Facebookを知り尽くしたブランドがあるとしたら、それはNowThis(ナウディス)だ。だが、Facebookには独自のルールがあり、単独ページでの成長には限界がある。そこでNowThisは、7つのスピンオフチャンネルを開設し、Facebook上でオーディエンス層を構築する方法を見出した。
Facebookを知り尽くしたブランドがあるとしたら、それはNowThis(ナウディス)だ。ミレニアル世代向けデジタル動画ニュースパブリッシャーの同社は2015年1月、自社サイトを閉鎖し、分散型パブリッシャーとして生まれ変わった。まもなくNowThisは、Facebook上の閲覧数でトップクラスのニュースパブリッシャーとなり、テキストを重ねて表示するその動画スタイルは広く模倣された。
だが、Facebookには独自のルールがあり、単独ページでの成長には限界がある。そこでNowThisは、「Politics(政治)」「Entertainment(娯楽)」、女性向けの「Her」、大麻推進派向けの「Weed」など7つのチャンネルを開設し、守備範囲の広さを活かしてFacebook上でオーディエンス層を構築する方法を見出した。
最適なFB投稿本数
Facebookはパブリッシャーがフィードにコンテンツを大量投下することを嫌う。そのため、パブリッシャーにはトピック限定のスピンオフページを開設する動機が生まれる。NowThisの場合、動画の投稿数が1日15本以上になると、エンゲージメントが低下しはじめたと、同社プレジデントのエイサン・ステファノプロス氏は明かす。
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Facebookはユーザーに何を見せるかを制限していて、ユーザーが見るのはFacebookが興味の範疇と判断したものだけだ。したがって、新しいスピンオフチャンネルを作り「表面積を増やす」のはパブリッシャーにとって理に適っていると、パブリッシャー向けソーシャル配信支援サービスを行うレベルマウス(RebelMouse)のCEO、ポール・ベリー氏は指摘する。
1日に100記事以上も投稿して成功を収めるパブリッシャーも存在するものの、同氏によるともっとも効果的なのは20~25記事だという。「1日に35記事以上は控えるのが無難だ」と、ベリー氏は語る。
新チャンネルの作り方
NowThisの編集者サラ・フランク氏は、同社が新チャンネルをローンチする前に3つの基準がクリアされる必要があると説明する。第1に、メインフィードにおけるオーディエンスのエンゲージメントが継続的に平均を上回るトピックであること。第2に、新規ページを埋めるのに十分なNowThisコンテンツがあること。第3に、独自の視点を提供できることだ。
この基準により、NowThis Herは単なるファッションと美容だけではなく、人を元気づけるようなことを実践している女性を取り上げるチャンネルになっている。近く開設される「NowThis Sports」では、フィールドの外の出来事を取り上げ、飽和していてファンのニーズがない試合ハイライトは扱わない。レシピやフードポルノはすでにFacebookにあふれかえっているので、年内に開設予定の「NowThis Food」は、フードデザート(食品砂漠:都心部や中心市街地で食料品店が撤退し、住民の生活維持が困難になる現象)や廃棄食品など、食に関する社会問題にスポットを当てる。
NowThisの各チャンネルは動画のクロスポストを行い、膨大なオーディエンス(「いいね!」の数はメインのFacebookページだけで1160万にのぼる)を新たなチャンネルに誘導する。
オーディエンス開発の極意
最近開設された、あるいは開設予定のNowThisチャンネルのいくつかは、広告との親和性が高く(「Money」や「Future」など)、一方で従来のPoliticsや「News」は明らかに広告向きではない。しかしステファノプロス氏は、新チャンネルの開設は広告だけが目的ではないと語る。熱心なオーディエンスを築くことさえできれば、広告収入は後からついてくる。NowThisのFacebookページのコメント、シェア、いいね!の多さはそれを物語っている。
新チャンネルには通常、プロデューサー1人を割り当て、オーディエンスが増えるにつれてスタッフも増員される。NowThisのチャンネルはそれぞれ3~8人のスタッフで運営されていて、動画プロデューサー、コピーライター、ファクトチェッカーなどの業務を担当している。
パブリッシャーはさまざまなアプローチでオーディエンス開発に取り組んでおり、いまやそれはビジネスの成否を分ける重要な業務だ。無料配信はNowThisの編集方針の核心であるため、オーディエンス開発チームと編集部は密接に連携する必要がある。
12人体制となっているオーディエンス開発チームは、編集者のフランク氏とプレジデントのステファノプロス氏の両方の直属だ。チームのなかには各チャンネル専属の発行人と呼ばれるスタッフもいる。彼らはニュースミーティングに出席し、57人の編集部スタッフにフィードバックする。「『この動画は理解不能』という発行人の発言で、動画が配信前にボツになったこともある」と、ステファノプロス氏は振り返る。
ブランドの継承方法
パブリッシャーは、バーティカルチャンネルを新たに開設する際、ブランディングの問題に直面する。最近の例では、About.com、BuzzFeed、ワシントン・ポスト(The Washington Post)は本家ブランドから独立したバーティカルを立ち上げ、大混戦のソーシャルプラットフォームで存在感を示そうとしている。一方、NowThisは早いうちにスピンオフチャンネルに本家ブランドの名を冠することに決めたが、その判断を後悔してはいない。
「実際のところ、とくに無料配信モデルの場合、膨大なノイズに囲まれ、ブランドの確立にいつも苦戦を強いられる。我々は、本家ブランドを外して一層わかりにくくするのは無意味だと考えた」と、ステファノプロス氏は語る。「それだと一発屋の印象を与えかねない。独立したチャンネルをローンチするには、我々はまだブランドとして若すぎる」。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Image: NowThis Her via Facebook