アクティブライフスタイルパブリッシャー、アウトサイド(Outside)では、新規購読者の40%が20タイトルいずれかの個別購読ではなく5月開始のバンドル購読、アウトサイド・プラス(Outside+)を選択している。さらに、150万人いる既存の購読者が契約更新時にバンドル購読に移行することも期待される。
アクティブライフスタイルパブリッシャー、アウトサイド(Outside)では、5月に自社タイトルのバンドル購読を開始した。それ以降、新規購読者の40%が20タイトルいずれかの個別購読ではなく、バンドル購読のアウトサイドプラス(Outside+)を選択。アウトサイドはさらに、150万人の既存購読者が契約更新時に、バンドル購読へ移行することも期待している。
実際のところ、アウトサイドプラスは、そのパイロットプログラムのような役割を担ってきたアクティブ・パス(Active Pass)を刷新したものだ。アウトサイドプラスは、持久運動関連のタイトルをまとめて提供するため、2020年6月に新設されたアクティブ・パスの改良版として、アウトサイドのポートフォリオ全体ではるかに多くの内容を提供している。CEOのロビン・サーストン氏は、アクティブ・パスの購読者数に言及しなかったが、同サービスの購読者の90%以上が契約を更新し、アウトサイドプラスの購読者になったと述べている。
アウトサイドプラスは年間購読料99ドル(約1万900円)で、20のパブリケーションへのアクセスと、印刷版2誌の発送に加え、新たな特典を用意している。印刷版2誌のうち1誌はアウトサイド・マガジン(Outside Magazine)で、もう1誌は12タイトルから選択できる。新たな特典には会員限定のデジタルコンテンツやオンラインコースへのアクセス、20のパブリケーションからのパーソナライズされたフィード、ストリーミングチャンネル、アウトサイドTV(Outside TV)の視聴、ギアやアパレルの割引が含まれる。
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読者はバンドルの代わりに、1タイトルの印刷版とデジタル版を組み合わせた49ドル(約5400円)の年間購読を選ぶこともできる。購読者を印刷版とデジタル版のバンドルに移行させるため、購読サイクルが終了した9カ月前から印刷版の単独購読を停止している(ニューススタンドでの印刷版の販売は現在も続けられている)。
50万人いるデジタル版のみの購読者に加え、アウトサイドには印刷版の購読者が100万人いる。年末までに契約を更新するか、アウトサイドプラスにアップグレードすることになるため、その際、印刷版とデジタル版のバンドルに移行してほしいと、サーストン氏は話している。アウトサイドのデジタルプロパティに関するコムスコア(Comscore)のデータによれば、アウトサイドのサイトの月間ユニークビジター数は5月に320万人を超えているという。
サブスクリプションにプラスαを施す
オーディエンス開発とマーケティングを手掛けるトゥエンティファースト・デジタル(Twenty-First Digital)の創設者でCEOのメリッサ・チョウイング氏は、「雑誌の購読を販売し、料金ベースを維持するため、いろいろなものをミックスしているパブリッシャーの典型例だ」と、分析する。「最近は40歳以下のオーディエンスに雑誌の購読だけで売り出すのが難しい。その広告売上がまだ主要な収益源であれば、印刷版の料金ベースは非常に重要だ。そのため、消費者にとって魅力的な雑誌にするため、サービスにスパイスを加えているように見える」。
チョウイング氏はまた、結果的にアウトサイドのサブスクリプションサービスがシンプルになるとも考えている。サブスクリプションをひとつにまとめたほうが「マーケティング、管理、成長がはるかに容易だ」。ただし、アウトサイドにとっての課題はむしろ、「アウトサイドプラスが自分にとって意味のあるものだと、ヨガジャーナル(Yoga Journal)の読者を納得させる」ことかもしれないと、チョウイング氏はいう。
「従来型パブリッシャーの多くがこのような実験を行っている」と、チョウイング氏はいう。「コンテンツを会員制にして、印刷物と多くの特典をパッケージ化することで、消費者売上を増やし、従来のメディアキットの数を高く維持しようとしている」。
前出のサーストン氏は、アウトサイドを会員制ビジネスに移行させることを視野に入れ、サブスクリプションにコンテンツやサービスを追加している。アウトサイド・マガジンは買収当時、ビジネスの65%がデジタル広告売上によるものだった。サーストン氏によれば、2021年の総売上のうち、サブスクリプションは10%、広告売上は50%を占める見込みだ。サーストン氏は株式公開を目指しているが、「最低」2年はかかることを認めている。
「データのブラックホールをなくす」
アウトサイドは、アウトサイド・マガジン、アウトサイドTV、ガイアGPS(Gaia GPS)、ペロトン・マガジン(Peloton Magazine)を2021年2月に買収したポケット・アウトドア・メディア(Pocket Outdoor Media)が、SKI、ヨガジャーナル、バックパッカー(Backpacker)、トレイル・ランナー(Trail Runner)、ベロニュース(VeloNews)、クライミング(Climbing)といったそのほかのブランドを傘下に置き、親会社としてリブランド化されたのだ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の規制が緩和されたことで、ますます多くの人が大自然を探索し、新たな活動に挑戦しているように見える(たとえば、NPRによれば、自転車の売上は2020年に65%増加し、キャンピングカーの売上は1月に前年比40%近い増加を記録した)。アクティブライフスタイルパブリッシャーにとっては、まさに適時だ。
また、アウトサイドプラスはオーディエンスに関するインサイトの収集にも役立つ。これまでは、ある読者がウィメンズ・ランニング・マガジン(Women’s Running Magazine)のアカウントを登録したとして、その読者がハイキングや水泳にも親しんでいるのかどうかを知ることはできなかった。
「データのブラックホールをなくしたかった」とサーストン氏は話す。買収後、アウトサイドのウェブサイトはCMSが改善された。現在、読者は無料でアカウントを登録することができ、関心やアクティビティ、ブランドを選択することで、自分に合ったコンテンツをキュレートできる。サーストン氏によれば、60%の読者が3つ以上のアクティビティを選択しているという。
そうして深まったオーディエンスの関心への理解は、プロパティ全体での広告ターゲティングに生かされる予定だ。これはサードパーティCookieの廃止に備え、パブリッシャーがオーディエンスに関するファーストパーティデータをより多く収集するというトレンドと一致している。さらに、このデータを利用することで、サイトの推奨コンテンツをパーソナライズできるようになる。
「体験をパーソナライズする方法を考えていた。たとえば、ヨガからハイキングに乗り換えたい思ったとき、我々が確実にその手助けをできるのだと示せるように」と、サーストン氏は話す。そのためのベストな方法が「スーパーバンドル」であり、「顧客は1カ所ですべてを簡単に手に入れることができる」。
[原文:Outside CEO says 40% of new subscribers are choosing its bundle for access to its entire portfolio]
SARA GUAGLIONE(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:小玉明依)