仏・老舗週刊誌、 Snapchat 攻略で 700万の若年層を獲得:レガシー企業のデジタル戦略

紙媒体としてよく知られているフランスの週刊誌、パリスマッチ(Paris Match)にとって、Snapchat(スナップチャット)のディスカバー(Discover)のパブリッシャーになるという選択肢は、進むべくして進んだ必然の道ではなかった。だが、創刊70年を超えるこの企業は、ここ2年でそれまで繋がりの薄かった若年層のオーディエンスにリーチすべく取り組んできた。このパブリッシャーによると、2018年8月現在、月間700万人の読者を獲得し、過去6カ月間では20%増えているという。

パリスマッチのデジタル部門の編集長を務めるマリオン・メルテンス氏によると、パリスマッチがオーディエンスのエンゲージメントを維持できている要因は、特定の分野に注力しすぎず、編集部の要求どおり広範囲にわたる話題を提供できているところにあるという。

スポーツや政治、セレブやライフスタイルなど、ニュースや日々の新鮮な話題を取り上げ、10枚のスナップエディションとして定期的に提供している。「読者が飽きずについて来てくれている理由は、こうしたさまざまな話題を提供できているところにある」と、メルテンス氏はつけ加えた。

スポーツやニュースが肝

2018年のサッカーW杯でフランスが優勝したことで、パリスマッチのエンゲージメントが急上昇したのは当然の結果だった。W杯フランス代表でディフェンダーのベンジャマン・パヴァール選手は、ドイツのブンデスリーガのVfBシュトゥットガルトでプレイしていたために、フランス国内ではあまり名前が知られていなかったが、アルゼンチン戦では後世まで語り継がれる歴史的なゴールを決めた。

スポーツ選手の個人的なプロフィールがディスカバーで人気があることを知っていたパリスマッチは、表紙のヘッドラインでパヴァール選手とガールフレンドであるレイチェル・レグラン=トラーパニ(2007年のミス・フランス)を、「パヴァール:人生を変えた1日」と題して特集を組んだ。メルテンス氏によると、これによって非常に大きなエンゲージメントを獲得した。

とはいえ、アメリカのフロリダ州パークランド高校での銃乱射事件を受けて起こった大規模な反銃器運動や国内外の政治やテロといったシリアスな話題も多くの人に読まれている。メルテンス氏によると、最新の出演作について語る、映画スターのインタビューなどの緩い話題は、宣伝目的だと思われていることもあり、こうした核心にせまるような記事と比べると、反響は薄いという。

試行錯誤をしながら

パリスマッチのディスカバーのチームはSnapchat向けの動画を通じて、スナップの最適な尺を模索中だ。「8秒のスナップなのか、それともアニメーションや上にスワイプするテキスト付きの長尺ものをやるべきなのかを見極めるのに苦労している。レシピやルールなどはない。試行錯誤しながら学んでいるところだ」と、メルテンス氏はつけ加えた。

パリスマッチ編集部には90人が在籍しているが、そのうちの6人がディスカバー向けのコンテンツ制作に取り組んでおり、モーションデザイナーが4人と、調査員とライターがひとりずつ在籍している。メルテンス氏によると、そのほかの記者も日々ディスカバー向けの記事に携っており、Snapchat上の13~15歳の年齢層にアピールできるコンテンツとはどのようなものかを知っている、常に若いライターからの意見を聞けるよう、若い世代のインターンも多く受け入れている。

そして、このプラットフォームでブランドの力を示すうえでは、パリスマッチが紙媒体で培ってきた経験を昇華させ、強力なビジュアルを備えたジャーナリズム主導型の雑誌をディスカバー上で実現することこそが極めて重要だと、メルテンス氏はつけ加えた。そして、パリスマッチが紙媒体として常に見据える先にあるものは、その記事そのものよりも、その背後にある、人の興味をそそる物語だ。

マネタイズはまだ最低限

Snapchatのディスカバーは、新しく若い世代のオーディエンスにリーチするうえで重要な場所だと認識されている。だが、マネタイズの面ではまだまだであり、それはもちろん、フランスも例外ではない。

アメリカでもイギリスでも、ディスカバーのパブリッシャーはライセンス契約料を受け取っているが、パリスマッチは広告収益の分配モデルを持つ唯一の企業だ。ひとつの記事のなかで3つのスナップごとに広告が挟み込まれる仕組みだが、ディスカバーのチームや予算を拡大できるほどの収益を得るまでには至っていない。

「マネタイズに関してはまだ最低限だ」と、メルテンス氏は語る。「社内の小規模なチームを動かすための資金の調達はできている。だが、広告を通じてモーションデザインや記事の執筆、写真関連の予算を確保できることが理想だ。出発点という意味では良いが、記事内の広告機会の数に応じて収益を得るというマネタイズのシステムには課題がある」。

Snapchatの優先度は高い

Snapchatのディスカバーがフランスで初公開されたことは、アメリカやイギリスとは少し事情が違っていた。スタティスティカ(Statistica)の2016年の調査で、5500万人のネットユーザーのうち、800万人のユーザーを獲得していたSnapchatのディスカバーだが、メディアや広告関連のコミュニティ内では予想よりも認知度が低かったと、メルテンス氏は語る。

「Snapchatは、自身を誰もが知っている馴染みのプラットフォームだと考えていたようだが、実際はそうではなかった。営業マンの多くは、その存在すら知らなかった」。広告収益が伸びない要因はここにあったのかもしれないが、Snapchatのフランスのチームは、その状況を変えるべく、20名体制で取り組んできた。「このパートナーシップには非常に満足している」と、彼女はつけ加えた。

パリスマッチの親会社であるラガルデール(Lagardere)によると、毎週およそ60万部が流通しているパリスマッチの紙媒体の訴求力は非常に強力だという。読者の平均年齢は35~55歳。だが、この雑誌が読者数を維持するためには、ウェブでも雑誌でも、その存在を知らない若い世代のオーディエンスを取り込むことが必要だ。メルテンス氏によると、パリスマッチのディスカバーのオーディエンスの年齢層は13~25歳。「引き続きSnapchatの優先度は高い」と彼女はつけ加えた。

Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac