ハードニュースの収益化は、いつだって難しい。しかし、オンライン環境でブランドセーフティが確保されないことが明るみになったことに対して、ここ半年間で広告主の不安が高まっている。マンチェスター・アリーナで爆弾が爆発した5月のテロ事件のときなどは、ハードニュース動画インベントリに関して、一部に制限が設けられたという。
いまブランドセーフティが話題になるなか、いくつかのニュース・パブリッシャーは不利益を被っているとして、緊張が高まっている。
ハードニュースの収益化は、ライフスタイルやエンターテインメントニュースより、いつだって難しい。しかし、オンライン環境でブランドセーフティが確保されないことが明るみになったことに対して、ここ半年間で広告主の不安が高まっている。マンチェスター・アリーナで爆弾が爆発した5月のテロ事件のときなどは、パブリッシャーのいくつかの情報筋によると、収益化が可能なハードニュース動画インベントリに関して、パブリッシャーの一部に制限が設けられたことがあったという。ほかの分野で収益はすぐに回復はしたものの、短期的な損失を出したパブリッシャーもいたそうだ。このため、パブリッシャーのエグゼクティブのなかには、将来的に収益化できる動画のインプレッション数について懸念を抱く者もいる。
「ブランドセーフティに関する課題は、慎重な取り扱いが必要なニュースコンテンツの課題に組み込まれるようになってきた。トレーディングデスクは、おそらくこれらの両方を一緒に攻略しようと試みている」と、匿名を条件に語ってくれたパブリッシャーのエグゼクティブは述べた。「YouTube広告のボイコット以来、誰もが過度に慎重になっており、トレーディングデスクではブランドセーフティについての上手い説明文句を用意しているに違いない。内容を重視する我々のようなニュースパブリッシャーは、そこで起こった過ちに対して代償を支払わされているのかもしれない」。
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縮小するインベントリ
ブランドセーフティの懸念が悪化した原因は広範囲に渡っている。ますます偏向していく政治的見通しにより、広告主にはグレーゾーンが残されていない。プログラマティック広告取引により存続しているフェイクニュースサイトの蔓延、YouTubeのプラットフォーム上で不用意に「テロリストに資金が流れてる」ことを広告主たちが知ることになり、YouTube広告のボイコットがはじまった数カ月あとで続いたイギリスの複数のテロ攻撃に関するメディア報道などが、状況をさらに悪化させている。
パブリッシャーらは、ブランドにとって安全な環境の定義が混乱して曖昧になっているという。その結果、キーワードリストとブラックリストはますます長くなり、一部のパブリッシャーが掲載できる広告に対するインプレッション量が減っている。適切ではない場所に広告が掲示されることに対して反射的に起きたパニック反応は別段いまにはじまったことではない。事実、パブリッシャーは、不穏なニュースコンテンツの隣に広告を掲載して欲しくない広告クライアントが過敏になれば、素早い対応を見せることが習慣になっている。ハードニュースコンテンツに対して、または先行して表示される広告について必要な情報を集めるために、手動で行われるたくさんの動画のタグ付けとともに、細心の注意を払った取り組みが行われている。いまや「ニュース」という言葉が、ほかの多くのサブカテゴリに分割される必要があるので、さらに複雑さを感じるようになっている編集チームもいる。
これらのパブリッシャーたちにとって難しいのは、単純にブランドセーフティが何かを定義するためのパラメータが大まかすぎるということだ。「キーワードリストがますます長くなっているので、突き詰めていくと、広告を表示できるインベントリ量はますます小さくなる」と、匿名を条件に話をしてくれた別のパブリッシャーのエグゼクティブは述べている。
ほかの分野で肩代わり
隙のないブラックリストとホワイトリスト作成することが難しいことはわかりきっているが、そうしたリストはしばしばバイアスがかかっている。なぜなら、不適切として判断されるものは、エージェンシー自身の持つ政治的傾向次第ということになりかねないからだ。説明をつけ加えると、これはすべてのニュースパブリッシャーが直面している問題ではない。しかし、それにより健全な動画収入を習慣にしているいくつかのパブリッシャーのあいだに不安が広がっている。
匿名を条件に話をしてくれたバイヤーによると、リスクを負う価値がないと感じる場合、単にハードニュースの収益化をめざすことからオプトアウトする機会を顧客に提供するトレーディングデスクもあるとのことだ。「大部分の企業は、多岐に渡るサイトのリストから枠購入を決定できる場合、我々の手に委ねることに異論を持たない。それが直接購入となると、リストからではなく、ひとつのサイトの枠を購入する選択肢しかなく、その場合、それを行う企業は大幅に減少するのが現状だ。クライアントはただひとつの選択肢にすべてを賭けることはしたくないだけなのかもしれない」と、前述のエグゼクティブは述べた。
パブリッシャーのなかには、ハードニュース動画やそれに類似するものの収益化がこれからも難しいということを受け入れ、さらに多くのライフスタイルやエンターテイメント動画インベントリを設けることで、それを相殺しているものもいる。というのも、それらは安全だと考えられているからだ。しかし、これは万能のソリューションではない。あるパブリッシャーのエグゼクティブは、彼らにとってエンターテインメントコンテンツを制作するコストはもっと高くつくので、トレードオフにはならないといっている。「2016年は動画が急速に伸びており、みんな同じことを予測しているだろう。これにより、ほかの分野に収益化の圧力がかかり、問題は相殺されるようになる」と匿名を条件に話をしてくれたパブリッシャーのエグゼクティブは語った。