高速で記事を読み込める、Facebookのインスタント記事を利用するメディアのうち、投稿記事数を減らす企業が出てきた。これはソーシャルネットワーク調査会社のニュースホイップ(NewsWhip)の最新調査に基づいて、米DIGIDAYが確認した内容だ。
高速で記事を読み込める、Facebookのインスタント記事を利用するメディアのうち、投稿記事数を減らす企業が出てきた。これはソーシャルネットワーク調査会社のニュースホイップ(NewsWhip)の最新調査に基づいて、米DIGIDAYが確認した内容だ。そのなかには初期段階で、インスタント記事を利用してきた企業も含まれている。
ニュースホイップは9月16日から20日までの5日間、パブリッシャー数社のインスタント記事の投稿を調査。この短期間で一般論を語るのは容易ではないが、次のようなことがわかった。
まず、大手パブリッシャーのハフィントンポスト(The Huffington Post)やミック(Mic)、そしてワシントンポスト(Washington Post)などは、基本的にいまだインスタント記事のフォーマットを利用している。その一方、同じく大手で初期から利用していたBBCニュースや米ナショナルジオグラフィック(National Geographic)、そしてウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)は、このところまったく利用していなかったのだ。
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米民放テレビ局NBCニュースや経済メディアのビジネスインサイダー(Business Insider)も「同様にインスタント記事制作から手を引いている」。この件についてFacebookにコメントを求めているが、いまのところ回答は得られていない。
ローンチ当初から賛否両論
インスタント記事については、1年ほど前、ローンチ当初から賛否両論存在した。大部分のパブリッシャーにとっては、Facebookにリンクを貼り、自社サイトに読者を呼び込むよりは、インスタント記事を利用したほうが、記事の読み込みが速く、エンゲージメントも通常のリンク投稿よりずっと高いことが多い。しかし、インスタント記事はFacebookのプラットフォーム上にあるため、パブリッシャーが記事を収益化することができず、また取得できる読者データも乏しくなってしまうのだ。
インスタント記事ローンチ以降、Facebookはニュースフィード上でテキストの記事に加えて動画掲載を積極的に推し進めている。テキストのみの記事より高いエンゲージメントを得られることから、パブリッシャーもそれに応えて、多くの動画を投稿してきた。
手を引きつつある企業たち
インスタント記事のローンチ時から参加していた9社の1つ、ナショナルジオグラフィックもインスタント記事掲載数が減少していることを認めている。同パブリッシャーの1日あたりのインスタント記事投稿数は通常1件か2件だと、ナショナルジオグラフィックパートナーズのCEO、デクラン・ムーア氏は明かした。
NBCニュースもまた手を引きつつあることを認めた。同パブリッシャーによると、インスタント記事利用開始当初はFacebookプラットフォーム上でどういったものが一番効果的にはたらくかを見極めるため、トップコンテンツの「大体ほとんどの記事」を投稿していたという。そしてNBCニュースは、速報があるときにはユーザーはクリックスルーしてサイトにやってくることが分かったので、インスタント記事ではそういったものを減らし、特集記事タイプの掲載を増やしてきたと、同社広報担当者は話す。
完全に停止した企業も
ニュースホイップの調査対象外だった米新聞社のボストングローブ(The Boston Globe)は、簡単なテストを行ってから、インスタント記事の掲載を停止した。2、3週間に渡ってグローブはすべての記事をインスタント記事にしてみたが、エンゲージメントの大幅な増加は見られなかったと、同社ソーシャルメディアディレクターのマット・カロリアンは話す。
5月の時点でビジネスインサイダーはFacebookからのリンクの10%をインスタント記事という形で投稿していた。しかし、先日投稿された100記事のうち、右上部の稲妻マークが目印のインスタント記事は、2記事だけだ。同社広報担当は、トップダウンの戦略変更はないが、オーディエンス数増加がもたらす、そのほかの変化を無視することはできないとしている。
減少傾向の理由を憶測
ほかのパブリッシャーは同フォーマットの使い方について、分析を進めており、それが撤退の一因となっている可能性もある。ニュースホイップによると調査期間内、ニューヨークタイムズ(The New York Times)が発行したインスタント記事は22記事。同社がFacebookに投稿したものの10%だ。その内容は速報ではなく、記事の賞味期限が長い、長文の解説記事や分析結果などだったという。
調査方法によって、減少傾向という結果になった部分もある。調査期間中にニュースホイップが分析したところ、米オピニオン紙アトランティック(The Atlantic)が投稿するFacebookのリンク記事のうち10%がインスタント記事だ。かつてリンク記事の85%がインスタント記事だったことを考えれば大幅な減少と見える。
しかし、いまだにアトランティックは可能な限り、新しい記事を同フォーマットで発行しているという。ただし、調査機関の5日間は週末にあたっていたため、インスタント記事にならないアーカイブや動画の再掲載が多かったと同社の担当者は語った。