パブリッシャーの多くは記事の関連コンテンツの紹介を最適に行なうためにアウトブレインやタブーラのようなサードパーティーを活用している。しかし、ニュース・コーポレーションは傘下のメディアに対して、パブリッシャー間でのコンテンツレコメンドウィジットを開発し、相互に関連記事のやり取りを試みる。
コンテンツの回遊施策の話になると、多くのメディア企業がアウトブレイン(Outbrain)とタブーラ(Taboola)に目を向ける。こうした企業は、収益を生み出すため、メディアミックスで広告を振り分けてくれるからだ。
対して、米大手出版メディア企業ニューズ・コーポレーション(News Corporation)は異なる選択をした。傘下企業のダウ・ジョーンズ(Dow Jones)と提携し、互いのサイト上で記事をシェアできる、独自のコンテンツ・リサーキュレーション(再循環)ウィジェットを開発し、試験運用の段階にあるという。
グループ企業内で独自の回遊
ダウ・ジョーンズのメディアグループが主幹となった、「プロジェクトハミルトン」と呼ばれるこの構想は、提携サイトから関連する記事を収集し、個々の記事下に掲載。そのモジュールは、両社の関連サイト「マーケットウォッチ(MarketWatch)」「マンショングローバル(Mansion Global)」「Realtor.com」「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」の一部で実装されている。なお、このシステムにはスポンサードコンテンツは含まれない。
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WSJの発行元、ダウ・ジョーンズのCEOであるウィリアム・ルイス氏は、初期の成果は「約束されている」とスタッフに宛てたメモで述べたという。同ユニットの初期バージョンは、1.04%のクリックスルー率(CTR)を得たと同氏は語る。

Realtor.comの記事下にあるオススメ記事リンク
CTRの実績は目標の3倍以上
それが上手くいっているのかどうかを判断するのは難しい。というのも、非常に多くの要因があるからだ(たとえば、そのモジュールで実行されている記事の種類について、どのような制限が設定されているのか分かっていない。また、ほかにユーザーエクスペリエンスの改善があれば、CTRが改善されるかもしれないなど)。しかし、ルイス氏によると、CTRは当初の目標0.3%の3倍以上になっているという。
ニューズ・コーポレーションは「プロジェクトハミルトン」について詳しい説明はしないだろうが、同社がリサーキュレーションに関心を示しているのには、理由がある。WSJは、そのサブスクリプション事業の拡大努力を強めているからだ。より多くの読者をサイトにエンゲージさせることができれば、彼らに有料購読者になってもらう可能性も高くなる。
WSJは、人々が無料で記事を閲覧できるオンライン上の抜け穴に対して、厳しい態度を取っており、それと同時にこの試みがはじまっている。
サードパーティを使わない理由
一般的にデジタルメディアで利用されるレコメンドエンジンの多くは、サードパーティの製品だ。パブリッシャーは、それらを通してスポンサードリンクも掲載し、収益を得ることができる。だが、想定の範囲外のコンテンツがレコメンドされ、誤解を招いている部分もないわけではない。
ニューズ・コーポレーションは、サイト上でサードパーティのモジュールを積極的に利用していない。数カ月前まで、アウトブレインのモジュールは、「ニューヨーク・ポスト(New York Post)」や「マーケットウォッチ」で導入されていた。しかし、「ウォール・ストリート・ジャーナル」では数年来、導入されていないという。
サードパーティーのサービス利用の利点は、どのようなコンテンツを推奨したいのか操作することが可能で、さまざまな形の発信ができることだ。ニューズ・コーポレーションは、「プロジェクトハミルトン」でどのようなファクターが特徴となるのか言及していない。だが、上記キャプチャーを見ても、「Realtor.com」読者にオススメされた記事は、同サイトのテーマ同様に不動産関連コンテンツがメインとなっている。
サードパーティのモジュールならば、広告で収益を得られるが、独自のモジュールだと、それも期待できない。だが、理論としてはオーディエンスとの関連性が高いと想定される記事が提供されるために、エンゲージメントも向上するという考えだ。
Lucia Moses(原文 / 訳:Conyac)
Image from G F(Flickr)