動画コンテンツビジネス、新しい形を模索する媒体社たち:VOX、BuzzFeed、グループ・ナインの事例

BuzzFeed、グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)、Vox Mediaなどの大手デジタルパブリッシャーらは、リニアTVネットワークや大手配信プラットフォーム向けの動画シリーズの開発と販売に積極的だ。2019年、多くの企業が個々の番組や映画を単純に販売する代わりに、バイヤーたちとより幅広いコンテンツパートナーシップを結ぼうとしている。

Voxは差別化を強調

たとえば、Vox Mediaの一部門、VOXエンターテインメント(Vox Entertainment)では、Netflix(ネットフリックス)の「世界の”今”をダイジェスト(原題:Explained)」や最近はじまったCNNのミニTVシリーズ、「アメリカン・スタイル(American Style)」など、長尺番組の制作と販売を専門としている。現在、6人のフルタイム制作および開発エグゼクティブとさまざまな番組に携わる100人を超えるスタッフで構成されているVOXエンターテインメントは、昨年の春と比べて3倍の数のプロジェクトを開発し、販売しているとVOXエンターテインメントのバイスプレジデント、チャッド・マム氏はいう(同グループ初の番組である、Netflixの解説番組「世界の”今”をダイジェスト」は昨年5月に配信開始された)。

マム氏は、VOXエンターテインメントがVox Mediaにどれだけの収益で貢献しているのか明らかにはしなかったが、同部門は「非常に収益性が高く」、2018年には収益目標を「2倍」上回ったと述べた。VOXエンターテインメントは、NetflixやCNNなどの大手バイヤーへの番組販売が成功していることを認識しつつ、2019年はコンテンツバイヤーとより大きな取引を追求したいと考えている。VOXエンターテインメントは今後も継続するとマム氏が強調している個別の番組販売の代わりに、より幅広いパートナーシップをめざしている。

「『スタイル』のような番組は、我々がテレビ事業に真剣に取り組んでいること、そして我々が現代のテレビネットワークに対して有力なサプライヤーになれることを伝えている」と、マム氏は語る。「しかし、我々には資産と、従来の制作会社とは異なるオーディエンスがいる。我々には、従来のプロデューサーたちが必ずしも持っているとは限らないオーディエンスに対する洞察があり、従来型のネットワークやプラットフォームの一部にとってより戦略的なパートナーになることが可能だ」。

新モデルを模索するBuzzFeed

過去2年間テレビや配信動画に対して尽力してきた他の著名なデジタルパブリッシャーたちも、自分たちのテレビと長尺番組を制作するスタジオ事業の拡大に、より多くの時間を費やしていると述べた。

昨年5月にVice Mediaから転職したBuzzFeedスタジオの責任者、ローレン・ドルゲン氏は、BuzzFeedスタジオが開発し、TVネットワークや配信動画プラットフォームなどの外部のライセンサーや配信パートナーに売り込むプロジェクトに現在、より多くの時間をとられていると語った。BuzzFeedスタジオは、BuzzFeed自身のチャンネル向け社内番組を監督する17人のチームと外部配給業者向け番組に専念する6人のチームの両方で構成されている。ドルゲン氏によると、現在BuzzFeedスタジオはおおよそ1カ月に1〜2回大きな売り込みをかけているということだ。

「非常に従来的なやり方で販売活動をしているが、ビジネスモデルに関してはもう少し創造的な機会を(バイヤーたちに)提示している」とドルゲン氏は述べる。「ネットワークがどのように反応するのか完全に評価するにはもう少し時間がかかるが、我々が注力しているものであることは確かだ」。

一括販売のグループ・ナイン

配給業者が売り手のライブラリー全体を引き受けることを約束する「アウトプットディール(output deals)」に加えて、AOLやMSNなどの独立系放送番組パートナーと共同で、グループ・ナイン・メディアもオリジナルコンテンツバイヤーとの「スレートプログラミング(番組一覧)取引(slate programming deals)」を追求していると、グループ・ナイン・メディアのブランド責任者スザンヌ・コルブ氏は述べている。2017年、グループ・ナインはFacebook Watch(ウォッチ)コンテンツ取引初期の動きの一環として、24番組の契約をFacebookと締結した。同年、グループ・ナインは、TVシリーズの番組制作および配給販売における同社の機能を構築する目的で、サラ・シルバーマン氏など長年テレビ業界で活躍している著名なコメディアンたちによって設立されたコメディスタジオ、ジャッシュ(Jash)を買収した。そのグループは現在、28人で構成されるグループ・ナイン・スタジオユニットの一部になっている。

「我々にとってもっとも大きなことは、ブランドを成長させ、知的財産を構築することだ。1回限りの番組販売から得られるより大きな取引や関係があるときは、いつでもそれを引き受ける」と、コルブ氏は述べる。「現在は、既存のライブラリーコンテンツを利用して、それに取り組んでおり、そのビジネス本来の形に還元することになるだろう」。

確かに、これらのパブリッシャーたちの多くは、自身の力を市場に向けて示し、外部パートナー向けに制作している番組には人々の関心が集まっている。しかし、マーケティングは契約書には書かれていないと、コルブ氏はいう。「我々が望むほど、バイヤーたちはメディア計画を理由に番組を買わないだろう。彼らが番組を買うのは、その番組が欲しいからだ」と、コルブ氏は言った。

大きな新収益源を生む機会

パブリッシャーたちが、より幅広いコンテンツ取引をバイヤーたちと成立させようとしている一方で、特に既存のテレビスタジオや制作会社、大手ネットワークや配信プラットフォームに番組を提供しているほかのパブリッシャーたちと競合している状況下で、彼らのスタジオ部門が成功する保証はない。レガシーパブリッシャーでさえこの分野での成功を狙っている。メレディス(Meredith)のテレビ制作会社、フォー・エム・スタジオ(Four M Studios)は、ほかの著名バイヤーのなかでも、ABC、Apple、Netflixに番組を販売している。

「近い将来、Netflixやほかの主要TVネットワークが新しいメディア企業にとって番組一覧の顧客になるとは思えない。しかし、それは番組一覧の戦略が賢明ではないという意味ではない。パイプラインを満たすために多くのコンテンツを必要とする多くのバイヤーがいる今日の全面的なOTT(オーバー・ザ・トップ)戦争において、BuzzFeed、グループ・ナインなどにとって大きな新しい収益源を生み出す機会があるはずだ」と、メディアおよびエンターテインメント会社クリエイティブメディア(Creatv Media)の創設者、ピーター・クサシー氏は述べた。

これらの機会には、ジェフリー・カッツエンバーグ氏のQuibi(クイビィ)などの新興のコンテンツバイヤー、および、コンテンツの一括購入またはライセンス供与にハードルが低い国際的な配給業者やネットワークがついてくる可能性が高い。あるレガシーエンターテイメントスタジオの幹部は、Netflix、Hulu、大手TVネットワークなどの主要コンテンツバイヤーにとって、番組一覧の取引はライアン・マーフィー氏やションダ・ライムズ氏などのハリウッドの才能あるAリストの人材たちにその多くが向けられていると述べた。パブリッシャーたちは、固定料金で売り手が売り込む番組一覧(スレート)を拒絶できる最初の権利を買い手に与える「初見」取引の導入によって、より良い機会を得ていると、この幹部はつけ加えた。

Netflixへの不満

その一方で、パブリッシャーたちは、現在の市場では莫大な量のオリジナル番組が販売されており、コンテンツバイヤーに対して差別化を図る機会があると述べている。現在のTVプロデューサーがNetflixに対して抱いている、もっとも大きな不満のひとつは、一見して限りない数の映画やテレビ番組が存在するライブラリーのなかで、彼らの番組がそのサービスのなかでたやすく埋もれてしまっているということだ。たとえNetflixが宣伝を重視していないとしても、パブリッシャーたちは、自分の番組に注意を向けさせる能力がある。

「コンテンツが注目されることがますます難しくなっている。番組に関して何らかの評判を作り出すことも非常に重要だ」と、コルブ氏は述べた。

Sahil Patel(原文 / 訳:Conyac