広告キャンペーン獲得のための熾烈な競争と、これまでにないほどの厳しい納期でのクリエイティブ業務が6カ月間続いたいま、パブリッシャーたちは自社の販売部門の構造改革を検討している。
広告キャンペーン獲得のための熾烈な競争と、これまでにないほどの厳しい納期でのクリエイティブ業務が6カ月間続いたいま、パブリッシャーたちは自社の営業部門の構造改革を検討している。
メディア4社の情報筋によると、パブリッシャーたちは2021年に向け、フルタイムのスタッフを配置するか、フリーランスの予算を増やして各案件の担当者の数を増やせるようにするなど、広告キャンペーン販売後業務の人員拡大に力を入れている。これは、広告主の要求に、より迅速に対応できるようにするためにほかならない。
今年起こった多くの変化や出来事の前兆がパンデミック前から見られていたように、広告運用や制作などの分野を含む、キャンペーン販売後に発生する業務の重要性を、パブリッシャーたちは以前から自覚していた。アレクサンダー・グループ(Alexander Group)のメディア業務部門責任者であるマット・バーテルズ氏によると、従来販売後に発生する業務に携わるスタッフは、営業部門の人員予算のごく一部で、多くのケースでは営業部門の全体人数の20%前後しかいなかった。
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しかし昨年から、より多くのパブリッシャーが広告主とより深い関係を築こうとするにつれ、状況は変わりはじめた。今日では、販売後に発生する業務を担当するスタッフのための予算は、営業部門の雇用予算の少なくとも半分を占めるようになっていると、バーテルズ氏は述べる。
コロナ禍によって従業員削減を余儀なくされたパブリッシャーたちはいま、営業部門をどのように立て直すべきかを模索している。前述した、キャンペーン販売後業務のための人員補充も、そうした動向のひとつだ。アレクサンダー・グループ(ALEXANDER&SUN)が実施した最近の調査によると、メディア企業の営業リーダーの70%が、今年は従業員数を減らしたか、減らすことを検討していると答えている。
バーテルズ氏は「彼らは、営業部門を再編成するチャンスを得た。課題は、決められた予算をいかにやり繰りするかだ」と語る。
「時間の余裕はもうない」
今年1年を通して、ブランドの広告プランニングサイクルが短くなったため、パブリッシャーはキャンペーンを迅速に遂行することに力を注いできた。複数のパブリッシャーからの情報によると、昨年の半分、あるいは3分の1の時間でキャンペーンを実施しなければならないケースも珍しくないという。
バッスルデジタルグループ(Bustle Digital Group)の最高収益責任者である、ジェイソン・ワゲンハイム氏は、「迅速に実行する能力にかかっている。時間の余裕はもうない」と述べた。
ワゲンハイム氏をはじめとする同社の幹部は、2021年のプランニングを開始しており、販売後業務、顧客体験、広告運用部門にスタッフを追加するよう取り組んでいる。「いまから、人員確保のために行動しなければならない」とワゲンハイム氏はいう。
レガシーパブリッシャーも同様
ブランデッド・コンテンツビジネスの経験が長く、クライアントと長年の関係を持つレガシー・パブリッシャーたちですら、こうした組織改変を進めている。メレディス(Meredith)のデジタル営業部門 エグゼクティブ・バイスプレジデントのマーラ・ニューマン氏によると、同氏が管轄する部門は、販売後業務の人員を拡大し、さらなる成長を目指しているという。
「ビジネスを効率的に管理するために、営業およびサポートチームの組織を進化させることで、柔軟性を担保している」とニューマン氏は、米DIGIDAYのメール取材に答える。「すべての顧客プログラムを、最高レベルで実行できるように、現在の体制では営業サポート(クライアントサービス/アクティベーション)に重点を置いている」。
懸念される課題
しかし、スタッフを加えることは、キャンペーンを遂行するのに役立つかもしれない。しかし、キャンペーンに関わる人数が増えることで、ほかの課題が生じる可能性がある。クライアントとのコミュニケーションの煩雑化などを懸念していると、バーテルズ氏はいう。
また、意見が多すぎると、パブリッシャーとクライアントのあいだでの継続的な対話を育成することが困難になる可能性もある。最近、クライアントとの継続的な関係から生まれるビジネスに、パブリッシャーたちはますます依存するようになっているが、それが新たなビジネスに繋がらなければ意味がない。
[原文:‘No more lead times’: Publishers rework their sales orgs with an eye toward new normal]
MAX WILLENS(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)