GoogleのGDPR向けアップデート、戦々恐々のメディア業界:「どこも安泰ではない」

一般データ保護規則(General Data Protection Plan:以下、GDPR)に向けたGoogleの最新のアップデートが、パブリッシャーや独立系アドテクベンダーを動揺させている。

Googleは5月第1週、業界情報メディア「アドエクスチェンジャー(AdExchanger)」が最初に報じたように、GDPRに従って同社の同意管理プロバイダー(Consent Management Provider:以下、CMP)を利用することを選択した場合、パブリッシャーが代わりにユーザーからの同意を得られるアドテクベンダーの数を制限すると認めた。Googleのサポートブログへの最新投稿によると、同社の同意収集ツール「ファンディングチョイス(Funding Choices)」を用いるパブリッシャーは、12のアドテクベンダーしか利用できない。ファンディングチョイスは、ウェブサイトやアプリで同意を集めるために、Googleがパブリッシャーに提供している数種類のツールのひとつだ。

ベンダーはパニック状態

アドテクベンダーは公には自信を見せているが、内心はパニック状態であるところも多い。あるアドテク幹部は、匿名を条件に次のように語った。「どこも安泰ではない。パブリッシャーの前に出ようと躍起になっている。平均的なパブリッシャーのアドテクチームと営業チームは、こうした二番手のアドテクがうまくいく基本的な仕組みを十分に理解できる。だから、結局はパブリッシャーとの関係がものをいう」。

パブリッシャー数社は、5月4日にアドテクパートナーからメールが殺到したと述べている。ファンディングチョイスを利用するつもりかどうか、利用するつもりなら、自社が12のベンダーに含まれているかどうかといった問い合わせだったという。「十分な供給にアクセスできなくなるのではと、神経質になっている」と、あるパブリッシャー幹部は語る。

Googleがベンダー数を12にした理由は、誰にもわからない。一部のパブリッシャーからすれば、根拠のない数字のように思える。ほとんどのパブリッシャーがプログラマティックの売り上げを維持するのに必要な数を、かなり下回っているからだ。Googleを除くと、市場に存在する主要なデータ管理プラットフォーム(DMP)やサプライサイドプラットフォーム(SSP)、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)、アドサーバ、ビューアビリティ(可視性)測定企業は、ざっと数えても20社になる。アドテクおよびパブリッシャーの幹部はいずれも、制限の結果としてベンダーの統合を予測している。「ベンダーが血みどろの争いをすることだけはわかる」と、あるパブリッシャー幹部は匿名を条件に語った。

Googleにコメントを求めたが、締め切り前に回答はなかった。

パブリッシャーの選択肢

目下のところ、パブリッシャーには3つの選択肢がある。Googleのファンディングチョイスを利用して、売り上げをパブリッシャーに還元する12のベンダーだけを選ぶことに同意する(Googleが1社と見なされるので、厳密に言えば11のベンダーを選ぶことになる)。サードパーティが提供する別のCMPを選択する。ドイツのアクセル・シュプリンガー(Axel Springer)■表記過去記事参照(https://digiday.jp/publishers/axel-springers-welt-makes-play-video-merger-tv-broadcaster-n24/)■のように、独自のCMPを構築する。以上、3つの選択肢だ。

大手パブリッシャーの多くにとって、Googleに代わるCMPを選ぶのは朝飯前だ。「協働する相手とパートナーの数を管理したい。独自のCMPを実装する帯域幅があるパブリッシャーは、おそらくGoogleのファンディングチョイスを避けるだろう。代わりのCMPソリューションが存在し、大手パブリッシャーが独自のCMPの開発を望みそうだという事実は、一部のアドテクベンダーに希望を与えてきた」と別のパブリッシャー幹部はいう。

多くのパブリッシャーは、すでにこの1年間に、提携するベンダーの数を減らしたり、ページのレイテンシー(遅延)を抑制したり隠れた手数料をなくしたり、サプライチェーンの中間業者の数を減らしたりしている。インタラクティブ広告協議会(IAB)の広告詐欺防止ツール「ads.txt」の実装は、パブリッシャーによるさらなるベンダー外しにつながった。

「大きすぎるリスク」

だが、パブリッシャーは、手を切る相手と時期を管理したいと思っている。「別のパートナーを加えたければ、厳しく制限されているから行うのではなく、自社の選択であるべきだ。基本的に、私は、買い手のパートナーと自社のパートナーを管理するよう求められている。私にとって、それはかなり非現実的だ」と別のパブリッシャー幹部はいう。

アドテクベンダーを12社にとどめると、短期的にパブリッシャーのプログラマティックの売り上げも大幅に減少しかねない。「今回の制限によって考えられる商業面での不振は、GDPRによって生じる恐れがある売り上げの落ち込みと重なって、この初期段階では、とるには大きすぎるリスクだ」と前述の幹部は語る。

だが、すべてのパブリッシャーに選択肢があるわけではない。独自開発や代わりのCMPの料金を払うより、Googleの無料のCMPを採用するほうが、パブリッシャーにとってはるかに容易だ。中小規模のパブリッシャーは、Googleのサービススイートに頼って、デジタルサプライチェーンにおける同社の支配的立場によって売り上げを最大化している。そのため、ミッドテールまたはロングテールのサイトの大多数は、ファンディングチョイスを採用する可能性が高い。「リソースや予算がないパブリッシャーは、いちばん手軽で低料金のソリューションに向かうかもしれない」と、別のパブリッシャー幹部は指摘する。

Googleの戦略的勝利

5月25日の施行前にGDPRに備えようと、企業が間際に躍起になっているため、業界は混乱している。期限のわずか3週間前というGoogleのアップデートのタイミングと、同社の法解釈がほかのメディア企業や広告企業とまるで対照的に思える点が、混乱に拍車をかけてきた。「すべてのパブリッシャーへの通知がかなり遅く、採用や十分な情報を得たうえでの決定を行う時間をほとんど与えなかったので、Googleが我々を困難な立場に追いやりつつあるのは明らかだ」と、あるパブリッシャー幹部はいう。

パブリッシャーはGoogleの動機で二分されている。一方では、Googleはすでに、半競争的行為に関してEUからの大きな圧力にさらされている。確実にGDPRを遵守するためなら、できることを何でもするだろう。とはいえ、パブリッシャーに対してベンダーの数を12までに制限すれば、最終的には、自社のスタックに需要を取り戻して、不当な優位性を生み出せる可能性があり、都合がいい。

「Googleが強引に支配しようとしていると主張できるし、良識と見ることもできる。おそらく、その両方だろう。GoogleはGDPRを戦略的勝利と見なしている」と、あるパブリッシャー幹部は語った。

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Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)