ニュースUK(News Uk)は番組制作のリソースを集中させるため、制作しているポッドキャスト番組の数を昨年半分となる22番組にまで減らした。それから1年が経過し、同社のポッドキャスト番組の合計ダウンロード数は2倍、広告収益は3倍にまで増加した。
ニュースUK(News Uk)は番組制作のリソースを集中させるため、制作しているポッドキャスト番組の数を昨年半分となる22番組にまで減らした。それから1年が経過し、同社のポッドキャスト番組の合計ダウンロード数は2倍、広告収益は3倍にまで増加した。
ニュースUKの音声番組制作と収益化を担当する11人体制のワイヤレス・スタジオ(Wireless Studios)でマネージングディレクターを務めるジミー・バックランド氏は「いま求められているのは高品質で独特な番組だ」と語る。「ブランドは情熱のあるオーディエンスに訴える機会を求めている。広告主に対し有意義な結果を残すには、ポッドキャストの各ブランドが規模を拡大させなければならない。1万人が聴く40番組よりも、10万人が聴く10番組のほうが良いということだ」。
番組リスト見直しの経緯
同社は英国の他パブリッシャーに先駆けて音声番組への取り組みをはじめた。2016年には、音声番組の制作企業であるワイヤレス・グループ(Wireless Group)を2億2000万ポンド(約295億円)で買収している。ワイヤレス・グループは、高価値のプレミアリーグの音声関連の権利を有するトーク・スポーツ(Talk Sport)やバージン・ラジオ(Virgin Radio)といったラジオ局を抱えている。
Advertisement
2018年の初頭には、より効果的に結果を残すための戦略的なアプローチとしてニュースUKは、番組リストの見直しを行っている。ニュースUKの子会社には、英タブロイド紙のサン(The Sun)やサブスクリプションパブリッシャーのタイムズ(The Times)、サンデー・タイムズ(The Sunday Times)などがある。現在ニュースUKがポッドキャストで展開している22番組の内訳はタイムズは7番組、サンは3番組、ワイヤレス・グループのラジオブランドが12番組となっている。
同社は具体的な数字について公表しないが、ポッドキャストの22番組を合わせると、月ごとに変動はあるものの毎月数百万の聴取数を稼いでいるという。
「重要な」収益源へと成長
ニュースUKのポッドキャストによる広告収益は3倍に増え、バックランド氏も具体的な収益額については明かさないが「重要な」収益源へと成長を遂げたと述べている。同社はさまざまなキャンペーンから収益をあげている。その種類もスポット広告や番組司会による読み上げ広告、ブランドとの共同制作番組などさまざまで、ポッドキャスト限定キャンペーンもあれば、より広範囲なキャンペーンの一部となっているものもある。
ポッドキャスト市場が成熟している英国と米国では、ダイレクトレスポンスを展開するD2Cブランド以外にも多様な広告主が集まる。たとえば、ニュースUKはスカイ(Sky)とポッドキャスト番組を共同制作しているほか、スポンサーとして化粧品ブランドのベネフィット・コスメティクス(Benefit Cosmetics)も獲得している。
米国のスポーツパブリッシャー、リンガー(The Ringer)は2018年にポッドキャストで1500万ポンド(約22億円)の広告収益をあげている。これは英国の大半のポッドキャストパブリッシャーを大幅に上回る額だ。
コンテンツの取り組み
ニュースUKはポッドキャストの新番組を作りたがっていないというわけではない。7月上旬に同社は新番組を2つ開始している。「ジャイルズ・コレン・ハズ・ノー・アイデア(Giles Coren Has No Idea)」は、コラムニストのジャイルズ・コレン氏が毎週のコラムで何を書くかを追う番組だ。もうひとつの「ザ・ピボット、テイルズ・オブ・シリコン・バレー(The Pivot, Tales of Silicon Valley)」は米国の西海岸の技術と社会をテーマとし、ジャーナリストのダニー・フォートソン氏が司会を務める番組だ。
ニュースUKのポッドキャスト番組のリスナーは、ほかの多くのパブリッシャーと同様に、Appleのポッドキャストプラットフォームを利用するリスナーが50から60%を占めている。まだ番組の配信がはじまって間もないが、最初のエピソードが配信されて12時間で「ガイルズ・コーレン・ハズ・ノー・アイディア」はAppleの英国ポッドキャストチャートで1位に、「ザ・ピボット、テイルズ・オブ・シリコン・バレー」は14位になっている。
いずれもニュースUKのサブスクリプションニュースパブリッシャー、タイムズの番組で、ポッドキャストによってサブスクライバーを増やそうとするニュースUKの取り組みが見て取れる。タイムズは、詳細な情報は明かせないが、サブスクライバーからのフィードバックによって、彼らがポッドキャストを重視していることが判明したという。
「これから12カ月かけて、タイムズへの音声コンテンツの導入をさらに進め、経験をもとにサブスクライバーへと音声商品を提供していく」と、バックランド氏は語る。音声コンテンツの形式はまだ決まっておらず、ポッドキャストの番組を有料にするのか、それともサブスクライバーが早期に聴けるようにするのかも不明だ。
サブスクとの結びつけ
音声とサブスクリプションを結びつけるのはニュースUKに限らず多数のパブリッシャーが優先的に取り組んでいる課題でもある。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は、サブスクライバーにポッドキャスト番組への早期アクセスサービスを提供している。エコノミスト(The Economist)は自社のサブスクリプションのマーケティングファネルとしてほかのポッドキャスト番組が効果的だとしている。さらにガーディアン(The Guardian)は、ここ数カ月のあいだ、毎日放送するポッドキャスト番組で寄付を募っている。
現在ポッドキャストに関する分析は聴取数やダウンロード、プラットフォームや地域ごとの情報など限られたデータしかなく、アトリビューションの確定が難しい。
「当社はデータとサブスクリプションに基づいたビジネスを展開している。カスタマーについてより詳細に知ることが求められる」とバックランド氏は語り、次のように述べた。「ニュースIQ(News IQ:ニュースUKのデータプラットフォーム)は、より絞り込んだターゲティングが可能な広告を模索しており、音声コンテンツも同様の取り組みを行っていきたい」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)