[ DIGIDAY+ 限定記事 ]アフィリエイトで企業はどれだけ成長できるのか? そのひとつの答えがザ・ポインツ・ガイ(The Points Guy:以下、TPG)にある。航空会社のロイヤルティプログラム専門のブログとして8年前に出発したTPGは現在、ニューヨークやロンドンなどの4都市に展開しており、100名近い社員を抱えている。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]アフィリエイトで企業はどれだけ成長できるのか? そのひとつの答えがザ・ポインツ・ガイ(The Points Guy:以下、TPG)にある。
航空会社のロイヤルティプログラム専門のブログとして8年前に出発したTPGは現在、ニューヨーク、オースティン、シャーロット、ロンドンの4都市に展開しており、100名近い社員を抱えている。英国での運営を担うロンドンオフィスは昨年オープンしたばかりだ。TPGは毎年黒字を続けており、創業者兼CEOのブライアン・ケリー氏によれば2018年には収益が50%の成長を示したという。この収益は基本的にすべて、読者のクレジットカード申し込みやリワードプログラムによるアフィリエイト事業であげられたものだ。
広告で収益をあげるデジタルメディアの基準からすればTPGのオーディエンス数は少ない。2019年9月の月間ユニークユーザー数は800万人だった。だが同社は今年、あまりマニアックな記事だけでなく初心者向けにポイントを絞った記事への投資をすすめたことで、トラフィックを28%増やしている。
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初心者オーディエンス向けのサービスコンテンツに力を注げば、そのなかからより熱心なオーディエンスも生まれてくる。ケリー氏は、航空会社のマイルやポイントを取り上げた記事について、「記事を読めば読むほど価値は高まっていく」と指摘する。
TPGのビジネス戦略
TPGがここまで成長を続けてきた原動力は、オーディエンスがクレジットカードに登録することでカード会社から支払われる大きな手数料だ。広告収益は1回の訪問あたりで数セント程度なものの、オーディエンスがクレジットカードに登録した際のアフィリエイト手数料は数万円になる場合もある。TPGは独占契約により通常より高い手数料を勝ち取っており、マージンはとりわけ大きい。
だが、「クレジットカードのみに力を注ぐのは賢い戦略ではない」と、ケリー氏は語る。TPGには今後、イベントやコミュニティ、ツールへと展開しさらなる成長へつなげていくという展望がある。
2020年に同サイトは、モバイルアプリの大規模アップデートを行う予定だ。これによって同社は、アプリを通じてユーザーが購入に使うとお得なクレジットカードや、ポイントや報酬のマイルストーンを達成するための方法について、アドバイスを行えるようになる。またTPGは、より効率的に旅行ができるようになるヒントを求めるコミュニティの醸成にも投資を進めていく予定だ。さらにTPGは今後、米国のさまざまな都市で「ポインツコン(Points Con)」と題した読者を直接招待するイベントを開催していく。
「より多くのイベントを開催していく。これは当社が読者や提携企業からの希望に応えるものだ」と、ケリー氏は語る。「旅行者はロイヤルティ業界のトップの声に非常に強い興味を持っている。こういった取り組みは、当社のコアビジネスにとっても良い後押しとなるだろう。当社が大きくなり、イベントも大規模化していくなかで課題も出てくるだろうが、需要は確かに存在している」。
TPGは動画業界の裏側で起きていることについて独自のレポートや分析を行うだけでなく、役員やニュースになっている人物への重要な記事やインタビューも実施している。
コマースコンテンツの興隆
ケリー氏が2010年にTPGを立ち上げた当時、収益源としてアフィリエイト手数料に注目していたパブリッシャーはほとんどなかった。だが、ここ数年でパブリッシャーは、コマースコンテンツのコンセプトを重視するようになり、クレジットカードに着目する企業も多い。その例として、ワイヤカッター(The Wirecutter)やドットダッシュ(Dotdash)、G/Oメディア(G/O Media)のコマース専門ブランドであるザ・インベントリー(The Inventory)などが挙げられる。
「ケリー氏とTPGは、旅行におけるカードやポイントについてお得な情報を取り上げる第一人者だ」と語るのは、旅行業界のパブリッシャーであるスキフト(Skift)の創業者兼CEOのラファット・アリ氏だ。「コンテンツとコマース、熱心な読者を組み合わせた同氏のビジネスモデルは成功を収めており、いまや大手メディアも注目している」。
TPGはこれまでマミー・ポインツ(Mommy Points)やトラベル・イズ・フリー(Travel is Free)、ミリオン・マイル・シークレッツ(Million Mile Secrets)といった同社より小さなライバル企業を買収し、新たな記者を雇ってきた。それだけでなく社内技術やSEOにも多額の投資も行っている。同社サイトのトラフィックの44%はオーガニック検索によるものだ。TPGは現在、テキサス州オースティンのオフィスに15名からなるテクノロジーグループを、シャーロットに15名体制のSEO専門チームを擁している。
こういったオーディエンスの意図に沿ったトラフィックは、関連コンテンツと組み合わせることで大きな収益を生み出す。たとえば英語で「旅行に最適なクレジットカード」と検索した場合、TPGが今月投稿した関連記事がGoogleの検索結果で1ページ目に表示される。記事には18種類のクレジットカードのメリット、デメリットに関する詳細な分析に加えてアフィリエイトのリンクが多数盛り込まれている。こうした情報を求めて検索して訪れたオーディエンスほど、価値の高いオーディエンスは存在しないだろう。
独自のコンテンツ評価方法
TPGは広告ではなくアフィリエイト手数料で収益を得ているため、同社のオーディエンスとコンテンツの評価方法は大半のメディア企業と異なる。たとえば同社サイトのアナリティクスチームは、トラフィックが多い記事ではなく、ニュースレター登録や記事の共有といったアクションを引き起こした記事がどれかを追跡している。ケリー氏によれば、9月にはTPGを訪れた800万の月間ユニークユーザーのうち55%がリピート客だったという。
「たとえば空港で暴走したカートの記事を読んで、(チェイス銀行の)サファイア系クレジットカードが欲しくなる人などいない」と、ケリー氏は語る。「当社の目標は、読者の目的に合わせたサービスを提供することに尽きる」。
Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)