NBCスポーツ 、B2B 向け SVOD 「パブパス」を発表:「やり方は画一的ではない」

メディアのマジック、それはコンテンツをリミックスして、新たな価値を作り出すことだ。これこそ、NBCスポーツ(NBC Sports)が同社の新たなバーティカル(特化型)スポーツ番組バンドルに対してとっているアプローチだ。

NBCスポーツは8月上旬、「NBCスポーツパブパス(NBC Sports Pub Pass)」の立ち上げを発表した。NBCスポーツパブパスは、ラグビーやサッカー、サイクリングなどのイベントへのアクセスをコマーシャルなしのオンデマンドで提供するサブスクリプションサービスで、バーやレストランなどの商業施設をそのターゲットにしている。パブパスは、NBCスポーツが今年に入って立ち上げあるいはリニューアルした最初のB2Bであり、8番目となる総合専門スポーツ動画サブスクリプションだ。2016年にデビューした、サイクリングとツール・ド・フランスに焦点を当てた動画サブスクリプションサービスから数えて、17番目となるプロダクトだ。

NBCスポーツの既存SVODサービス「スポーツゴールド(Sports Gold)」では、さまざまなストリーミング配信を好きに選んで、個別に購入閲覧できる。その価格や内容はさまざまだ。たとえば、ラグビーワールドカップ2019日本大会のスポーツゴールドのパス(個別閲覧料金)は199.99ドル(約2.1万円)。それに対して、プロモトクロスのパス(2020年5月まで有効)は9.99ドル(約1050円)となっている。なかには、コンテンツの大半が試合への独占アクセスからなるものもあれば、テレビ番組を再利用した補助的なコンテンツからなるものもある。たとえばフィラデルフィアのスポーツファン向けのスポーツゴールドでは、試合前後の様子に加えて、選手のプロフィールや、引退した選手たち(元フィラデルフィア・フィリーズのチェイス・アトリーやジミー・ロリンズなど)のドキュメンタリーも放送されている。

直販(direct-to-consumer:以下、D2C)サービスに向けてニッチなスポーツ放映権をかき集めている企業はNBCスポーツだけではない。たとえば、新興スポーツ専門OTTのフロースポーツ(FloSports)は、プロフェッショナルブルライディング(ロデオ競技)や女子大学サッカーなど、実にさまざまなスポーツを顧客にストリーム配信している。だが、大手メディアがストリーミング動画の包括的なサブスクリプションプロダクトに大金を注いでいる現状において、こうしたNBCスポーツのパブパスやスポーツゴールドのような特化型戦略は異彩を放っている。

「NBCスポーツのやり方は断じて画一的ではない」と語るのは、NBCスポーツグループ(NBC Sports Group)でDTCサービス担当バイスプレジデントを務めるポーシャ・アーチャー氏だ。「スポーツごと、プロパティごとに異なったアプローチをとっている」

ストリーミング配信の契約モデル

NBCユニバーサル(NBCU)の基準に照らせば、スポーツゴールドの顧客基盤の多くは小さい。たとえば過去14年間でもっとも視聴されたプロラクロスリーグの試合の場合、NBCの従来型テレビ放送と各デジタルチャンネルを平均して、その視聴者数は41万2000人だった。

アーチャー氏は、スポーツゴールドがこれまでに何人のサブスクライバーを獲得しているのかについての明言を避け、その成長には満足しているし、サブスクライバーの増加は社内の「予想を上回る」状態が続いていると述べるにとどまった。

スポーツゴールドの場合、費用を大幅に追加しなくても立ち上げられる場合が多い。NFLやNBAをはじめとする北米のメジャースポーツであれば、莫大なメディア権料が要求されるが、小規模なリーグの場合、たいていはずっと安い料金でストリーミング配信の権利を獲得できる。こうした権利を利益分配ベースで入手できるケースが増えていると語るのは、国際法律事務所ブライアン・ケイブ・レイトン・ぺイズナー(Bryan Cave Leighton Paisner)のマネージングパートナーで、同事務所のスポーツ/エンターテインメント部門の共同リーダーを務めるスティーブ・スミス氏だ。

規模が小さいリーグをストリーミング配信する権利について、スミス氏は「権利料モデルは一般的ではない」と語る。「『契約を結ぶ各人の売上のX%を受け取る』的なモデルを目にする機会が今後は増えるはずだ」。

動画制作とマーケティング

また、権利所有者による投資のおかげで、多くの場合、コンテンツも簡単に作れる。スポーツゴールドのほぼすべてのプロダクトは、大人数の制作チームを遠方まで派遣する代わりに、リーグや権利所有者が直接提供する動画コンテンツのフィードを使用している。「誰もが自身のネットワークやD2C(プロダクト)の立ち上げを試みている」とアーチャー氏は語る。「いままさに、これらのプロダクションバリュー(製品の質)は向上している」

残るはマーケティングだが、NBCスポーツは嬉々としてそれを、従来型テレビやデジタル、ソーシャル、メールなど、あらゆるチャネルで展開している。かつてディズニー(Disney)がありとあらゆる自社ブランドでESPN+をプロモートしたように、いまNBCは巨大なNBCUブランドを使って、盛んにスポーツゴールドをプロモートしているのだ。たとえば今年はじめ、NBCの看板番組「トゥデイ(Today)」のなかで放送されたアリサ・リュウ(13歳で全米フィギュアスケート選手権優勝)についてのワンコーナーでは、フィギュアスケートに焦点を当てたスポーツゴールドが宣伝された。先日、TKのなかで流されたプロモーションがフォーカスしていたのは、ラグビーのスポーツゴールドで、従来型放送ではなかった。

またNBCスポーツは、マーケティングアウトリーチや戦略の面でも、リーグや権利所有者と直接協働している。メッセージングやオーディエンスプロファイリングだけでなく、ときにはリーグファンとの直接的なコミュニケーションにおいても、彼らと力を合わせているのだ。

今後、D2Cモデルの認知度の上昇と、制作・配給コストの低下により、一部のリーグにとっては、独力でやることが魅力的な選択肢になるかもしれない。しかし、プロモーション力では、NBCに敵うものはそうはいない。一部の小規模なリーグにとっては、顧客1人当たりの売上の増加よりも、このことのほうが重要かもしれない。「なぜ(ダイレクトではなく)NBCに走るのかという質問には、こう答えよう。それがNBCだからだ」と、スミス氏は語った。

Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)