Facebookのニュースフィードを独占している、ショートフォーム(短尺)のニュース動画クリップの大手パブリッシャーNowThis(ナウディス)は、ロングフォーム(長尺)動画を制作し、オリジナル番組や調査報道を手掛けようとしている。同社は、昨今注目を集めていた、自社サイトをもたない分散型メディアの代表格だ。
Facebookのニュースフィードを独占している、ショートフォーム(短尺)のニュース動画クリップの大手パブリッシャーNowThis(ナウディス)は、ロングフォーム(長尺)動画を制作し、オリジナル番組や調査報道を手掛けようとしている。同社は、昨今注目を集めていた、自社サイトをもたない分散型メディアの代表格だ。
NowThisのプレジデント、エイサン・ステファノポロス氏によると、さらに多くのオリジナルニュース報道や動画シリーズの制作をサポートするための「積極的な人材採用計画」に着手しているという。親会社のグループナイン・メディア(Group Nine Media)は、NowThis、スリリスト(Thrillist)、ザ・ドードー(The Dodo)、スィーカー(Seeker)をひとつにまとめ、昨年10月にディスカバリー・コミュニケーションズ(Discovery Communications)から1億ドル(約113億円)の投資を獲得した。 グループナインは、所有するすべてのメディアのロングフォーム番組の制作を支援するチームを作っていると、ステファノポロス氏は語る。
「我々は得意とする分野から撤退するわけではない」と、ステファノポロス氏は語る。NowThisは主として、Facebookのニュースフィードの動画クリップで、毎月25億の動画視聴回数を稼ぐまでに成長。「ソーシャルフィードの関心事や話題に関するロングフォーム番組を制作し、それに深く関わることで、NowThisブランドを成長させ、強力にする機会として、このチームを創設する」。
Advertisement
採用された新メンバー
NowThisは、このコンテンツへの新規の取り組みを開始するにあたり、新たに4名のエディトリアルエグゼクティブを採用した。 ニコ・ピットニー氏は、ハフィントンポスト(The Huffington Post)から同社にポリティカルディレクターとして入社し、NowThisに動画記事として送られる、日々のニュース速報やオリジナルニュースを担当する予定だ。
MTVのデジタルエグゼクティブ、マット・マクドノウ氏は、NowThis向けのライブとオリジナルシリーズのエグゼクティブプロデューサーとして採用された。Facebookやほかのプラットフォームで成功できる新しいコンテンツフォーマットと番組制作が彼の責任範囲となる。ほかに2人の編集スタッフ、アンディ・カルビン氏とキム・ブイ氏も、新たにはじまったNowThisのコンテンツへの取り組みをサポートするために採用されている。
現在、NowThisは、同パブリッシャーがもっとも力を発揮する60秒のまとめ動画ニュースを超えるような番組のリストを準備。それらは移民、社会正義、気候変動、刑事司法や平等といった主要ニュースや政治の話題を扱うことになる。これらの番組は厳密にいうと 「ミッドフォーム(中尺)」のフォーマットに分類され、エピソードは平均で3~5分の長さとなる予定だ。
政治コメディにも注力
同メディアに新しく設けられたシニア特派員兼編集長に昇進したバーシャ・シャルマ氏は、これらのニュース番組の多くを管理することになる。
NowThisの長いコンテンツを新たに重視するという取り組みは、ニュースに限られるものではない。同社は、最近のアニメーション動画シリーズで、デジタルスタジオのアストロナウトウォンテッド(Astronauts Wanted)と共同制作した「Trumpocalypse(トランポカリプス)」や、コメディスタジオのジャッシュ(Jash)と共同制作した、サラ・シルバーマンとバーニー・サンダースの1時間におよぶインタビューという1回限りの番組など、政治コメディ作品の制作をもっと増やすことを目論んでいる。
「多くの企業が動画に参入し、我々の成功を真似しようとしているなか、ブランドを確立して、若いオーディエンスが気にかける主な問題に目を向けることが重要だ」と、NowThisのチーフコンテンツオフィサーのティナ・エクサロス氏はいう。
Facebookとシンクロ
この動きは、Facebookがニュースフィードでロングフォームの動画を優先し、さらにその流れが、ライセンス契約を結んだメディアパートナーのオリジナル動画番組を優先する動画タブの実験導入と、ときを同じくして起こっている。エクサロス氏はロングフォームのオリジナル報道の計画は、4カ月前にはじまっており、こちらは「うれしい偶然」だとしている。
「Facebookが動画プロダクトについて異なる考えをもちはじめることは驚くことではない。ショートフォームのソーシャル動画がニュースフィードで成功し、ロングフォームのコンテンツはそのプラットフォームの別のエリアで機能するという状況になっていくだろう。それは我々の戦略に調和している」と、ステファノポロス氏は付け加えた。
NowThisはFacebookの先も見据えている。同パブリッシャーは、最初は3分から6分の番組に焦点を当てようとしている一方で、最終的には従来の形により近い、30分や1時間のコンテンツを制作する予定だ。
「Facebookは重要な配信パートナーのひとつであることに変わりはないだろう。しかし、我々はGo90 からワッチャブル(Watchable)にいたるOTT企業や、Netflix、Amazonなど、ほかのパートナーとも話し合いを進めている」と、ステファノポロス氏は述べた。