コロナ禍の発生から1年が経過し、最近では、スポーツクラブが相次いで営業を再開。さらに新年の抱負を掲げ、オンラインコンテンツを使ってフィットネスに取り組んでみたものの、挫折する人々も出てきている。そこでポップシュガー(PopSugar)のフィットネス部門は、いまの勢いを維持するために、戦略の見直しを図っている。
新型コロナウイルスによるロックダウンで、スポーツクラブが軒並み休業に追い込まれてから約1年が経とうとしている。新たなエクササイズを探し求めるフィットネスマニアのあいだでは、オンラインコンテンツを利用する人が増加中だ。こうした需要を受け、ポップシュガー(PopSugar)をはじめとするオンラインパブリッシャーは、その存在感を高めてきた。
しかし最近では、スポーツクラブが相次いで営業を再開。さらに新年の抱負を掲げ、オンラインコンテンツを使ってフィットネスに取り組んでみたものの、挫折する人々も出てきている。そこでポップシュガーのフィットネス部門は、いまの勢いを維持するために、戦略の見直しを図っている。
具体的には、オーディエンスアンケートの回答や人気動画の分析結果といったデータをもとに、メディアブランド内でのフィットネスコンテンツの位置付けを見直すという。これは、オーディエンス数の維持だけでなく、新たな広告主の獲得にもつながる。
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ポップシュガー・フィットネスのWebサイトのユーザー数は、ここ数カ月間で激増している。20代の若年層にターゲットを絞った同サイトは、2021年1月のユーザー数が前月比50%増となる700万人に達した。また、YouTubeチャンネルの動画視聴数も、同期比で60%増加。動画分析ツールを提供するチューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、ポップシュガー・フィットネスのYouTubeおよびFacebook動画の1月の合計視聴時間は1憶3070万分に上る。
ポップシュガーによれば、2020年における、同社のYouTubeといったサードパーティプラットフォーム経由の収益成長の大部分を、フィットネス部門が担っているという。
メンタルヘルスコンテンツを拡充
現在、ポップシュガー・フィットネスはヘルスケア&ウェルネス関連のコンテンツ拡充を図っており、5月の「メンタルヘルス意識向上月間(Mental Health Awareness Month)」に向け、新たなオンラインハブをローンチする予定となっている。「心の病は恥ずかしい」という風潮をなくすため、心の不調に悩む人びとの体験談も増やしていく考えだ。
コンテンツ拡充プランの全体的な詳細は、いまのところ未定だ。しかし指揮をとるのは、ポップシュガーの新たな役職となる、フィットネス部門副編集長に2021年1月に就任した、ジェニファー・フィールズ氏になることはわかっている。同氏はポップシュガー入社以前、ウェブMD(WebMD)のコンテンツ開発担当 シニアディレクターとして活躍したほか、グッド・ハウスキーピング(Good Housekeeping)のサイトディレクターや、AOLヘルス(AOL Health)、WW、およびオー・ジ・オプラ・マガジン(O, The Oprah Magazine)のエディターを務めてきた人物で、ポップシュガー・フィットネスではマンディ・ハリス編集長のもとで働くことになる。
またポップシュガー・フィットネスは、2021年中に、睡眠、ストレス/不安感のコントロール、セルフケア、瞑想、マインドフルネス、自己実現といったテーマに関する記事や動画の制作も、拡大する予定だ。親会社であるグループ・ナイン(Group Nine)の2020年の調査では、消費者の3人に1人は身体的な健康増進に役立つカスタマイズされた情報やメンタルヘルスの改善方法に関するアドバイスを求めていることが明らかになっている。
ポップシュガーの社内データによれば、フィットネス部門を含む同社全体のメンタルヘルス関連コンテンツの視聴数は、2020年中に倍増し、2021年1月には過去最高となる20万回を記録している。なお、Google Analyticsでポップシュガーの全コンテンツのカテゴリー分析を行ったところ、メンタルヘルス関連のコンテンツが占める割合は、全体の約10%だという。
「メンタルヘルス関連のコンテンツを増やす戦略で、失うものは何もないということだ」とフィールズ氏は分析する。
広告売上も伸ばせると期待
実際、ポップシュガー・フィットネスはオーディエンス数だけではなく、広告売上も伸ばせる立場にありそうだ。メディアエージェンシー、カラUSA(Carat USA)のヘイリー・パース最高戦略責任者(CSO)は、広告主らがヘルスケア&ウェルネスについて、身体だけではなく「心の健康や栄養、人間関係」も含むものと捉えるようになっていると指摘する。アトランタを拠点とする独立系エージェンシー、フィッツコ(Fitzco)のメディア責任者であるクレア・ラッセル氏もこのトレンドを認識しており、フィットネス系パブリッシャーに対するクライアントの広告予算の増加は見られないものの、フィットネスの定義は確かに拡大しつつあると述べている。
たとえばアンダー・アーマー(Under Armour)は、ポップシュガー・フィットネスが2月末にオンラインワークアウトコンテンツハブ「ポップシュガー・ワークアウト(PopSugar Workouts)」をローンチしたことを受け、スポンサーシップ契約を更新した。1年間の契約内容には、ポップシュガー・フィットネスのワークアウト動画フランチャイズサイトである「クラス・フィットシュガー(Class FitSugar)」のリニューアルも含まれる。具体的には、新しいフィットネストレーナーやフィットネスシリーズ、フィットネスインフルエンサーのチャーリー・アトキンスによる2種類の30日間フィットネスチャレンジなどが追加される。アンダー・アーマーとの契約金は明らかにされていないが、「大規模なパートナーシップだ」とポップシュガーは述べている。
パース氏は今後の動向について、以下のように分析した。「オーディエンスの関心は高まっている。フィットネス系パブリッシャー、さらに言えばヘルスケア&ウェルネス関連のあらゆるコンテンツが、今後もオーディエンスの注目を集めるだろうと考えている」。
[原文:PopSugar Fitness expands health and wellness coverage after success with at-home workout videos]
SARA GUAGLIONE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
ILLUSTRATION BY IVY LIU