従来メディアへ回帰する、ネット直販(D2C)ブランドたち:Facebook広告に嫌気

リッチ・ファロップ氏が4年前、新興の高級寝具のネット直販(D2C)企業ブルックリネン(Brooklinen)を立ち上げたとき、顧客獲得戦略はネット直販ブランドにとって単純なものだった。Facebook広告に金を投入するというのが、その戦略だった。

ほどなくして、ブルックリネンは広告予算全体の最大75%をFacebookに費やす。だが、ブルックリネンなどのネット直販企業だけでなく、あらゆる種類のマーケターが、マイクロターゲティング分野に惹きつけられて、Facebookの巨大な広告システムに資金を注いでいた。そして、それは単純な経済の問題となった。

Facebook広告は、ブルックリネンや下着メーカーのシンクス(Thinx)、勃起不全(以下、ED)に取り組む新興企業のロマン(Roman)、電動歯ブラシを販売する新興企業クイップ(Quip)のようなネット直販ブランドにとって、費用が非常に高くつくようになったのだ。現在、これらのネット直販ブランドはいずれも、屋外広告や地上波ラジオ放送、さらには、なんと印刷広告といった時代遅れな手段を含む、新しいチャネルに支出を多様化している。

「なるべく早急にFacebookから手を引こうとしている」と、ファロップ氏。FacebookのCPMは、1年前の倍になっていると同氏は指摘する。「ほかの誰もが利用しているプラットフォームの狭い片隅で戦っており、切り込むのは難しい。インプレッションベースのオークションに金を支払っているので、基本的には、その分野で競争を求めている相手すべてに対抗して入札しており、競争がとてつもなく激しい環境になっている」。

CPMが大幅に上昇

米DIGIDAYがネット直販企業10社にインタビューしたところ、マーケティングミックスはFacebookにあまり重きを置かず、Facebookが所有するインスタグラム(Instagram)など、ほかのデジタルプラットフォームを指向していると全社が回答した。だが、7社は、従来型プラットフォームにも手を広げていると述べている。その理由は、オーディエンスセグメントで料金が上昇中で、フィードは非常に雑然とした空間になっているからだ。

消費者向けにカスタマイズされたニキビケアを提供するネット直販企業キュロロジー(Curology)のマーケティング担当シニアバイスプレジデント、ファビアン・シールバック氏は、次のように語る。「料金の安定性を維持するのに十分な速さで動けない。Facebookの効果は下がっており、4月下旬から5月上旬にかけては特にひどかったため、支出を大幅にシフトしている」。

シールバック氏によると、Facebookはかつては事業の安定した一部を占めていたが、4月末までに、CPMでの支払いが30~50%増えたので、Facebookに充てていた広告支出の30%をほかへ移すしか選択肢がなく、今後数週間以内にさらに30%をシフトする見込みだという。

この支出の一部は、インスタグラムのストーリー(Stories)に回される。ストーリーの魅力は、さまざまなクリエイティブのフォーマットが必要だが、ターゲティングとオーディエンス、水面下の仕組みがすべて、まだFacebook広告マネージャ内にあり、キュロロジーの社内チームが切り替えを管理するのがさらに容易になる点だと、シールバック氏は述べている。もうひとつの理由は、ストーリーのCPMが、いまではフィード内のFacebook広告の半分だからだという。キュロロジーは、事業規模を拡大し続けているので、支出の一部を従来型のメディアチャネルにもシフトすると、シールバック氏は予想している。

600万の広告主

Facebookは1月に、ブランドやパブリッシャーのコンテンツよりもユーザーのコンテンツを優先するように、ニュースフィードを改変した。数社によると、それによって、フィード内の限られた広告インベントリー(在庫)をめぐって競争が激化したという。広告オークションのインベントリーが減少したため、CPMが大幅に上昇し、広告減少で広告インプレッションが落ち込んでいる。テック業界ニュースサイトのRecode(リコード)で報じられたオールインワン広告配信プラットフォームであるアドステージ(Adstage)のデータによると、1月のアルゴリズム改変後、インプレッション率が落ち込み、FacebookのCPMは前年比122%まで急騰したという。

ファロップ氏によれば、規模が大きくて全体的なプロセスが容易なので、大半のネット直販企業はオンラインでマーケティングを開始するらしい。だが、Facebookの料金引き上げと予測不可能なアルゴリズム改変を受け、開始時点でも、ネット直販企業はもはやFacebookを唯一または最善の選択肢と見なしていない。

EDに取り組む新興企業ロマンの共同創設者兼最高売上責任者であるロブ・シャッツ氏は、以前、犬専門のペットサービス企業バーク(Bark & Co.)で5年間、成長担当バイスプレジデントを務めていた。犬用の玩具やおやつを提供するバークのネット直販型サブスクリプションサービス、バークボックス(BarkBox)では競争があまりなく、CPMが数ドルにとどまっていたので、Facebookで急速に事業を成長させることができたという。Facebookが100万のアクティブな広告主を抱える前の2012年には、そういう状況だった。Facebookの2018年第1四半期の決算発表によれば、現在は、その同じフィードが600万のアクティブな広告主によって共有されている。

「全体として見れば、ネット直販ブランドはFacebookをショッピングカタログとして利用している。本質的には、それは正しい。だが、カタログが興味深い商品で溢れかえるようになると、米国の機内カタログ『Skymall(スカイモール)』のようになる。そして、Skymallの発行元が経営破綻したことは、誰もが知っている」と語るのは、コンサル企業ヴィヴァルディ・パートナーズ(Vivaldi Partners)のCCOを務めるトム・アジェーロ氏だ。

他チャネルとの併用

ロマンを創設してから半年が過ぎたが、シャッツ氏はFacebookのエコシステム内にとどまるリスクを冒していない。Facebookも利用しているが、従来型メディアへの支出のほうがすでに大きいという。具体的には、屋外広告(ニューヨークのグランド・セントラル駅の広告)を出し、6月11日にテレビ広告を流し、ダイレクトメールを送っている。

「新たな事業では、規模を追求し、ある時点で、Facebookのプロスペクティングで高くて手が出ない料金になる。それが、いまの傾向だ。企業は、ファネルを満たして、人々をリターゲティングに向かわせる方法を模索している。特にテレビについては、効果的なチャネルなので、ダイレクトレスポンスサイドの多くのブランドが支出額を増やしている。デジタルチャネルと似たような扱いをされている」と、シャッツ氏はいう。

ネット直販型時計メーカーMVMTのCEO兼共同創設者であるジェイク・カッサン氏は、Facebookがもう、ネット直販企業がスタートを切るのに適した一流チャネルではないと考えている。それよりも、オムニチャネル戦略が必要だ。「スタートを切ったばかりの我々のようなブランドからすれば、Facebookに飛びついてブランドを構築するのは、考えるまでもないことだった。そういうケースを今後は、それほど目にしなくなるだろう。参入のハードルがこれまでよりもはるかに高くなっている」。

Facebook広告を4年間経験しても、ROIが低下しているので、MVMTのFacebookへの支出は、ここ数カ月で支出全体の30%にまで落ち込んでいる。今年は、ダイレクトメールやポッドキャスト、地方や全国の地上波ラジオ、テレビなどのオフラインマーケティングが同社の予算の30%を占め、TVの割合は20%になる予定だ。

「データ関連法やアルゴリズム改変がどこで変わるかわからない」と、カッサン氏はいう。

「将来的に回帰する」

Facebook離れは容易ではない。何と言っても、Facebookはダイレクトマーケティングを大量に扱っている。従来型メディアのほうが、制作費が高く、キャンセルの機会が幅広くて、リードタイムが長いうえに、測定が難しい。電動歯ブラシを販売する新興企業のクイップは、Facebook離れして多様化しようと、今週はじめてテレビ広告を流したばかりだが、このチャネルをデジタルチャネルの場合と同じように扱っている。ネットワークや時間帯ごとにどのクリエイティブの反響がもっともいいかを読みとろうと、さまざまなトラッキングコードで複数のTV広告をテストしているのだ。

「(オフライン広告で)ブランドの認知度を高めているが、誰が広告看板を見て、どの程度の成果を挙げているのか知るのが難しい。そこは、Facebookなら企業が心配する必要がない。だから、将来的に回帰する理由がわかる。良かれ悪しかれ、測定することになるのだから」と、ファロップ氏は語った。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)