葡・パブリッシャー連合、ようやく初のキャンペーンを実施:デュオポリーの対抗となるか?

共同戦線VS寡占企業:ポルトガルの実例に見るパブリッシャーアライアンスの限界

ヨーロッパは米国に比べ、団結心が強く、反トラスト法が緩い。そのヨーロッパには、パブリッシャーが一致団結し、FacebookとGoogleの力に対抗しなければならないという考え方がある。しかし、パブリッシャーアライアンスの運営は容易ではないようだ。

比較的小さな市場であるポルトガルを見ればわかる。ポルトガルのパブリッシャーはFacebookとGoogleのデュオポリー(複占)に対抗するため、ノニオ(Nonio)プロジェクトというパブリッシャーアライアンスを結成。計画の発表から2年後、ようやくはじめての広告キャンペーンが開始された。

2年前、インプレザ(Impresa)、グローバル・メディア(Global Media)、コフィナ(Cofina)、メディア・キャピタル(Media Capital)、パブリコ(Publico)、ルネッサンス(Renascena)というポルトガルのメディア企業6社が、FacebookとGoogleに代わる広告の選択肢としてパブリッシャーアライアンスを発表。2018年3月以降、6社のデジタルプロパティの読者130万人が年齢、性別を登録している。これは価値あるユーザー情報だが、ポルトガルのインターネットユーザー650万人の一部にすぎない。

それでも、ノニオが広告キャンペーンを展開するには十分な情報量であり、6月、プロクター・ アンド・ギャンブル(以下、P&G)の1カ月間のキャンペーンが始動した。

より品質が保証された環境

インプレザのデジタルディレクター、ジョアン・パウロ・ルス氏によれば、ポルトガルでは、デジタル広告費の3分の2がGoogleとFacebookに投じられているという。この2大企業には巨大なスケール、細かいターゲティングという利点があり、多くのメディアプランに採用されている。パブリッシャーは2大企業から広告収入を取り戻そうとしており、広告主も新たな選択肢を探している。規模では適わないかもしれないが、より品質が保証された環境を求めているのだ。

P&Gポルトガルのマーケティングリーダー、カロリーナ・ベイガ氏は「ひとつのものに依存しすぎるのは良くない」と話す。「2大企業に過剰投資し、ブランドセーフティのような問題が起きれば、頭を抱えることになる。多様性はとても良いことだ。(ノニオが)ポルトガルのメディアベンダーのみで運営されていることをとても誇りに思う。このプロジェクトの長所は、ライバル同士である彼らが、互いに強くなることは可能だと気付いていることだ」。

ポルトガルは市場が小さいため、広告主はオーディエンスの大部分にリーチしながら、さまざまなメディアチャンネルを試すことができる。ノニオに参加するメディア企業6社は、ポルトガルの全人口の85%にリーチしている。

ターゲティングは未熟なものの

ただし、ノニオのデータターゲティングはまだ成熟していない。ターゲティングのカテゴリーは男、女、25歳未満、25歳以上の4つだ。P&Gは現在、1カ月の広告キャンペーンを展開しており、4つのブランドがそれぞれのカテゴリーをターゲットにしている。アフターシェーブ用品ブランドのオールド・スパイス(Old Spice)は25歳未満の男性、ジレット(Gillette)は25歳以上の男性、ビーナス(Venus)は25歳未満の女性、パンテーン(Pantene)は25歳以上の女性だ。

「大まかな分類からはじめ、セグメントが狭くなりすぎないようにしたかった」と、ルス氏は説明する。「とても狭いセグメントをターゲットにする場合、どうしても価格を高く設定しなければならない。最初からそうするのは容易なことではない。3ユーロ(約362円)のCPMに慣れている人は、我々に10ユーロ(約1206円)を支払いたいとは思わない」。

現在のところ、未熟なターゲティングはP&Gの障害になっておらず、ノニオは今後、メディアバイヤーからの意見をオーディエンスセグメントに反映させようとしている。

こうした明確なターゲティングの利点は、広告主が何に金を出しているかがわかりやすいことだ。ルス氏によれば、FacebookやGoogleでは、なぜその広告が表示されているかがわかりにくいという。ノニオはデータ管理プラットフォーム、シーセンス(Cxense)でオーディエンスセグメントを構築しているところだが、今後も透明性にはこだわり続けるつもりだ。

スケールに関しては課題あり

ただし、スケールに関しては、ノニオは期待に応えていない。障壁のほとんどは技術インフラの問題だが、外的要因もある。Appleがトラッキング防止機能を変更し、デフォルトでサードパーティcookieがブロックされるようになったことで、ユーザー情報の収集が妨げられている。AppleのOS経由でアクセスした人は、数セッションで自動的にログアウトするため、再びアクセスしたとき、情報を入力し直さなければならない。スタットカウンター(StatCounter)によれば、ポルトガルのモバイルOSの市場シェアはAppleが24%で、アンドロイド(Android)が75%を占めるという。

そのため、読者登録を義務化するという計画を実行できておらず、現状では2~3記事読んだあと、広告が表示されている。

「我々はもともと、ログインの手間は1度だけだと約束していた」と、ルス氏は話す。「ブラウザ環境に比べれば、アプリ内の方がログインの安定性を保証しやすい」。

ノニオは現在、Cookieと同じように登録者を追跡できる技術ソリューションを探している。

P&Gのキャンペーンの結果次第

ノニオがGoogle、Facebookに流れている広告費を取り戻すことに成功するかどうかは、P&Gのキャンペーンの結果次第だろう。P&Gは2年前から、ノニオを試す最初の企業になることを狙っていた。現在はパフォーマンスを注視しており、その結果に応じて、追加投資の規模が決定される予定だ。

「いまは、あらゆる指標に目を光らせているところだ」と、ベイガ氏は話す。「現地のパブリッシャーは国際企業に比べ、品質関連のKPIが少し上回っている」。P&Gが重視しているのは詐欺やビューアビリティなど、リーチと広告の質に関する指標だ。ベイガ氏はパフォーマンスの詳細を明かさなかったが、現時点の結果には満足しているようだ。ルス氏によれば、すでに50万人以上にリーチしており、7月中には目標の130万人に到達する見込みだという。

ルス氏は広告主の名前を伏せているが、近い将来、3つのキャンペーンが予定されている。ノニオの最低価格は5万ユーロ(約603万円)。手数料はCPMの時価の30%だ。

現地パートナーであることの利点

結局のところ、現地パートナーとの提携は、安定した関係も育んでくれる。

P&Gのメディアエージェンシー、カラ(Carat)のクライアントサービス責任者カルメン・ブリジダ氏は「インプレザやメディア・キャピタルのようなパブリッシャーと提携したら、すべてをゼロからはじめることができる」と語る。「具体的なプロセスのために、具体的なコミュニケーション、プロジェクトをつくり上げることができる。Facebookが相手の場合、問題が発生したら、アイルランドまで行かなければならない」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)