「YouTubeは第2の黄金期」: 動画シリーズで広告獲得を狙うニューズUK

オリジナル動画コンテンツの配信先としてYouTubeに注目するパブリッシャーが増えつつあるなか、ニューズUK(News UK)も新たにこの流れに加わった。

タイムズ(The Times)とサンデータイムズ(Sunday Times)が運営する美容・ファッションに特化したバーティカルメディア、サンデータイムズスタイル(The Sunday Times Style)は、広告収入増加を狙って4つのYouTubeオリジナル動画シリーズを制作。ブランド商品を取り上げた番組や、スポンサーシップ、さまざまなブランデッドコンテンツキャンペーンは、ニューズUK傘下のその他のチャンネルでも展開される。

シリーズのうち2つはすでに第1話が配信されている。「ワードローブ・ミストレス(Wardrobe Mistress)」は、結婚式のドレスなど、特定場面での着こなしのハウツー動画。もうひとつの「ウィー・トライド・イット(We Tried It)」は、「スタイル」チームのメンバーが話題の美容法や商品を実際に試すというものだ。

「サブブランドが強みになる」

これらは、既存のバーティカルメディア(たとえばサッカーの話題を妄想も含めて取り上げるドリームチーム[Dream Team]や、スポーツラジオのトークスポーツ[TalkSport]など)の業界における存在感を強め、それぞれの編集部門への投資を増やすことを目的とした、ニューズUKの取り組みの一環だ。傘下の動画チャンネルとして、サンデータイムズスタイルが抜きん出ているのは、広告主ブランドにとってラグジュアリーとファッションがニュースよりも低リスクの分野であるためだ。こうした理由で、スタイルはこの2年間、ニューズUKのブランデッドコンテンツ動画売上のかなりの部分を占めてきた。

「ブランデッドコンテンツの分野では、独自のバーティカルやサブブランドを持つことが強みになる」と、ニューズUKの動画担当責任者、デレク・ブラウン氏はいう。「YouTubeは第2の黄金期を迎えている。動画視聴サイトとして定着しており、これからの10年間はパブリッシャーにとって非常に重要なものになるだろう。(YouTubeは)いま存在するなかで、もっとも活発な動画プラットフォームだ」。

スタイルでは今後、「ワードローブ・ミストレス」が6エピソード、「ウィー・トライド・イット」が10エピソード配信される予定で、3人からなる制作コアチームが、スタイルのチームとともに新たなシリーズをつくりあげる。ブランドに関しては、これまでのところ「ウィー・トライド・イット」で、ヘアケアブランドのトニー&ガイ(Tony & Guy)のシャンプーとコンディショナーマスクをフィーチャーした動画1本が制作されている。

ブランデッドコンテンツの動き

「サンデータイムズスタイルでレビューされた商品はしばしば完売になる」と、サンデータイムズのデジタル編集ディレクター、トム・ミラー氏はいう。「そうした信頼を基盤に、動画を通じてプロダクトの変化を促したい」。

ニューズUKにとって、スタイルはブランデッドコンテンツ売上の稼ぎ頭だ。約6カ月前、スタイルはドリームチームを抑え、ブランデッドコンテンツキャンペーンでの提携ブランド数でトップに躍り出た。広告主はカルバンクライン(Calvin Klein)、MAC、エスティローダー(Este Lauder)、ナーズ(NARS)などである。

ニューズUKは2年前から、スタイルのオリジナル動画の有料配信と、自社プラットフォームであるスタイルプレイ(Style Play)での配信を行ってきた。シリーズのひとつ「ビューティーボス(Beauty Boss)」は50エピソードが配信され、10以上のブランデッドコンテンツキャンペーンが展開された。2018年のスタイル動画のブランデッドコンテンツ売上は前年の4倍を記録したと同社はいうが、具体的な数値は公表されていない。なお、同年のニューズUKのすべてのブランデッドコンテンツ動画売上は、2017年の3倍となった。

YouTubeでの展開を強める理由

これまでニューズUKは、スケールを考慮してYouTubeよりもFacebookをプラットフォームとして重視したり、広告やサブスクリプションを通じて顧客関係を管理しマネタイズできるよう自社プラットフォームへの集客を優先していた。2017年9月、同社はサンデータイムズスタイルの動画ハブであるスタイルプレイをローンチ。ここではペイウォールを取り払い、プレミアム動画に出資する高級ブランドの広告予算に狙いを定めている。

しかし、スタイルプレイに顧客を誘導するのは難しく、一方でYouTubeの月間のべ20億人の視聴者は魅力だ。加えて、スタイルプレイの動画はテーマ設定が広いが、YouTubeシリーズはこのプラットフォームですっかりおなじみのハウツー動画とチュートリアルに絞っている。チューブラーラボ(Tubular Lab)のデータによれば、美容・ファッションクリエーターは英国だけで、昨年YouTubeで21億ビューを稼いだ。

YouTubeでオーディエンスを育てるには辛抱が必要だが、そうして得たオーディエンスはより忠実で、安定的なマネタイズが期待できるという見返りがある。しかし、スタイルはスケールを追求しているわけではない。現在のところ、開始から約8カ月が経過したサンデータイムズスタイルのYouTubeチャンネルの登録者は1000人に満たない。ただしソーシャルブレード(SocialBlade)によれば、4月中旬の時点では登録者は200人しかいなかったので、ほとんどはその後の増加分ということになる。

ニューズUKは、傘下のインフルエンサーエージェンシーであるフィフス(The Fifth)も活用しており、デザインにスポットを当ててスタイルとともに制作した2本のYouTubeシリーズ、「レッツ・テイク・ディス・アウトサイド(Let’s Take This Outside)」と「ホワイト・スペース(White Space)」が今年リリースされる予定だ。

「いまやデジタル戦略の重要な柱」

スタイル以外に目を向けると、ニューズUKは他のバーティカルメディアについても、YouTubeオリジナルシリーズを制作し、ブランデッドコンテンツ化やスポンサー獲得をめざしている。ドリームチームのYouTubeチャンネル登録者は26万人以上で、今年中に3つのシリーズが配信される。約71万のチャンネル登録者を抱えるスポーツラジオのトークスポーツでも、今年新たに3本のオリジナルシリーズの配信を予定している。

「我が社は過去10年間、YouTubeを軽視してきた」と、ブラウン氏はいう。「関わるべきでないという見方が大勢だった。だが、いまや状況は変わってきている。我々は(YouTubeを)デジタル戦略の重要な柱のひとつと認識している」。

Lucinda Southern (原文 / 訳:ガリレオ)