THE CONFESSIONS

「我々に『ノー』と答える選択肢はない」:あるベテランメディア営業幹部の告白

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大手パブリッシャー、3つの日刊誌、消費者向けの雑誌、出版関連のスタートアップなど、華々しい経歴を持つあるベテラン幹部は、20年以上のキャリアのなかで、デジタルトランスフォーメーションをはじめ、業界が急激に変化するさまを目の当たりにしてきた。もちろん、新たなやり方についていけず、淘汰されていった企業や同僚もいたという。

そんななか、営業手法も人と人の関係性に基づくものから、自動化された機械的なものへと変化していった。クライアントと直接会い、絆を深め、握手やバーボンとともに契約を結ぶ、そうしたかつて主流であった方法論は、マーケティングマネージャーやメディアバイヤーが従事するような流れ作業へと取って代わられた。そこには、人と人の交渉が生み出す創造性などまったくない。

そして、追い打ちをかけるように、コロナ禍が営業活動をさらに困難なものにした。Zoomを介したクライアントとのやり取りは、彼にとっては「虚しいもの」でしかないという。彼は再びスーツを着て、出張へ趣き、クライアントと顔を合わせ、大きな契約を取る日が来るのを心待ちにしている。

業界人に匿名で本音を語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、特別版として広告営業に携わるベテラン幹部に、破壊的イノベーションにより営業手法がいかに変わったか、時代に先んずるために何をすべきか話を訊いた。なお、以下のインタビューは内容を明瞭にするため若干の編集とまとめを行っている。

◆ ◆ ◆

――貴方のキャリアのなかで、競争力やクライアントとの関係を維持するために営業幹部として強いられた、もっとも大きな変化は何か?

10年前であれば、競争力を保つための「紙からデジタルへの移行」と答えただろう。だがいまは、それは適切な回答ではない。現在、メディア担当者が競争力と関連性を維持するためには、広告主の事業内容を理解し、コンテンツマーケティングをはじめ、イベント、ソーシャル活用といったさまざまなマーケテングスキルを習得する必要がある。さらには、破壊的イノベーションの波に先んじるために、各企業や業界の方向性を把握し、絶えず変化する環境のなかで、自らを売り込むために必要なスキルを身に付けなければならない。

――広告販売手法はどのように変わったか? 営業はいまでも重要な存在か?

P&Gの洗剤ブランド、タイド(Tide)のデジタルキャンペーンを担当するのであれば、営業はおそらく重要ではないだろう。そもそもメディアバイヤーですら、必要かどうかも疑わしい。というのも近ごろは、かなり直感的に使えるダッシュボードツールがいくつもある。しかしB2B企業のキャンペーンとなれば、話は別だ。業界に関する知見や、創造的なソリューションを提供できるなら、これは営業担当者にとって大きな強みとなるだろう。特に、行動ターゲティングが有効ではないケースにおいては、優秀な営業担当者の存在は欠かせない。重要な役割を果たすことになる。

――現状において、営業担当者が柔軟で、創造的、かつ起業家的な存在となることは可能か?

それらの資質は、どの業界の営業担当者にも欠かせない。パンデミック以降、その重要性はさらに増している。ある意味メディアの営業幹部は、コロナ禍によって引き起こされた連続的な変化について、準備ができていた。というのも10年以上、この業界では急激な変化が続いていたからだ。キャリアの初期、私が大手新聞社に勤めていたときは、そうした資質は求められていなかったし、私自身クライアントから難題を提示された際には、「ノー」と答えることも多かった。しかし状況は一変し、現在はバイヤーが力を持つようになっている。我々に「ノー」という選択肢はない。自分が詳しくないソリューションを顧客が求めている場合は、そのソリューションをゼロから構築しなければならないのだ。

――パンデミック以前の営業スタイルに戻りたいか?

どの営業担当者だって、直接顧客を訪問し、先方の担当者と対面して商談なり交渉を行いたいと思っている。それがもっとも私たちが力を発揮できる状況だし、何よりも顧客のニーズをより深く把握することができるからだ。自分の能力と、適切なソリューションを効果的に伝えられる。そしてその結果として、信頼性を築けるのだ。オフィスにこもって仕事をする必要なんてない。ただ皮肉なことに、コロナ禍以前から、エージェンシーとの商談は困難になりつつあった。一方で、B2B市場では顧客との商談は、比較的容易に行うことができた。しかしそれも、いまではZoomでの商談が効果的だと見なされる傾向が強く、この先もこのトレンドが続くのではないかと危惧している。

[原文:‘No is not an option’ Confessions of a sales executive

JIM COOPER(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)