは、IGTVで配信するコンテンツをマネタイズする手段をほぼもたない。

そんななか、スポンサーシップとプロダクトプレイスメントを狙って参入するパブリッシャーもいる。2019年に入って、メレディス(Meredith)はIGTV向けに20本の番組をローンチするとの公言を実行した。これらの番組は、「トラベル+レジャー(Travel+Leisure)」「リアルシンプル(Real Simple)」「ハローギグルズ(HelloGiggles)」など、計13タイトルのアカウントを通じて配信されており、スポンサーとして「10社ほど」のブランドを獲得していると、メレディスの動画担当シニアバイスプレジデント、アンドリュー・スナイダー氏は述べている。

すべてがIGTVの独占コンテンツではないが――メレディスは一部コンテンツをほかのプラットフォームでも配信している――結果は上々で、女性をメインターゲットとする同パブリッシャーは、今後予定するプロジェクトのスポンサーとして、さらに多くのブランドと契約を交わすことに成功したという。

「順調なペースで広告主の関心を集めることができ、喜ばしく思っている」と、スナイダー氏は述べている。「一部には、オーディエンスの拡大を見てから(契約を交わすこと)にしたいというブランドもあった。我々は目下、いろいろな取り組みを進めているところだ」。

効率的なグループ・ナイン

しかし、この6カ月のあいだに、複数のパブリッシャーが、多くのリソースを投じて独占コンテンツを制作しなくとも、IGTVでオーディエンスを増やす方法を見つけたと感じるようになっている。たとえばグループ・ナインは、複数のプラットフォームにまたがって動画を配信するという同社の最近の戦略に沿って、いまもIGTVで配信するコンテンツのほとんどが、ほかのチャンネル向けに制作されたものだ。

加えて、IGTVは依然、同社のインスタグラム配信のわずかな割合を占めるにすぎない。過去6カ月間に、傘下のNowThis(ナウディス)がIGTVで公開した動画は68本だったのに対し、フィードで配信された動画は870本にのぼる(データはクラウドタングル[CrowdTangle])。それでもグループ・ナインは目下、2019年の第4四半期にローンチ予定のブランデッドコンテンツのキャンペーンを多数準備しており、そのコンテンツはほかのいくつかのプラットフォームとともに、IGTVでも配信される予定だ。動画に注力する同パブリッシャーはその理由として、IGTVにおけるオーディエンスの反応を見極めたからだと述べている。

IGTVで流すには長尺の動画が必要になるため、ほとんどのパブリッシャーは、フィード専用もしくはストーリー(Stories)向けに配信する動画と同じ量のコンテンツをIGTV向けに用意することはできない。しかし、IGTVのコンテンツは、ユーザーのフィード、アプリの発見(Explore)タブ、アカウントのプロフィールページなど、インスタグラム上のさまざまな場所に配置される。そのためIGTVのコンテンツは寿命が長く、ときには視聴数でフィード配信動画を上回ることもある。前出のキール氏によると、グループ・ナインの各タイトルがIGTV向けに公開できる動画は週1本と少ないが、それでも視聴数の伸びはトップクラスだという。

バイスメディアとCNNの判断

なかには、パブリッシャーのIGTV動画の視聴数が、通常のフィードで配信している動画の視聴数を超えるケースも出はじめている。2019年5月のバイスメディアのIGTV動画は、フィード配信動画の2倍近い視聴数を集め、それ以降、IGTV動画の視聴数がフィード配信動画を上回る月が続いている(データはクラウドタングル)。しかもその視聴数を、フィード向けの半分に満たない本数の動画で稼いでいるのだ(同じくクラウドタングルによると、IGTV動画が64本に対して、フィード配信動画は132本)。

加えて、動画がIGTV独占コンテンツである必要もない。CNNは、もともとFacebook Watch(ウォッチ)向けに、明るいニュースを届けるシリーズ「ザ・グッド・スタッフ(The Good Stuff)」を制作していたが、それがIGTVで好評を博したのを受けて、Watch向けの番組をフォーマットしなおし、同様のIGTV向け動画を制作することに力を入れはじめた。CNNがIGTV動画で獲得した3500万回の視聴数のうち、2100万回は過去3カ月間に稼いだものだ(データはクラウドタングル)。

つまりパブリッシャーは、IGTVに直接広告が入るのがいつになるのか依然はっきりわからないままの一方で、莫大な費用をかけずにIGTVでオーディエンスを増やす方法については、十分に学習したというわけだ。

「あれこれ試してみる必要はないと思う」と、CNNの新興メディア担当エグゼクティブプロデューサー、アシュリー・コディアンニ氏は述べている。「我々はすでにインスタグラムで驚くほど多くのオーディエンスをエンゲージしている。そこで我々が行うことはすべて明確な意図をもっている」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)