2014年ごろ、パブリッシャーはオーディエンスの獲得とマネタイズに役立てようとデータサイエンティストを雇用しはじめた。当時、そうしたチームに所属するのはわずか1~2人。以降、フルタイムのデータ専門家の数を増やしてきたところもある。データ解析に力を入れている大手パブリッシャーをいくつか紹介しよう。
パブリッシャーはデータ信仰にハマっている。
2014年ごろ、パブリッシャーはオーディエンスの獲得とマネタイズに役立てようとデータサイエンティストを雇用しはじめた。当時、パブリッシャーのデータチームに所属するスタッフはわずか1~2人程度。それ以降、パブリッシャーのなかには、フルタイムのデータ専門家の数を増やしてきたところもある。
そして、そうした専門家が果たす役割も大きくなってきた。メディアデータサイエンティストはいまや、機械学習をベースにしてアプリを開発し、コンテンツ管理システム(CMS)を作り、ファーストパーティーのデータプロバイダーとチームを組んで、拡張現実(AR)機能をテストしている。データ解析に力を入れている大手パブリッシャーをいくつか紹介しよう。
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マッシャブル(Mashable)
新興デジタルメディア企業マッシャブルは2013年、理論物理学と数理物理学の博士号を持つハイレ・オウス氏を主任データサイエンティストとして迎え入れ、どの記事がバイラルで広がるかを予測するサイト解析ツールの開発に当たらせてきた。
その後マッシャブルでは、フルタイムのデータサイエンティスト2人とインターン1人を追加で雇用。2015年にオウス氏の率いるデータチームは、マッシャブルの新しいCMSと独自のナレッジグラフツールを作り上げた。このツールは、マッシャブルのブランデッドコンテンツがソーシャルなプラットフォームや電子メール、テキストメッセージを通じて、どのように共有されているかを追跡するものだ。
マッシャブルは2016年4月に社員30人をレイオフしたが、このチームはその対象から外れた。「コンテンツのパフォーマンスをめぐるインサイトに対しては、欲求不満が積もりに積もっていた」と、オウス氏は説明する。
パーチ(Purch)
「トップ・テン・レビューズ(Top Ten Reviews)」や「ライブ・サイエンス(Live Science)」を運営するテクノロジー系サイトのネットワーク「パーチ」は、データへの着目の仕方や営利重視の戦略において、ほかのパブリッシャーとはタイプが異なる。
パーチは2014年に、独自のアドテク・プラットフォーム「ランプ(Ramp)」を公開。その後、所属するデータサイエンティストの数は1人から5人に増えた。彼らが主に注力しているのは、コンテンツとその内容に関連する消費者向け製品とを組み合わせる「レコメンデーションモデル」を作ることだ。
パーチの最高技術責任者(CTO)ジョン・ポッター氏は「我々は、自分たちがどれだけ多くのデータをもっているかに気付き、適正な広告料を課しているかどうかを知るためには、そのデータを解析する必要があると気付いた」と語る。
マイクロソフトの「ホロレンズ(HoloLens)」やSnapchat(スナップチャット)の「スペクタクルズ(Spectacles)」「グーグル・グラス(Google Glass)」のことがニュースを賑わすなかで、パーチのデータチームでも、パーチが所有する買い物アプリ「ショップサーヴィー(ShopSavvy)」でAR機能を試している。
ハフィントン・ポスト(The Huffington Post)
ハフィントン・ポストは2014年、フルタイムのデータサイエンティストをはじめて雇用。同社には現在、製品およびテクノロジー部門に8人、編集部門に3人のデータサイエンティストがいる。彼らは、どの記事がバイラルで広がりそうかを編集者に知らせるための機械学習アルゴリズムの開発から、インタラクティブ機能によるコンテンツの補強まで、あらゆることを行う。
たとえば編集サイドでは、「ハフポスト・ポールスター(Huffpost Pollster)」の各チャートにおいて、「データの種類や支持政党によるフィルタリングを増やし、世論がどう動いているかをより詳しく見られるように」拡張したと、同社の世論調査担当シニアディレクターで政治科学の博士号を持つナタリー・ジャクソン氏は語る。今回の米大統領選とは別に、ハフィントン・ポストでは、オバマ大統領の支持率や英国のEU脱退に関する意見を追跡するのにもデータを活用してきた。
ハースト(Hearst Corp.)
統計学の博士号を持つリック・マクファーランド氏は2013年、主任データサイエンティストとしてメディアコングロマリットのハーストに加わった。当時は、データサイエンティストがもう1人、それからエンジニアが1人いて、3人でハーストのユーザーデータを売上げにつなげる方法を考えた。
その後、データチームのメンバーは10人にまで増えた。マクファーランド氏らは現在、ディープラーニングによって動くアプリの開発に取り組んでいる。これが完成すれば、ユーザーは自分の画像をもとにハーストのコンテンツを見つけられるようになるという。たとえば、アプリのユーザーが「シボレー・クルーズ」の写真をアップロードしたら、理論どおりにいくと、この車をレビューした「カーアンドドライバー(Car and Driver)」セクションの記事が表示されるだろう。
ハーストは先日、広告業者向けに「バジング(Buzzing)」プラットフォームを公開した。これは、ハースト系列のサイトに関わる編集者が、ハースト系列のほかのサイトからトレンド入りした記事のクローンを簡単に作成できるようにするものだ。
データの専門家たちの尽力による部分もあり、ハーストでは6月以来、バジングのコンテンツに対して広告をプログラマティックで販売。「顧客からユーザーへの広告販売の流れをリアルタイムで作れることはとても素晴らしく、組織内に一元化されたデータチームがあるからこそできることだ」と、マクファーランド氏は語る。
Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)