「サブスクと広告、ふたつの部門間に対話が一切無い」:とあるパブリッシャーのプロダクト開発幹部の告白

長年の競争や熾烈な業界の変化を生き抜いてきたなかで疲れ果てているパブリッシャーたちにとって、有料サブスクリプションが成長を見せていることは希望の光となっている。しかし、サブスクリプションと広告ビジネスモデルのジョイント形態をとっているパブリッシャー内の広告部門にとっては、プレッシャーはますます大きくなっているようだ。

業界関係者に匿名を条件に赤裸々に語ってもらう「告白」シリーズ。本稿では歴史あるニュースパブリッシャーで広告・プロダクト開発エグゼクティブをしている人物に社内における主導権争いについて語ってもらった。

以下、読みやすさのために若干の編集を加えている。

――サブスクリプションの成長にフォーカスしているパブリッシャーにおいて、広告収益を伸ばそうとすることの最大のフラストレーションは何か?

フラストレーションはCFO、CEO、株主というトップレベルにある。彼らは全員、収益を生みたいと思っている。しかし、(サブスクリプションと広告)両方を成長させ、エディトリアルの独立性をキープし、なおかつユーザー体験を損なわないなんて目標には限界がある。

――それは、どういうこと?

サブスクリプション部門は、サブスクリプションを拡大させることにしか興味がない。それを達成するための主な方法は、ウェブサイトを再開発することだと思っている。そのため何百万ポンドを数年ごとに注ぎ込み、そのたびに広告ビジネスが変わってしまう。最後にサイトを再開発したとき、広告スペースの30%を失った。それでも広告収益の目標値の修正はなかった。それどころか、目標は上昇したんだ。しかし、ページ上にオーディオやビデオコンテンツといったユニットを追加したいと伝えたことがあった。それによって、ユーザーはサイトに留まり、他の記事をクリックし、結果的に広告在庫が増加すると考えたのだが、エディトリアルはそれに対してノーと回答したんだ。

――その戦略は、サブスクリプション収益を改善した?

そんなことはない。年比較で30%の減少だ。2016年には、サブスクリプションという点では大成功していたんだ。しかし、ブレグジット特集が読者を600%も増加させ、ドナルド・トランプ特集が800%も増加させたということを考慮に入れなかった。

――広告ビジネス側は無視されているように感じていると

広告ビジネスは優先度の一番下になっている。サブスクリプションとエディトリアルがやりたいことのあとに押し寄せられている。しかし、コンテンツがこれだけ無料で溢れている時代においては、中間地点も見つけないといけない。それでも一切、中間地点を見つけられていないようだ。彼らは「(エディトリアルとサブスクリプション)がこちら側、それとその他の広告の奴ら」という思考回路をしているんだ。しかし、目標値を達成しないといけないという点では全員が同じだ。それぞれのビジネスを管理する人々と、トップレベルのあいだの会話が行われていない。

――サブスクリプションと広告の責任者が同じであれば良い状況になる?

そうなると思う。しかし、エディトリアルのチームがコマーシャルチームと一切やり取りをしない点も原因だ。新しい試みだとか、両方がどう感じているか、という点に関する対話が行われていない。

――典型的なコミュニケーションの障害の例は?

ユーザーがクリックする記事の数を改善するための対策がいくつか存在している。すべての読者が2本目の記事をクリックすれば、在庫を2倍にできる。しかし、それを実現するための提案をしたとする。たとえば、オススメ記事を末尾に提示するなどだが、それらが適切に遂行されていない。ユーザーがすでに読んだものと同じ記事が表示されたりするんだ。ユーザーの視点で考えられていない。膨大なお金を使ってサイトの見た目をスタイリッシュにしたからって、人々が長く滞在するわけではない。ショッピングウィンドウのような感覚で、ウェブサイトに来るわけではない。デザインはベーシックだがコンテンツが良く、オススメ記事の仕組みが素晴らしいのでほかの記事も読む。その結果、エンゲージメントが高いというサイトは、たくさん存在している。

――一般データ保護規則(GDPR)は広告ビジネスをどう複雑化させた?

GDPRに対処するのに6カ月かかった。外部のアドバイザーを招いて助けてもらった。しかし、サブスクリプション主導で行われた。広告側では偶然見つけることができただけだ。

――見つけた? 何を見つけたの?

広告ビジネスに関してGDPR対策が何も行われていない点だ。それが大問題になると、指摘しようとした。しかし、心配するなと言われただけだ。誰かが責任を持ってやることになるだろうと。しかし、その責任者は、GDPRのプロセス全体をサブスクリプションの観点から見ていたんだ。どうやってサブスクライバーを維持するか、という点にフォーカスして、だ。広告の効率性のためには何も行われていなかった。

――それで、どうなった?

Googleが、まだ電話での対応をしてくれていたときに、Googleに相談した。それによって、問題になると気付いた。そしてオーディエンスターゲティングは、ヨーロッパでは一切行われないというビジネス全体での決断が下されたんだ。当分は変更されない決断だった。コンテクスチュアルターゲティングを活用して、そのうちの一部を取り戻したが、それでもクライアントをたくさん失った。

――サブスクリプション側と広告側の対立を解決するために、どんな対策がとれる?

両方がコミュニケーションの機会をもっと持つ必要がある。しかし、CFOやCEO、そして株主たちもまた収益をふたつの別のラインから来ているもとしてではなく、ひとつのラインとして見る必要がある。サブスクリプションはこれを達成して、広告はこれ、と分けて考えるのではなく、ジョイントの目標を設定する必要があるだろう。両方によってそれが達成されれば、問題はない。

Jessica Davies(原文 / 訳:塚本 紺)