イギリスの大手ニュースメディア企業ニュースUK(News UK)の最高マーケティング責任者クリス・ダンカン氏は、Facebookのようなプラットフォームへ直接記事を掲載することに前向きではなかった。
ダンカン氏が以前受けたメディア取材では、Facebookの「Instant Articles」のローンチや、Facebookとパブリッシャーの関係性を「オーディエンスや流入経路を得るために払う税金」のようなものだと揶揄したほどだ。ニュースUKが発行する保守系高級紙「タイムズ(The Times)」とタブロイド紙の「ザ・サン(The Sun)」は、絶対に屈しないと誓っていた。
しかしその後、多くの変化を経て、ダンカン氏の考えは変わった。オーディエンスを増やすため「ザ・サン」のペイウォールを2015年12月1日に撤廃したのだ。そのおかげでオーディエンスが増加し、30万人の新たなオンライン読者を獲得したとダンカン氏は語る。
イギリスの大手ニュースメディア企業ニュースUK(News UK)の最高マーケティング責任者クリス・ダンカン氏は、Facebookのようなプラットフォームへ直接記事を掲載することに前向きではなかった。
ダンカン氏が以前受けたメディア取材では、Facebookの「Instant Articles」のローンチや、Facebookとパブリッシャーの関係性を「オーディエンスや流入経路を得るために払う税金」のようなものだと揶揄したほどだ。ニュースUKが発行する保守系高級紙「タイムズ(The Times)」とタブロイド紙の「ザ・サン(The Sun)」は、絶対に屈しないと誓っていた。
しかしその後、多くの変化を経て、ダンカン氏の考えは変わった。オーディエンスを増やすため「ザ・サン」のペイウォールを2015年12月1日に撤廃したのだ。そのおかげでオーディエンスが増加し、30万人の新たなオンライン読者を獲得したとダンカン氏は語る。
Advertisement
「Instant Articles」参加への期待
また、Facebookは「Instant Articles」で収益化を目指すパブリッシャーを全面的にサポート。その姿勢は賞賛せずにはいられないとダンカン氏は評価している。
これにより「ザ・サン」は、「Instant Articles」の13あるイギリスのパートナー企業のひとつとなり、間も無くローンチされる予定だ。今後のオーディエンス拡大の助けとなるとダンカン氏は信じている。
だが、同氏は「Instant Articles」に対して、ローンチ当時は継続的なサービスの効果は期待できないだろうと感じていたと付け加える。とはいえ、「ザ・サン」がペイウォールを撤廃したことで、そのビジネスモデルはデジタル広告を頼りに運営される体制に変容した。いまやオーディエンスをいかに増やすかが運営の最優先課題なのだ。
Facebook流入が透けて見える
Facebookは「Instant Articles」を2015年5月に発表。参加パブリッシャーの記事をモバイル機器でより早く表示するだけでなく、広告の販売や記事のカスタム化、トラフィックデータへのアクセスに対して権限を与えると約束した。
これは、とても革新的なことだ。なぜなら、記事を直接「Instant Articles」へアップロードすることで、パブリッシャーと読者の間に介在するメディアが確立されたからだ。
ダンカン氏いわく、「『Instant Articles』のおかげで、ブラックボックス化しているソーシャルプラットフォームが透明化されてきている。いかにトラフィックに影響しているのか、細かく見えるようになってきた」。
現在、パブリッシャーは、人々が「Instant Articles」への配信記事をクリックした後に、どこへ向かったのかを追跡することが可能だ。これにより、「ザ・サン」のユーザーエクスペリエンスを向上させることができるとダンカン氏は考えている。
見直される関係性
「我々は長い間、Facebookと話し合ってきた。Facebookは単なるソーシャルネットワークから、カスタマープラットフォームへと変化している。企業のビジネスを左右し、大きな影響を与えるほどにまでなったいま、Facebookはカスタマープラットフォームとして、我々パブリッシャーとの関係に配慮が生まれた。ソーシャルネットワークサービスとカスタマープラットフォームはまったく違うサービスということだ」と、ダンカン氏は述べた。
「ザ・サン」が「Instant Articles」にてローンチされれば、どの記事が拡散され、どれくらい読者を惹きつけているのか、収益につなげるためのモニタリングをできる。「Instant Articles」を使用する多くのパブリッシャーと同様、素早い読み込み時間は読者にとって大きな利益となると期待しているという。
いまや無数にあるデジタルニュースに囲まれているなかで、読者は空白のページを見つめて待ってはくれない。「これまでのメディアのUXは、まるで記事の裏に石が沢山詰められた袋をぶらさげているようなもので、重くなりすぎている」とダンカン氏。
バランスが求められる
そして、ソーシャルプラットフォームが台頭するなか、パブリッシャーは読者がいるところに記事を配信したいと考えると同時に、自社サイトで直接収益化でき、オーディエンスとの関係も直接築けるような誘導経路を確保するための施策に奮闘している。
ソーシャルプラットフォームは、「ザ・サン」にとって一筋縄ではいかないサービスであるのは間違いない。しかし、ペイウォールが撤廃されたいま、「ザ・サン」のなかでより重要な役割を果たしていくことは事実である。
「我々は、インターネットへとアクセスするためにブラウザを利用するか、または少数の強力なプラットフォームに依存する世界に住んでいる」。
ダンカン氏はGoogle版の「Instant Articles」ともいえる、ロード時間を短縮する「Accelerated Mobile Pages(AMP)」にも興味を示している。加えて、すでにAppleのニュースアプリである「News」に参加していて、ほかのパブリッシャーと同様に、新たなコストについても考慮しなくてはならない。これら複数のプラットフォームを活用することで「ニュースルームは非常に困難な仕事を担うようになった」と述べる。
「もし編集者がパリ同時多発テロ事件についてレポートする場合、Facebookの『Instant Articles』、Googleの『AMP』、そしてAppleの『News』へ投稿を行い、それからモバイルやタブレットのアプリへの対応、そして最後にプリントメディアに発表することになる」。
Jessica Davies(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image from The Sun Wikipedia