FUTURE OF WORK

従業員ケアに心を砕く、コロナ禍中の米パブリッシャー各社: 「従業員が一体感を抱ける機会を」

コロナ禍の最中、パブリッシャー各社は多様な困難に直面している。イベントは軒並みキャンセル、広告契約は次々と白紙に戻され、解雇と一時帰休は厳しい現実となって久しい。

雇用主らが対峙している問題はほかにもある。残っている従業員――社の成功に欠かせない人材――に、自分は大切に扱われており、いまも変わらず(リモート)チームの一員なのだと実感させる方策を、彼らは模索している。

「自分は社に欠かせない一員であり、上司は自分を大切に思ってくれている、という実感が従業員には欠かせない。それも、ただ社員としてではなく、ひとりの人間として大切にされているという感覚が」と、キャリアエクスパートのヴィッキー・サレミ氏は断言する。

今回、米DIGIDAYが取材をしたデジタルメディアを有する企業5社――メレディス(Meredith)、コンデナスト(Condé Nast)、グループ・ナイン(Group Nine)、BuzzFeed、VOX Media――はその実現に向けてすでに、従業員へのバーチャル福祉サービス、メンタルヘルスアプリのサブスクリプション、キャリアアッププログラムの提供に相応の投資をしている。

従業員向けサービスの拡充

メレディスは福利厚生のあり方を考え直し、4800人の社員全員が使えるより使いやすいサービスの提供を始めたと話すのは、同社エンプロイーエクスペリエンス・ベネフィッツ&ウェルネス(従業員体験、福利厚生&生活の質の向上)部門エグゼクティブディレクター、ティム・オニール氏だ。健康およびウェルネスに関するコンテンツ、プラットフォームを複数有する企業として、その専門知識を従業員も利用できるようにしたかったと、同氏は言う。

たとえば、同社の消費者向け製品の3つ――瞑想アプリのマイライフ(MyLife)、傘下のシナプス(Synapse)が運営するバーチャルフィットネスプラットフォームの4ユアヘルス(4YourHealth) 、そしてメレディスブランドのヘルス&ウェルネスコンテンツ――をキュレートしまとめて提供する、立ち上げ間近のポータル、ザ・ウェル(The Well)の従業員への無料提供もそのひとつだ。さらにオニール氏は、従業員にはマイライフのプレミアム版を1年間無料とし、残りのサービスもすべて、コロナ禍終了後も引きつづき利用可能にすると語る。

現在のところ各社における福利厚生の中核、有給休暇や健康保険、ウェルネスサービスなどの内容は、コロナ禍中も大きくは変わっていない。一方、育児休暇は12週間に伸び、テレメディシン(遠隔診療)も給付・補償対象に含めるなど、今年になって小さな変更も見られる。だが、注目すべきはサービスの形態および提供方法の変化だ。

たとえば、メレディスは2020年10月、4ユアヘルスの従業員向けオンラインフィットネス教室を開始した。それと並行して、同社は従業員のフィットネスクラブ・ジム会員費を、クラブやジムの休業期間中も負担している。

メンタルヘルスを重視する各社

コンデナストも同じく、福利厚生の内容をコロナの時代に合わせて修正した。同社広報によれば、米国社員はヘルス&フィットネス関係の年間給付金を、ホームオフィス用の備品やオンラインフィットネス教室、ホームフィットネス用品の費用に充当できるようになったという。給付金の具体的な額は明かされていない。

さらに、長期リモートワークを希望するコンデナストの従業員(つまり、コロナ後もリモート勤務を選択する社員)には、ホームオフィス設備費として、より高額の給付金が支給されるという。

また、デジタルメディア各社は同時に、メンタルヘルスサービスも重要視している。コンデナストはコロナ禍中、メンタルヘルスサービスプラットフォーム、トークスペース(Talkspace)上で無料カウンセリングを8回、従業員に提供した。同社従業員は瞑想アプリ、アンプラグ(Unplug)にも無料アクセスできるという。

米DIGIDAYが話を聞いた5社のうち3社――BuzzFeed、グループ・ナイン、Vox Media――は、メンタルヘルスサポートプラットフォーム、ジンジャー(Ginger)と提携し、従業員がオンデマンドセラピストにアクセスできるようにした。また、認定セラピストおよび心理学者とのカウンセリング6~10回分の費用を負担するところもある。

2020年、スリリスト(Thrillist)、ポップシュガー(PopSugar)、ナウディス(NowThis)などを運営するグループ・ナインも、広報によれば大統領選挙期間中、従業員に瞑想アプリのヘッドスペース(Headspace)への無料アクセスを提供するとともに、認定セラピストのカウンセリングも受けられるようにした。

VOX Mediaも瞑想・ヨガ教室を提供する企業、ヒールハウス(HealHaus)と提携し、 従業員がオンライン教室を受けられるようにした。

いかに有意義なサポートを提供するか

BuzzFeedは従業員に毎月1日はセルフケアデーを取得するよう勧めている。セルフケアデーはリモートワーク中に必要不可欠だったと勤務を監督する人事担当部署から事後に認められれば、有給休暇に含まれないという。

ワークプレイス・イノヴェーション・ラボ(Workplace Innovation Lab)のマネージングディレクターで、ソサイエティ・フォー・ヒューマン・リソース・マネジメント(Society for Human Resource Management)のベンチャーキャピタルを率いるギエルモ・コリア氏によれば、従業員は一般に、「自分はいまも、日々職場で必要とされるための技能を身につけている」と感じたいものであり、解雇が日常的におこなわれ、明日は我が身との不安が常態化しているときは、それがとくに顕著だという。したがって、雇用主側は従業員のウェルネスを考える際、研修やトレニーニングも併せて実施し、雇用保障に留意することが重要だと氏は言い添える。

キャリアエキスパートのサレミ氏も同意見で、たとえばランチセミナー「ランチ&ラーン(lunch and learn)」も、キャリアアドバイスを提供できる人物を招くなど、多少手を加えるだけで、当たり前の昼休憩を従業員にとって有意義なものに変えられると指摘する。

BuzzFeedとVOX Mediaはいずれも、従業員が自身のキャリアアップについて、キャリアカウンセラーおよび自社幹部に一対一で相談できるプログラムを導入している。

ニューヨーク(New York)誌やザ・バージ(The Verge)をはじめ、VOX Mediaのいくつかのブランドは、キャリアアップのさまざまな側面にフォーカスするワークショップや勉強会を編集部のメンバーに提供している。たとえば、ザ・バージは「How to Investigate a Workplace(職場の調査法)」や「Fact Checking 101(事実確認の初歩)」など、メディアにおける「調査」に特化した3部制のオンラインワークショップを開催した。

従業員が一体感を抱く機会に

ただもちろん、いくら福利厚生サービスに工夫を凝らしても、従業員に利用してもらえなければ何の意味もない。ザ・バージが開催した前述のオンラインワークショップには、従業員の40%が参加した。また、従業員はあとで録画も見られるようになっている。

メレディスのオニール氏によると、全社員の25%(1200人)がマイライフのアプリをダウンロードし、4ユアヘルスの立ち上げから1週間で400人がオンラインフィットネス教室を最後まで受講した。さらに、同社が毎年開催しているウェルネスチャレンジには、1月時点で4000人の従業員が参加登録している。今年度のチャレンジはオンラインでおこなえるように、そしてリモートで働く従業員とつながる手段になるよう、例年の内容に修正を加えたという。

4週間のチャレンジ期間中、各チームはメンバーのアクティビティ時間数を確認し合い、毎週1回、キャプテンがメンバーをオンラインで招集し、特別タスクの達成を協力して目指していく。

「従業員が一体感を抱ける機会を提供したい」とオニール氏。「仕事終わりのたんなるZoomハッピーアワーとは違う。これは『チームを作ろう、課題に一緒に取り組もう、一緒に健康になろう』という場だ」。

[原文:‘Not just the Zoom happy hour’: Why publishers are adding benefits to lift employee peace of mind

KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)