YouTube ライブを拡大する、英国のニュース企業たち

コンテンツ制作が縮小するなか、ニュースパブリッシャーがその穴を埋めようと、YouTubeをはじめとするソーシャルプラットフォームで、こぞってライブ配信に乗り出している。

その結果、スカイニュース(Sky News)、サン(The Sun)、ガーディアン(The Guardian)、ユーロニュース(Euronews)、テレグラフ(The Telegraph)といったパブリッシャーでは、ライブストリーミングの視聴時間が増加している。なかでも、テレビ局のスカイニュースは、直近の4週間の視聴時間が11億分と、ほかのニュース関連や政治関連のクリエイターやメディアを大きく上回った。その理由は、スカイニュースが2019年11月から、自社のチャンネルの24時間ライブ放送をYouTubeで行っているからだ。

英国のタブロイド紙、サンで動画担当ディレクターを務めるフィル・ハン氏は、次のように述べている。「我々は多数のライブ番組を毎日配信しているだけでなく、新型コロナウイルスに関する長めのオリジナル広報番組をいくつか手がけている」。

「すべてのチャンネルで力強い成長」

YouTubeでは、3月12日からの4週間で、ライブストリーミング動画の視聴時間が直前の4週間から189%も増加した。分析会社のチューブラー・ラボ(Tubular Labs)によれば、ピーク時には1週間の視聴時間が1億8000万分に達したという。

ほかのニュースパブリッシャーも、3月に入ってライブストリーミングを増やしている。ただし、英国議会で毎週行われるプライムミニスターズクエスチョンズの中継など、散発的に配信されるケースが多い。たとえば、ユーロニュースは2019年9月から、通常のライブストリーミングに加えて、記者会見、政治イベント、政治演説、ライブインタビューなどをストリーミング配信しながら、コミュニティを管理している。

「YouTubeにある当社のすべてのチャンネルで力強い成長が見られた」と、ユーロニュースでデジタル製品担当責任者を務めるユーヴァ・ブジディ氏はいう。「当社のチャンネルのほとんどで登録者が50万人に達したほか、最近ではふたつのチャンネルで100万人を突破した」。

ニュースパブリッシャーにとって、ライブストリーミングは目玉コンテンツというだけでなく、いまのように番組の内容が制限され、人々がニュースを貪欲に欲している(やや落ち着いてきたようだが)なかでも配信できる、数少ないコンテンツのひとつでもある。

クリエイターにとって新たな頭痛の種

医療や公共サービス関連のコンテンツもそうだ。サンは4月初旬、「アスク・ドクター・ヒラリー(Ask Dr. Hilary)」というシリーズ動画の配信を開始した(毎週月曜〜木曜)。これは、メディアによく登場する医師のヒラリー・ジョーンズ氏が新型コロナウイルスに関する疑問に答えるという内容で、10万を超える視聴数を記録することも少なくない。

ニュースUK(News UK)が所有するサンは、ロイター(Reuters)などのエージェンシーの動画を寄せ集めるのではなく、オリジナルのコンテンツを制作することに注力しており、1年半のあいだにYouTubeの購読者を80万人近くまで増やした。分析会社のソーシャルブレード(SocialBlade)によると、サンの登録者と視聴率は1月から急増しており、多くのコンテンツ制作が難しくなった状況でも成長が鈍化していないという。4月には、YouTubeチャンネルで2000万人のユニーク視聴者をすでに獲得したとサンのハン氏は述べている。

YouTubeは以前から、パブリッシャー向けの動画プレイヤー「Player for Publishers」で一部メディア企業の動画ビジネスを支援しているが、ニュースはさまざまな点で収益化が困難なカテゴリーのひとつとなっている。実際、YouTubeはこれまで、新型コロナウイルスに言及した動画を収益化の対象から自動的に除外すると通告していた。だが3月に入り、コンテンツ制作者による新型コロナウイルス関連動画の収益化を少しずつ許可している。さらに4月第4週には、高度なブランドセーフティ機能を導入した。ただし、この機能のためにブランドにとって問題のないコンテンツまでブロックされてしまうという、クリエイターにとって新たな頭痛の種が生まれる恐れもある。

あるパブリッシャーの最高収益責任者は次のように述べている。「我々はチームに対し、必要がないのに(新型コロナウイルスに)うっかり言及することのないよう注意を促している。実際、(新型コロナウイルスに)言及しないようにすることで状況を好転させた競合他社もある。これは厄介な問題を解決する古典的なやり方なのだ」。

いま取り上げるべきコンテンツ

ユーロニュースは、キーワードブロッキングの影響を軽減するため、ユーザーの関心をより惹きつけやすい、ブランドセーフティなコンテンツとプロダクトに注力する方向へ舵を切ったと、ブジディ氏は説明している。

ほかにも、CNNインターナショナル(CNN International)のような例がある。同社は4月から、リモートワーク向けのテクノロジーやマナー、ガイドなどをテーマにした20分番組「WFH New Reality(在宅ワークの新たな常識)」を毎週配信している。番組のアンカーを務めているのはジャーナリストのリチャード・クエスト氏だ。この番組もリモートで制作されており、クエスト氏が自分で照明やカメラワークを調整し、Zoom(ズーム)などのビデオ会議ソフトウェアを使ってインタビューを行っている。今後配信する動画では、企業がリモートワークのために行った取り組みが継続する可能性や、パンデミックが終わったあとに解決すべき大きな問題が取り上げられる予定だという。

このように、ニュースパブリッシャーは今、自らの枠を乗り越えようとしている。また、意外なことに、ポジティブなニュースやいい話が人気を集めている。「歌を歌う人たち」の動画は、ニュースパブリッシャーのあいだで4番目に視聴数が多いトピックだ。3番目は患者が殺到する病院に関するニュース。2番目は世界各国の状況、そしてトップはロックダウン中の生活となっている。人々が歌を歌っている動画(家族で「レ・ミゼラブル」の替え歌を合唱している動画など)は、アップロードされているコンテンツのわずか7%を占めるにすぎないが、すでに790万の視聴数を獲得したとチューラー・ラボは報告している。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)