「パブリッシャーにとって、 Amazon は敵であり味方」:ニュースUKのD・カーター氏

EUのデジタルパブリッシング業界は2018年、大きな変化を迎えた。タイムズ(The Times)とサン(The Sun)を所有する、ニュースUK(News UK)もその例にもれなかった。

ニュースUK(News UK)は昨年、最近買収したラジオビジネスのワイヤレス・グループ(Wireless Group)を統合し、自社データツール、ニュースIQ(News IQ)を英国の広告主向けにローンチ。さらに出版社連盟のオゾン(Ozone)、ガーディアン(the Guardian)、テレグラフ(The Telegraph)、そしてリーチ(Reach)といったニュースメディアグループたちに投資を行った。

英DIGIDAYは、ニュースUKのグループ最高コマーシャル責任者であるドミニク・カーター氏に、2018年のもっとも重要な出来事が何だったか、そして2019年にニュースUKがなぜ音声・コネクテッドホーム市場に参入したいと考えるのか、について質問した。

――2018年のニュースUKにおける、もっとも重要な戦略上のマイルストーンは何だったか?

もっとも大きいもののひとつは出版社連盟オゾンだ。パブリッシャー業界全体にとっても意義深い新しいマイルストーンだ。マーケティングレベルでは以前も協働したことがあったが、ジョイント投資、ジョイントオーナーという形ではなかった。我々全員にとって一歩前進といえる。GDPRも多くのパブリッシャーにとってたくさんの問題を生んだ。今後12カ月、取り組むなかで棚上げするところも出てくるだろうが、我が社のような存在にとっては、より多くのチャンスを生み出す。GDPRが原因で、データとデータがどのように使われるかに関して大きな潮の流れに変化が生まれるだろう。

――これまでの連盟が上手くいかなかったなかで、オゾンが成功すると確信しているのはなぜか?

オゾンはオープンマーケットプレイスにおけるバイイングの代替オプションである。それは広告主たちを安全でなく、資金が消えてしまう場所となっているオープンマーケットプレイスから移動させることができたら、だ。投下される支出のより大部分がメディアオーナーへと届くようなプラットフォーム、そして結果的に消費者に安全で、文脈が確立した環境で届くようなプラットフォームを作ることができれば、広告主はすべて、そこに参加したいと思うはずだ。我々は完全なコミットメントを持っている。

――ブランドセーフティに関して、広告主の態度が変わったことを示す証拠は、どのような物を目撃してきたか?

2月に私たちは、タイムズにおけるオープンマーケットプレイスのバイイングを止めた。そして、その結果、非常に大きな成長が見られた。それだけでも証拠といえる。プライベートマーケットプレイスとプログラマティックによる収益が、停止から上昇しているという点だ。また、サンのプライベートマーケットプレイスにおいても2桁の成長を見ている。

――Facebookではプライバシー関連のスキャンダルやパフォーマンス数値に関する混乱が続いているにも関わらず、マーケターたちがFacebookへの支出を続けていることに対して不満はあるか?

個人的には、不満を持っている。Facebook上の広告には個人的には注目したりはしないが、ほかのユーザーに対しては効果がある。それよりもフラストレーションになっているのは、むしろ偏ったバランスだ。スケールとデータを持った現存するビジネスを使うというのが、いまの傾向となっている。それであれば2社によるデュオポリー(複占)状態が、いつまで経っても変わらないだろう。広告主にとっての判断基準が、ブランドの評判に対するリスクの小さい、信頼できる環境に比重を置くようになれば、我々のようなビジネスもGoogleとFacebookを超えることができる。どの要素も等しく重要だが、そういう認識は必ずしも広まっていない。だが、将来的には広まるかもしれない。

――Amazonが広告業務に対して野心的になっているが、彼らはパブリッシャーにとって敵なのか味方なのか?

どちらの要素も少しある。私がもしも、GoogleかFacebookだったら、もっと心配していただろう。しかし同時に、マーケットで自分が獲得できたかもしれない資金を、さらにほかの誰かに奪われてしまうのは嫌だ。Amazon自身がそう選択すれば、Amazonも広告マーケットにおける非常に大きな存在を担うことができる。ヨーロッパにおいてはまだ、その選択を行っていないように思う。しかし、今後成長するだろう。Amazonはデータとスケールを持っている。このふたつを組み合わせれば、現在の2社複占状態との競争もかなり効率的に行うことができるだろう。まだ足りていないことといえば、感情的な想い入れだ。機能性は高く、買い物には便利なプラットフォームだが、ほかのプラットフォームが登場し、同じ物を提供しはじめれば、人々はそちらに移るだろう。

――ワイヤレス買収における戦略的な重要性は何か?

2018年、放送業界におけるもっともビッグなタレントと言えるクリス・エヴァンス(テレビ司会者、ラジオDJ)を雇った。これは我々が業界でナンバーワンになるという意志の表れだ。さまざまなオーディエンスや人口構成のターゲットに異なるアプローチを仕掛けられる、ひとつの場所になろうとしている。それが音声であれ、文章であれ、動画によるブランデッドコンテンツであれ、だ。これらをシームレスに統合し、我々のメディアを包括的に活用する方法を提供したい。それによってオーディエンスにアクセスし、広告主は最善の投資からの利益を得られるようになる。それを証明することができれば、広告マーケットのより大きなシェアを獲得する価値を我々が持っていることになる。

――2018年から何かひとつを取り除くとしたら、何か?

ネガティブさだ。私は(英国の)北部出身だ。ブレグジットやその恐怖、国にとってどれだけ酷い状況を生むか、ということをたくさん耳にする。そのネガティブな感情はビジネスを通じて、消費者に伝わってしまい、彼らの消費は小さくなる。それによってビジネスの出費も小さくなり、景気後退へと突入してしまうだろう。ネガティブさは自らを実現してしまう予言のようになってしまう。我々を取り巻く政治経済状況は、もちろん何らかの形を見せるわけだが、そんななかでネガティブさに囚われてしまうと、ネガティブな結果に陥ってしまう。メディア業界では2社による複占、GDPR、ブレグジットに対する不平不満が語られるが、そこにある以上は仕方がないのだから、前進をしなくてはいけないし、いま我々が持っているものに関してはポジティブになる必要がある。

――2019年の新しい優先事項は何か?

音声はホーム環境における重要度を増している。我々もそこに参加している。メディアオーナーとして、我々がプロダクトを提供するだけでなく、サービスを提供する方向性へとシフトすることになる。そこでこそ、さまざまなスキルによって多様化されたポートフォリオが活きてくるだろう。私たちのことをプロダクトを提供するだけの存在だとこれまで考えてきたマーケターたちに、サービスを提供することが可能になる。コネクテッドホームと音声分野は来年ふたつの大きなテーマとなるだろう。そして我々は、その両方で役割を担うことができる。

Jessica Davies(原文 / 訳:塚本 紺)