Google 新ツール「Limited Ads」は あまり期待できない? : パブリッシャー・ベンダーから懐疑の声

今年夏の初めに、Googleはクライアントのパブリッシャーに対して「Limited Ads」という新機能を紹介しはじめた。これはCookieや識別子の共有に同意しないユーザーに対し、Google アドマネージャーを介してシンプルな広告を配信するツールだ。

Limited Adsはまだ実装されたわけではないが、パブリッシャーやIT業界からは、このツールは範囲が非常に限定的で、ユーザー収益のツールとしてはあまり期待できないとされている。

パブリッシャーはLimited Adsを使うことで、Cookieを拒否しているユーザーにもパーソナライズされた広告を直接配信可能になる(予約や仲裁は可能だが、プログラマティックのインベントリには非対応)。

Googleは、欧州インタラクティブ広告協議会(IAB Europe)が要求する透明性と同意に関するフレームワークのアップデート(TCF 2.0)への遵守を決定している。これにより、欧州ではパブリッシャーや広告主、ベンダーが、個人データの処理についてユーザーに同意や保留を求めることが必須となった。Limited Adsは、これを受けて作られた相互運用可能な業界標準のフレームワークだ。

Limited Adsの欠点

TCFは、ユーザーによる個人データの処理への同意及び拒否の対象として、12の用途を定義している。たとえば用途1はデバイス上での情報の保存やアクセス、用途4はパーソナライズ広告といった具合だ。

この「用途1には同意しないが、パブリッシャーの同意管理プラットフォーム(CMP)で読者が用途2(基本的な広告の選択)、用途7(広告パフォーマンスの測定)、用途9(オーディエンス分析を目的とした市場アンケート)、用途10(製品開発及び改善)を許可した場合の限定的な広告が必要」というのがGoogleの考えだ。さらにGoogleは、GDPRでは適法な範囲で、「正当な利益」のためにパブリッシャーが個人データを処理するのは認めていると主張する。この「正当な利益」を満たすには、「データ収集による企業側の利益」と、「データ収集を拒否することによるユーザーの利益」のどちらが大きいかを判断する必要がある。

ここが難点で、業界関係者らは米DIGIDAYに対し、同意を提示されたとき、わざわざデータ共有に同意する用途と同意しない用途を選択するユーザーは非常に少ないのではないかと指摘する。また、同意管理プラットフォームやパブリッシャーは、基本的にユーザーがすべて拒否した場合は、そもそも正当な利益かどうかに関するデータをベンダーに伝えない。さらに英国のデータ保護当局であるICOは、リアルタイム入札はGDPRの定める正当な利益に当たらないと明言している。フランスのパブリッシャー、JDNもLimited Adsの欠点を指摘している

広告配信の決定権の所在

フランスのオンライン企業レボンコイングループ(Leboncoin Group)で広告担当VPを務めるファビアン・スコラン氏によると、GoogleのTCFの解釈は杓子定規で、ユーザーの選択によってはウェブサイト上で広告が一切配信されなくなりかねない。

「これはGoogleではなく、パブリッシャーが行うべきことだ」と、スコラン氏は語る。「GDPRに準拠し、適切なユーザーに適切な広告を配信する。それがユーザーの個人情報を尊重する我々の使命だと思う。広告を読み込むかを、Googleが決めるというのは異常で、あってはならない」。

また、アドテク企業のスマート・アドサーバー(Smart AdServer)で開発ディレクターを務めるアドリアン・ティル氏は、「そもそもGoogleは、なぜデータ処理が必要なノンターゲティング広告を拒否しながら、ユーザーから同意情報を得る必要があるのかわからない」と疑問を呈する。

Googleアドマネージャーのプロダクトマネージャーを務めるエリック・ロー氏は、「Googleの限定広告はCookieやモバイル識別子に依存しないが、広告配信の過程でIPアドレスなどのデータは使用する」と述べている。「現在Limited Adsの開発を積極的に進めており、近いうちにさらに情報をお伝えする予定だ」。

ブランド広告主を巻き込む可能性

一方、ユーザーがCookieの使用に同意しない場合、Limited Adsでは周波数キャッピングやフラウド検知といったオプションは使えない。

ネイティブアド会社のアドユーライク(AdYouLike)で英国マネージングディレクター兼共同創設者のデイル・ローベル氏は「そのインベントリでパブリッシャーが取引すると、多数のブランド広告主を巻き込んだ問題になる可能性がある」と語る。

Googleはほかの広告企業やブラウザ企業と協力し、プライバシーサンドボックス構想の一環として、サードパーティ製Cookieなしで機能するウェブ広告に取り組んでいる。

Googleのロー氏は「当社はこういった長期的な視点でのソリューションに投資を続けていく。それと同時に、ソリューションが完成するまで、ユーザーがCookieの使用に同意しない場合にもパブリッシャーが収益をあげられる機能をローンチしたい」と語る。

GoogleによるLimited Adsのローンチは、TCF 2.0の実装猶予期間が終わる11月15日が予定されている。Googleは現在、10月末までにパブリッシャーがウェブ上でLimited Adsの有効化を選択できる機能の実装を目指している。

検討すべきふたつの代替案

データおよび広告アドレサビリティ企業のサーデータ(Sirdata)でCEOを務めるベノイ・オバール氏は、「パブリッシャーは、十分にリソースがあるのであれば、ふたつの代替案を検討すべきだ」と語る。まずひとつ目が、ユーザーが同意しない場合はGoogle以外のプライマリ広告サーバーを設定してコンテクスト広告を配信し、その後にGoogleの広告サーバーを呼び出し、ユーザーがCookieの使用に同意した場合は最初の広告サーバーと競わせるという手法だ。こうすることで、ユーザーのページ読み込みにラグが生じるおそれもあるが、もし同意が得られればパブリッシャーはふたつの広告サーバー間で価格競争を行わせられる。もうひとつの手法が、同意が得られた場合はタグ管理でGoogleアドマネージャーを読み込み、同意が得られていなければ代替のアドサーバーを読み込むというやり方だ。ただし、この場合はパブリッシャーにとっても時間とコスト面でかなりの投資が必要になる。

オバール氏は「もちろんユーザー体験としては良くない。だが、そもそもパブリッシャーの収益がなくなれば、ユーザー体験自体が提供できなくなる」と語る。「ユーザーの視点からすれば、パブリッシャーコンテンツの購入を考えるべき時期にきているだろう」。

[原文:Publishers and ad tech vendors find Google’s new ‘Limited Ads’ feature to be, well, limited

LARA O’REILLY(翻訳:SI Japan、編集:長田真)