いまや「どんぶり勘定」では、フリーランサーを活用したメディア運営は立ち行かない。「下請法」が2018年、約50年ぶりに見直され、業者間における受発注のあり方を大きく改善させたからだ。そこで、ソリューションツールを用いて、フリーランスマネジメントの問題解消に取り組む企業が増えている。
昭和の時代を引きずった「なあなあ」のどんぶり勘定では、いまやフリーランサーを活用したメディア運営は立ち行かない。「下請法」(正式名称「下請代金支払遅延等防止法」)が2018年、約50年ぶりに見直され、業者間における受発注のあり方を大きく改善させたからだ。また、昨年の消費税増税に伴い導入された、軽減税率に対応する「インボイス制度」も2023年から実施される。
いまや日本において個人で仕事をするフリーランス人口は1000万人を超え、労働人口の6人に1人を占めると言われている。昨今のデジタルパブリッシャーでは、ライターやカメラマン、デザイナー、イラストレーターだけでなく、プログラマーやデータアナリスト、プロダクトマネージャーなどとのパートナーシップも欠かせなくなった。そのため、受発注をめぐる経理処理の量が膨れ上がっている。そこで、ソリューションツールを用いて、フリーランスマネジメントの問題解消に取り組む企業が増えてきた。
「早急な改善の取組みが必要だった」
「全体で月間で約200人、年間では約1000人のフリーランスに仕事を依頼している。人数だけを見ればそれほど多くはないようにも思えるが、仕事の依頼は記事ベースになるので、実際の発注数は膨大な数になる。その結果、発注書の発行ミス、社内のガバナンスにも関わる承認プロセスからの逸脱、請求書の漏れなどが、どうしても発生してしまう」と、株式会社インフォバーングループ本社(以下、IBG)で経営管理部門 総務法務部マネージャーを務める木村啓一郎氏は語る。
「これらのミスは、コンプライアンス、ガバナンスの面からはもちろん、経営にも影響を与えるものであり、『人がやることだから仕方がない』と許容され続けていいものではない。早急な改善の取組みが必要だった」。
IBGは、DIGIDAY[日本版]をはじめ、Business Insider Japan(ビジネス インサイダー ジャパン[以下、BIJ])やギズモード・ジャパン、ライフハッカー[日本版]などを運営する株式会社メディアジーンの親会社だ。IBGでは、メディアジーンが展開する9つのメディアのバックエンドを司っている。そんな同社が導入したのが、株式会社エン・ジャパン(以下、エン・ジャパン)が展開するフリーランスマネジメントシステム「pasture(パスチャー)」だ。
「利用企業はフリーランスを大切にしているところが多い」と語るpastureの長尾氏
「会計の側面としては、証跡(エビデンス)をどう残すかというのも重要だ。たとえば、Aという案件は誰が起案し、誰が決裁したのか。そして経理処理に向けて、現在どのプロセスにあるのかを確認できなければ、当月の会計処理を適正に行うことができない」と、IBG 経営管理部門 アカウントデータ管理部マネージャーの河村真由香氏も語る。「その確認作業を人力で行わなければならないので、管理部門にも相当の負荷がかかっているのだが、pastureがあれば簡単に済む」。
クリエイティブとガバナンスの両立
pastureは、発注書の自動発行と送付、そしてフリーランスからの請求書の回収、さらに社内での処理プロセスの確認を一気通貫で実現するクラウドサービスだ。担当者は、発注時に業務内容と金額など必要な情報を入力すれば、フリーランスに対して発注書が自動発行・送付されるので、あとはpasture上でボタンをクリックするだけで処理が進んでいく。
発注書の内容に基づいて請求書も自動的に発行されるので、発注内容や金額の食い違いがない。また、フリーランスへの請求書提出のリマインドもpastureから送られるので、締日間際になって担当者が個別に連絡をする必要もないという。そしてフリーランス側にとっても、発注書の受取や請求書の発行・送付などをPDFや紙で行う必要がなく、請求漏れも発生しにくいのだ。
「下請法のこともあり、発注をした段階で発注書を作るというのは、いまの大前提。それを手軽にできるのはありがたい」と、BIJの常盤亜由子氏は語る。常盤氏は、同サイトの会員制サービス「BI PRIME」を担当する編集者だ。「pastureにすべてのログが残されているので、入力さえ怠らなければ漏れがなくなる」。
「下請法対策として、発注書が手軽につくれる」と語るBIJの常盤氏
pastureのテーマは、いかにクリエイティブとガバナンスの両立を図るかという点にある。編集などの現場にいる担当者にかかる、下請法などのリーガルリスクを可能な限り回避しつつ、やむを得ず増えてしまう工数をいかに減らしていけるか、という点を重視して設計された。
「導入先はパブリッシャーやコンサルタント企業など多岐にわたる」と、エン・ジャパンでpastureのセールスマネージャーを担当する長尾敏氏は語る。「だが、総じてガバナンスリスクの感度が高く、パートナーであるフリーランスを大切にしているクライアントが多い」。
「柔軟性の高さ」が導入の決め手
しかし、ただでさえ膨大な通常業務を抱えている現場の編集担当者に、ガバナンス強化を旗印として新たなツールを導入しても、単純に負荷がアドオンされるだけでは、誰もそのツールを利用しようとは思わないだろう。そのためにpastureは、ユーザーの業務フローに応じた柔軟な対応が可能となっているという。
「我々は毎年150以上の機能をアップデートしているが、開発にあたってはユーザーからの要望も吟味ししており、実装した機能のうちの40%がユーザーからの要望を反映したものだ」と、長尾氏は説明する。「現状の業務フローに極力負荷をかけず、また、環境も大きく変更せずに運用できるよう、多くのユーザーの知恵が詰まったシステムだと自負している」。
IBGの木村氏は、導入を検討する際に、pastureを含めて3つのサービスを比較した。その結果、圧倒的にpastureが機能も充実していたし、自社の業務フローに合わせての運用が可能になる柔軟性も高かったと感じたという。
「実はメディアジーンでは、編集部によって業務フローに若干違いがある。『ツールを導入したから、いままでの業務フローを変えろ』というのは本末転倒であり、こちらの業務にツールの側が合わせてほしいというのが自分の考えだ。それに対応できるのは、唯一、pastureだけだったという点が導入の大きな決め手でもある」。
「自社の業務フローに合わせての運用が可能になる柔軟性も高かった」と語るIBGの木村氏
テレワーク時代に求められるもの
とはいえ、現場の担当者にとっては、従来のフローに変更が加わることには違いはない。業務フローは有機的に連結しているものであり、発注データがプロジェクトの進捗管理やフリーランスに対する評価など、請求以外のデータに紐付いている場合もある。
「pastureを導入した際に、パートナーの意見は異口同音に、最初は戸惑っている印象だった。実際、発注側の我々もはじめてのツールだから、同様に苦労した」と、BIJの常盤氏は語る。「しかし、それを乗り越えると、みなさん『便利ですね』という感想になる。パートナーにしてみても、pastureをいろいろなパブリッシャーで使ってくれれば、メリットは大きくなるように思う」。
ガバナンスやコンプライアンスの強化は、時代の要請だ。今後ますますフリーランス活用が進むとしたら、その流れは避けて通れない。しかしpastureであれば、ペーパレスや電子化によって、管理にかけている工数を効率化でき、さらにモバイル対応、使いやすいUI/UXなどの使い勝手のよさで、新たにかける手間を極力少なくすることが可能だ。その結果、フリーランスマネジメントの強化とクリエイティブな業務の推進が両立できる。だからこそ、メディア事業の拡大も見込めるし、さらなる成長戦略を描くことができるのだ。
「コロナの影響でテレワークが必須となり、結果的にデジタル化が進んだ。これから先、個人と中小企業とのやりとりでは、一層、デジタル化が推進されると思う」と、IBGの河村氏は語る。「いままでは紙や人力ベースで行っていたフリーランスマネジメントも、ツールでシステマチックに進めることが求められるようになるだろう」。
「pastureがあれば会計も簡単に済む」と語るIBGの河村氏
「ベースにあるのは互いの信頼感」
コンプライアンスやガバナンスの強化、そしてテレワーク時代に対応したデジタル化の推進。パブリッシャーとフリーランスの関係も、DXが求められる時代になっていることは間違いなさそうだ。「しかし、ツールはあくまでもツールだ。ツールによって皆の利便性が高まることはあるが、『このツールを使っているパブリッシャーだから信用できる』などと、フリーランスの信頼感が高まるということはないだろう」と、木村氏は締めくくる。
「フリーランスと我々のベースにあるのは、お互いの信頼感だ。pastureというツールを利用することで、発注や請求などにわずらわされることなく、フリーランスが安心して仕事に取り組める環境を整え、より信頼感を醸成できるようにしていきたい」。
Sponsored by pasture
Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志、長田真)
Image by Shutterstock