GDPR の影響で コンテクスチュアルターゲティングが復活:パーソナライズは下火

アドバイイングの動きはゆっくりとではあるが、一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)施行のおかげで、コンテクスチュアルターゲティング(文脈ターゲティング)に確実に回帰している。

GDPRの影響をめぐって市場の先行き不透明感が強いため、多くのアドバイヤーは、データを多用するオーディエンスターゲティングでリスクを冒したがらない。だが、閲覧しているページの内容に基づいて個人向けに広告のターゲティングが行われるコンテクスチュアルターゲティングは、俄然、それよりも大いに魅力的で安全なものに見えつつある。

パーソナライズされたオーディエンスベースの広告ターゲティングと比べて、より多くの予算をコンテクスチュアルターゲティングにシフトしはじめたエージェンシーもある。パブリッシャーの情報筋によると、一部の大手メディアエージェンシーはさらに一歩進んで、パートナーのパブリッシャーに対して、今後は特定のキャンペーンにおいてオーディエンスベースのターゲティングをすべて取りやめ、コンテクスチュアルターゲティングだけに注力したいと述べているという。

パブリッシャーに明るい兆し

コンテクスチュアルターゲティングがあらためて重視されるのは、闘いに疲れた一流パブリッシャーにとって明るい兆しだ。というのも、優先順位リストでトップに大きく差をつけられている2番目(または3番目、4番目)の、コンテキストによるオーディエンスのマイクロターゲティングに殺到するあまり、コンテクスチュアルターゲティングの価値が軽視されていることに、長年不満を抱いていたからだ。2017年のYouTubeのブランドセーフティ問題以来ずっと、パブリッシャーは、質の高い環境でのコンテクスチュアルターゲティングの価値を力説してきた。だが、GDPR施行に対するバイサイドの反応が、意外なことに、こうした主張を推し進めるのに役立ってきた。

「人々はパーソナルなものよりも関連性のあるものに注目しているので、コンテクスチュアルターゲティングへの支出の増加が続くだろう。正しく行われれば、エンゲージメントを生み出し、キャンペーンの成果を向上する大いに優れた方法だ。過剰にパーソナライズするとキャンペーンの効果が限られるので、もっとバランスの取れたアプローチが非常に好ましい」と、メディアエージェンシー、エニシング・イズ・ポシブル(Anything is Possible)のCEOであるサム・フェントン=エルストーン氏は語る。

ある大手メディアオーナーは、顧客の広告主数社とそのエージェンシーから、オーディエンスベースのターゲティングをすべて中止して、コンテクスチュアルターゲティングを優先するよう指示された。切り替え後、キャンペーンは着実に成果を上げているという。

「一部のエージェンシーは、GDPRに対する準備が整っておらず、初日に、遵守しているとまだ確信が持てないので、購入からデータを排除するためにできることを何でも行う必要があると言ってきた。各ユーザーに適切なデータを見つけなければならない問題が解消されるので、コンテクスチュアルターゲティングならもっと規模を拡大できる。パフォーマンスへの影響もなく、個人データを使用せずコンテクスチュアルのみのキャンペーンは、結果的にクリックスルー率が大幅に上昇した」。

専門企業にとっても好材料

オラクルに最近買収されたグレープショット(Grapeshot)など、コンテクスチュアルターゲティング専門企業にとっても、この傾向は好材料だ。一部の独立系アドエクスチェンジやほかのアドテクベンダーは、GDPR施行後、自社プラットフォーム内で需要を維持するのに苦労してきたが、コンテクスチュアルアドベンダーは棚ぼた式で少しばかり利益を上げてきた。ネイティブ広告企業のアドユーライク(AdYouLike)は、5月25日以降、セマンティック/コンテクスチュアルターゲティングの需要が平均で20%増加したという。

「短期的には、パーソナライズされていない広告を掲載している。パーソナライズされたオーディエンスターゲティングは消えた。欧州ではまったく掲載していない。コンテクスチュアルが今後の道だ」と、大手パブリッシャーの幹部は語る。

コンテクスチュアルターゲティングは、メディアの計画段階で常に検討されてきた。だが、Facebookのようなプラットフォームのおかげで容易になった、オーディエンスベースの広告ターゲティングを大規模に追求するバイヤーによって、その重要性は影が薄れていた。とはいえ、GDPRがどの程度厳格に施行されるのかが漠然としており、違反すると最大2000万ユーロ(約26億円)の罰金が科される脅威が潜んでいるため、リスクを冒したがらない企業もある。

「GDPRを受け、ブランドは初心に戻って、オーディエンスターゲティングがもたらす価値を、GDPRを遵守しない場合のリスクに照らして再評価している」と、フェントン=エルストーン氏は指摘する。

エージェンシーも有効活用

特定のキャンペーンでオーディエンスベースのターゲティングをすべて停止したエージェンシーもある。その一方で、企業がユーザーの同意を得たり、個人データのリターゲティングへの利用を正当化したりするのに苦労しているため、パーソナライズされた広告と平行してコンテクスチュアルターゲティングの量を増やして、利用可能なサードパーティのデータの減少を埋め合わせているエージェンシーもある。そうした問題を回避するため、一部のエージェンシーは、5月25日のGDPR施行に先立ち、コンテクスチュアル広告キャンペーンターゲティングを優先した緊急対策をまとめた。

「顧客はまだ、GDPR施行後のデジタルメディアのエコシステムにおいて、消費者に関係があるカスタマイズされたデジタルキャンペーンを求めている。文脈上の兆候から、データのプライバシーを尊重する信頼できるやり方で、顧客の広告と消費者を結びつけることができる」と、メディアエージェンシー、カラ(Carat)の顧客管理担当ディレクターであるマシュー・ランデマン氏は語る。

「高度なセマンティック分析ツールや、プレミアムな環境への独占的アクセス、パブリッシャーやインフルエンサーと質の高いコンテンツを制作・配信する機会があれば、個人データが不要なデジタル広告用ツールキットを武器にして、オーディエンスの共感を呼べる」と、ランデマン氏は補足した。

ほとんどのエージェンシーが、コンテクスチュアルの再重視は皆に役立つという意見に賛同している。「ひとつの業界として、特定のオーディエンスをターゲットにする道を進みすぎ、広告が配信される環境に害をもたらすまでになった。私に言わせれば、業界として、コンテクスチュアルから離れすぎていたので、その復活が人々の話題に上っていることを歓迎する」と、メディアエージェンシーグループ、グループ・エム(GroupM)のデジタル取引担当マネージングディレクターであるロビン・オニール氏はいう。

ただし、グループ・エムはコンテクスチュアルターゲティングの利用を現状から拡大する必要はない、とオニール氏は付け加えた。

「自社にとって重要なすべてのパブリッシャーと協力したい。それに、GDPRを遵守したうえでオーディエンスの行動データを使用し続けるのに必要な同意は得ている」。

「コンテンツがカギ」という考え

メディアエージェンシーのトータルメディア(Total Media)は、予備的なコンテクスチュアルセグメントを準備し、GDPRの施行前に動きはじめた。ディスプレイおよびプログラマティック担当責任者のデュアン・トンプソン氏によると、GDPRの施行前は、GDPRが妨げになると見られたふたつのセグメント、パーソナライズとリターゲティングに、購入の大部分が依存していたという。そこで、トピックカテゴリーやキーワード、サイトドメインのデータを利用して、文脈的に関係がある広告を訪問者に提供することを再重視した。

「しばらくは、エージェンシーによるオーディエンスへの声掛けが必要な形で、変化があるだろう。パーソナライズはなくなるが、短期的には、文脈上の関連性でそれに対抗していく。業界として、『コンテンツがカギ』という考えを常に支持してきたので、GDPRをきっかけに、増加するコンテクスチュアルターゲティングに関する理解でもって、この考えが試されることになる」。

「文脈上の兆候が強力な場合もある。オーディエンスのデータからはオーディエンスの層がわかるが、文脈上の兆候からは、特定の瞬間に、オーディエンスの考え方や、特定のメッセージへの受容力を洞察できる。パブリッシャーにとっては、注意を大いに引く、高品質で焦点を絞ったコンテンツの再評価につながるはずだ。ブランドは、表示される環境を補完する適切で創造的なメッセージングで、こうした瞬間を利用することを検討しているはずだ」。

「GDPR 入門ガイド」はここでダウンロードできる。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)